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闇落ちしていたので救います  作者: 来留美


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6、危機

楽しくお読みいただけましたら幸いです。


~前話つぶやきあらすじ~

5、一筋の光

【どうしてだろう。いつも通りなのに、なんだか温かく心地いい。そうか、キミがいるからなんだ。キミも、そう想ってくれるかな?】




【少しずつ危機は迫っていた。知らない間にキミが傷付いてしまう。キミの笑顔を守り抜く方法はあるのだろうか】






『ヒメ、ごめん。今日は、あえない』


 今日は、カナヲ君が呼び出しをメールでキャンセルしてきた。

 キャンセルなんて初めて。

 何かあったのかな?

 不安になってしまう。



「ヒメちゃん。来週のお墓参りなんだけど仕事になっちゃって、一日ずらしてもいい?」


 カナヲ君のことが気になりながら夜ご飯を食べていると、叔母さんが申し訳なさそうに言った。


「いいよ。一日ずらしてもお母さんの命日だし」

「ごめんね。毎年お兄さんの命日に行くのに」

「たまには、お母さんの命日に行くのもいいかもね」

「そうだね。お姉ちゃんの好物を持って行こうか?」

「そうだね。私も大好きなプリンだね」


 叔母さんと笑い合いながら、お母さんのことを話す、この時間が大好き。

 カナヲ君も、こんな時間があるのかな?

 そのせいで私と逢うのをキャンセルしたのかな?

 それだったらいいんだけどなぁ。


 私の両親の命日が違う理由は、交通事故でお母さんを守ろうとして即死だったお父さんと、次の日まで必死に生きて私を一目見て亡くなったお母さんの亡くなった日が一日だけ違うから。


 私は覚えていないけど叔母さんは覚えている。

 だから、その日のことを何度も教えてくれる。

 私が、どれだけお母さんに愛されていたのかを。




 カナヲ君から逢えないという連絡が来てから一週間が経った。

 カナヲ君から連絡は無く、ただ待つことしかできない。

 本当は連絡をしたいけどカナヲ君との約束で、連絡はカナヲ君からすると決めていた。

 でも一週間も連絡が無いと心配になる。



「ヒメちゃん。明日はお墓参りだからね。学校から帰ったら一緒に行こうね」

「うん」


 叔母さんは、私が忘れていないのか確認をしてきたんだと思う。

 忘れるわけがない。

 お父さんとお母さんの一番近くに行ける日なんだから。


 次の日、学校が終わって家へ帰ると叔母さんがプリンを持って待っていてくれた。

 すぐに家を出て、お墓へ向かう。

 お父さんとお母さんに会える。


 毎回お墓に着くと、お父さんとお母さんが近くにいるように感じる。

 まるで、お父さんとお母さんが私を見守ってくれているように感じるの。


「ヒメちゃんのプリンは家へ帰ったら食べてね」

「うん。楽しみ」

「あっ、ヒメちゃん。人が向こうから来るから端(はし)に寄ろうか?」

「えっ、あっ、うん」


 お墓では、ほとんど人には会わないのに、今日は人が遠くから歩いて来るのが見えた。

 黒いスーツを着ている人が五人。


 その人達が近付いてきて私は足を止めてしまった。

 だって、目の前から歩いて来るのはカナヲ君だったから。


「カ、、、」


 カナヲ君と呼ぼうとして止(や)めた。

 だって、カナヲ君の後ろを歩いている人が見覚えのある人だったから。


 カナヲ君と初めて出逢った日に、カナヲ君を探しに来たスーツのイケメン男性だった。

 以前と違うのは、口の端(はし)に傷なのか青アザのようなものがあるように見える。


 そして、カナヲ君達の先頭を歩いている人がカナヲ君の育ての親である辻(つじ)さんなんだと思う。

 チラッと見るとモデルさんのような容姿で若く見える。


 直ぐにカナヲ君に視線を向けると、小さく首を横に振っている。

 何も言うな。

 知らないフリをしろと言うように。


 私は、その通りにした。

 視線を下げ、見ないようにした。

 心臓がバクバクと音を立てる。

 そして何もなく、お互いに通りすぎた。


 どうして私達は知らないフリをしなくちゃいけないの?

 どうして隠れるように逢わなきゃいけないの?

 そう思うことは何度もある。


 大人になれば変わるの?

 今だけ我慢をすればいいの?

 そんなの何の解決にもならない。


 大人になってもカナヲ君は逃げられない。

 そして私は大人になってもカナヲ君を助けることはできない。


 それを今、この瞬間に理解してしまった。

 先頭を歩くカナヲ君の育ての親の辻(つじ)さんの威厳は他の人達を見ていたら分かる。


 誰も逆らえない。

 誰も逆らわない。

 服従という道が一番の得策。


 この男性は本当に恐ろしい人なんだ。



「あの、すみません」


 いきなり後ろから誰かが、私達に声をかけた。

 私はバレたのかもしれないという恐怖で顔をあげられないから誰が言ったのか分からない。


「はい、何か?」


 叔母さんが私の代わりに応えてくれた。


「この辺りに、美味しいプリンを販売しているお店があると聞いたのですが、お店がどこにあるのか知っていれば教えていただけますか?」

「あっ、プリンですか? 駅裏のお店ですかね? この子も好きなんですよ」


 叔母さんはニコニコとしながら私の腕を引っ張り横に立たせる。

 恐る恐るこちらに向いている男性を見ると、鋭い眼差しが私に突き刺さる。


 この人、辻(つじ)さんには嘘はつけない。

 一瞬で、そう思った。


「キミは高校生かな?」


 辻(つじ)さんが私に話し掛けているけど声が出ない。

 尋問のように感じる。

 何か言葉を発すれば弱味を握られそう。


「叔母さん。早くお父さんとお母さんの所へ行こうよ」

「えっ、ヒメちゃん?」


 私の様子がおかしいことに叔母さんは気付き“すみません。急いでいるので”と言ってその場を離れた。


 少し歩いてから振り向くと辻(つじ)さんが、こちらを見ていた。

 私は怖くなって叔母さんの傍に近寄った。


「さっきの人、怖かったね」

「えっ」

「感情が顔に出ていなくて、何を考えているのか分かんなかったよ。ヒメちゃんも怖かったでしょう?」

「うん」


 叔母さんも怖いと思ったんだ。

 やっぱり、あの人は危険人物なんだ。

 カナヲ君が言ったことは正しいんだ。



「あれ? お姉ちゃん達のお墓に新しいお花がある」


 叔母さんの言葉を聞いてお墓を見ると、美しい綺麗な花が咲いて笑っているように見える。


「本当だ。誰なんだろう?」

「お兄さんのご両親かな? あんまり仲良くなかったって聞いていたんだけどなぁ」



 それからお墓参りも終わり家へ帰る。

 寝る前にカナヲ君からメールがきていた。


『明日、あいたい』


 久し振りにきた嬉しいはずのメールは、なんだか胸騒ぎがして恐怖を感じた。

 何か嫌な予感がする。




お読みいただき、誠にありがとうございます。


~次話つぶやき予告~

7、悪

【“悪”とはなんだろう? 傷付けるつもりはないのに傷付けてしまったら、それは“悪”になってしまうのだろうか?】

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