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闇落ちしていたので救います  作者: 来留美


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9/22

9、孤独

楽しくお読みいただけましたら幸いです。


~前話つぶやきあらすじ~

8、希望

【“今”は無理でも“いつか”は解決する、なんて保証は無い。それは二人共、分かっていたけど少しでも小さな希望にすがってしまった】




【本当は孤独が嫌い。それでも孤独を選ぶのは、その選択肢が正解だと信じていたから】






「ヒメちゃん!」


 私を呼ぶ声の主は私に駆け寄り腕を引っ張り、カナヲ君から距離をとった。

 そして私を抱き締める。

 カナヲ君から私を守るように。


「叔母さん! どうしたの?」

「ヒメちゃん大丈夫? 何もされてない?」


 何が起きているのか分からない。


「叔母さん、私は大丈夫だよ。彼は知り合いだから。でも、どうしてここに?」

「だって、ヒメちゃんが帰って来ないから心配になって探したのよ?」


 叔母さんは私の顔を見てホッとしている。


「心配? でも、今日は遅くなるってメールをしたよね?」

「えっ、メール? きてないわよ?」


 私は急いで自分のスマホを確認する。

 マナーモードになっている私のスマホには、叔母さんからの沢山の着信とメールの通知があった。

 そして自分のメールを確認すると、叔母さんに送信できていなかった。


「叔母さん、ごめんなさい。メールが送信できてなかったよ」

「そうなんだ、良かった。ヒメちゃんが家出をしたとか、事故に遭ったとか、もう帰って来ないんじゃないかって怖かったのよ」


 叔母さんは落ち着いて言っているけど、叔母さんが本当に心配していたことは顔を見れば分かる。


 額(ひたい)には汗が滲んでいるし、走ったのか少し息も乱れている。

 そして何よりも大丈夫だと言っているのに、私をギュッと抱き締めて離さない。


「叔母さん。迷惑をかけてごめんね」

「迷惑? 私は、そんなことを思ったことはないわよ」

「えっ、でも、心配させちゃったし」

「好きだから心配をするのよ。好きだからヒメちゃんと一緒に居るのよ」

「私も、叔母さんが大好きだよ」

「うん」

「ありがとう、叔母さん、、、もう違うね。ありがとう、お母さん」


 私が、叔母さんをお母さんと呼んだことで叔母さんは静かに泣いていた。

 ただ呼び方を変えるだけで、こんなにも喜んでくれるなら早く呼べばよかった。


 だって、お母さんが喜ぶと私まで嬉しいから。


 そう言えばカナヲ君の存在を忘れていた。

 カナヲ君がいるであろう方向に視線を向けると、カナヲ君が私達に背を向けて立っていた。


 その背中は寂しそうに感じた。

 だから直ぐにカナヲ君を呼ぶ。

 それなのにカナヲ君は振り向かない。


 もしかして泣いてるの?


 私は、お母さんから離れてカナヲ君に近付く。

 お母さんは何も言わず、私を信じているのか見守ってくれている。


 そして私が近付いたことに気付いてカナヲ君の体に力が入るのが分かった。


「良かったね」


 カナヲ君は振り向かずに言った。

 明るく言っているが、少し無理をしているように聞こえた。


「カナヲ君。どうしたの?」

「ヒメには何も隠せないよね?」

「うん。カナヲ君は“良かったね”って言っているのに、私と一緒に喜んでくれてはいないよね?」

「ごめん。俺には堪(た)えられない。ヒメ達を見るのは」

「どうして?」

「俺には、そんな人はいないから」


 カナヲ君は、ずっと寂しかったんだ。

 私は、ずっと気付かないフリをしていた。

 私が家ではリラックスできているんだから、カナヲ君も同じなんだと思い込んでいた。


「カナヲ君。ごめんね」

「ヒメが謝る必要はないよ。これは俺の問題だから」

「違うよ。カナヲ君と私の問題よ」

「今日が最後なのに、どうやって問題を解決するつもり?」



「心は繋がっているんだと思う」

「何、言ってんの?」


 カナヲ君は意味が分からないようで、振り向いて私を見た。

 カナヲ君の顔を見ればカナヲ君の心が見える。


「私、前に言ったわよね? 私達って約束しなくても、また逢える気がするって」

「うん」

「私とカナヲ君は同じなの。だからカナヲ君の心が私には分かるの」

「同じ?」

「うん、そうだよ。同じなのよ。ずっと一人で全てを抱(かか)えていた。誰にも頼らず誰にも心を見せない」

「でもヒメは愛されてるじゃん。俺とは違うよ」


 カナヲ君が言うように私は愛されていた。

 でも、その愛を受け取ることはしなかった。


 誰も信じない。

 誰も愛さない。

 誰も私の気持ちなんて分からないから。


「私はカナヲ君と一緒だよ。一方通行の愛は寂しいだけだから」

「一方通行?」

「そう。私は亡くなった両親にだけ愛を囁き、愛を捧げたけど返ってくることはなかったの」

「それが一方通行?」

「うん。私は両親を愛していたけど愛は返ってこなかった。だから両親以外に愛されても愛を返すことができなかったの。返し方(かた)を知らないから」


 愛されていたのは気付いていた。

 でも返し方(かた)を知らない。

 本当は、そうじゃない。

 返したくなかった。


 だって私は両親だけで良かったの。

 私の気持ちを分かってくれるのは両親だけだと思っていたから。


「返し方(かた)を知らないなら、同じように愛せばいいじゃん。それをしようとしなかったヒメはただ逃げてただけじゃん」

「そうよ。それはカナヲ君もでしょう?」

「俺も? いいや、俺は愛されてなんかないから同じじゃないよ」

「同じだよ。愛されてないなら、愛せばいいでしょう? それをしなかったカナヲ君も私と同じよ」



「俺が愛せば居なくなる。それを分かって言ってんの?」


 カナヲ君は冷たい眼差しで私を見て言った。

 でも、そんなカナヲ君の眼差しには負けられない。


 だって、カナヲ君を孤独から救ってあげたいから。

 カナヲ君の笑顔を守りたいから。




お読みいただき、誠にありがとうございます。


~次話つぶやき予告~

10、信頼

【人を信頼するということは自分も信頼されなければ成り立たない。だから信頼を勝ち取るのは、そう簡単じゃない】

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