3、笑顔
楽しくお読みいただけましたら幸いです。
~前話つぶやきあらすじ~
2、再会
【久し振りに逢ったキミは、どこか寂しそうで救いたいと思った。でも救われたのは自分だった】
【キミの笑顔が好き。心からの笑顔が好き。だから、キミの笑顔を守りたいと思った】
「カナヲ君は?」
「えっ?」
カナヲ君の方を見て私は訊いた。
でもカナヲ君は私を見てくれない。
「無理をする必要はないんだよ」
「してない」
「本当?」
「本当」
「ねぇ、カナヲ君」
私は景色を見ているカナヲ君の顔を覗き込み、視線を私に向けて欲しくて呼んだ。
「何?」
カナヲ君の表情が柔らかくなったのが分かった。
これが本当のカナヲ君の表情だと思う。
「私達って約束しなくても、また逢える気がするんだ」
「そうだろうね。だって、この場所に毎日でも通えば逢えるだろうし、お姉さんの学校も知っているからね」
「そんなんじゃなくて、カナヲ君は私が必要なんじゃないの?」
「何それ? お姉さんと出逢う前も出逢ってからも、何の不自由もなく過ごせているよ」
「でも今は? 私が必要ないなら逢いに来る必要もないでしょう?」
「何が言いたいのか分かんないんだけど?」
カナヲ君は少し不貞腐れたように言った。
「じゃあ分かるように説明するわ」
「うん」
「たった一度しか逢ったことがない人に半年振りに逢いに行ったりする? それって、また逢いたいなって思うから半年振りにでも逢いに来ちゃうんだよ」
「俺は、お姉さんが俺を待っているのを知っていたから、、、」
「それが間違っているのよ」
私はカナヲ君の言葉を遮り言った。
「間違い?」
「うん。どうして私がカナヲ君を待っていたのを知っているの? それはカナヲ君が私に逢いたかったからよ」
「違う」
カナヲ君は口では否定をするけど、不安そうに私を見てくる。
どうして、そんなに不安そうにするの?
「この半年間に何があったのかは訊いちゃだめ?」
「ダメ」
「そっか。でも、中学生には耐え難い何かがあったんだよね? それから逃げてきたの? それとも堪え抜いたの?」
「逃げる選択肢はない」
「もう大丈夫なの?」
「これからずっと、、、」
カナヲ君は、そう言いながら眉間にシワを寄せた。
カナヲ君はどんなことを見て、どんなことを経験してきたのだろう?
私には想像できないほど苦痛なものだったんだと思う。
そんな苦痛を私が癒してあげられるの?
私に何ができるの?
カナヲ君は私に何を求めているの?
「私、友達に“何を考えているのか分からない”って言われたことがあるの」
「えっ」
「私、小さい頃から人の顔色を見て行動をしていたから、自分の意思で動くことはなかったの」
「えっ、うん」
「人に合わせちゃうから、好き嫌いも毎回変わっていて、それに気付いた友達に言われたの」
「それで?」
カナヲ君は、いきなり変な話をし始めた私の話を、最初は戸惑っていたけどちゃんと聞いてくれている。
「“ただ嫌われたくないだけ”って答えると、友達が笑って言ったの“嫌う訳ないじゃん。だって、もう友達じゃん”って」
私は、その日のことを思い出して嬉しい気持ちになった。
私の心が軽くなって、大親友ができた日だから。
「嫌われたくないという、その気持ちは俺も分かるかも」
「誰もが、そう思うのよ。だから私の友達は笑って言ったのよ。ホッとした顔でね」
「お姉さんの気持ちを知れてホッとしたんだね?」
「そうなんだけど少し違うのよ。私の大事な存在が友達だって分かってホッとしたのよ」
「どうして?」
「私の友達も、私を大事な存在だと思っていたからよ」
「ん?」
カナヲ君は、よく分からないのか首をかしげる。
そんな仕草のカナヲ君は可愛い。
「簡単に言えば、私の友達は特殊なの。答え合わせをしたがるのよ」
「答え合わせ?」
「うん。私の友達は、自分の思っていることが他の人と同じなのか確認をしたくなるのよ」
「それが答え合わせ」
「そうだよ。だから私は自分の行動に意思を持つようにしたの。あの子が不安にならないように」
「そんな関係、羨ましいよ」
カナヲ君の表情が暗くなった。
そして眉間にシワもできた。
「私達も答え合わせができる関係になりたいね?」
「、、、なれないよ」
無表情でカナヲ君は言った。
自分の気持ちを隠している顔で。
「無理だって思っていたら、なんにもできないよ? やってみなきゃ分かんないよ?」
「俺は分かってる。俺には選択肢はない」
「ねぇ、まだ中学生だよ? 選択肢なんてたくさん、、、」
「何も知らないクセに」
カナヲ君の表情が一瞬だけ不安そうになった。
今の言葉はカナヲ君の本当の気持ちじゃない。
「カナヲ君。正直になりなよ。私には隠せないよ」
「なんで、、、」
「きゃっ」
カナヲ君は私を押し倒して、私の顔の横に両手を置いて覆い被さる。
悔しそうな顔で私を見てくる。
それで分かってしまった。
「今までは隠せてきてたの?」
「うん」
「カナヲ君の心に触れてくる私が怖いの?」
「、、、うん」
「カナヲ君。怖がらないで。自分の気持ちは大事にして」
私はカナヲ君の胸に手を当てて言った。
するとカナヲ君は私の手の上に手を重ねた。
温かくて大きな手。
安心する。
「お姉さん」
「何?」
「お姉さんは大事な人から、なんて呼ばれているの?」
「ヒメちゃんって呼ばれてるよ。どうして?」
「ヒメ」
カナヲ君がいきなり名前を呼ぶから、照れて顔が赤くなるのが鏡で見なくても分かる。
「ヒメの大事な人達と同じ呼び方をしたいんだ」
「それならヒメちゃんだよ」
私は照れ隠しでふざけてしまった。
「ヒメ」
私はふざけたのに、カナヲ君は真剣な眼差しで私を見てくる。
何も言えなくなる。
「連絡先を教えてよ」
「えっ」
「俺は毎日この場所には来れないから、来れる時は連絡をするから来てよ」
「どうしようかな?」
「来てよ。この場所は俺でいられるから」
カナヲ君は懇願するように言ってきた。
その姿が可愛くて笑ってしまう。
「可愛いカナヲ君が見れるなら来ようかなぁ」
「可愛い? 男に可愛いはいらない」
「あっ、拗ねたの? 可愛い」
「もう、いい!」
カナヲ君は私から離れて背中を向ける。
怒っちゃった?
「ごめんね。カナヲ君に呼ばれたら直ぐに来るからね」
私はカナヲ君に近付き謝った。
「ありがとう」
カナヲ君は振り向いて笑って言った。
その顔を見て私も笑ってしまった。
そして私は思った。
「その笑顔を守りたい」
「俺も」
カナヲ君の言葉で考えていたことを口に出していたことに驚く私に、カナヲ君は私の顎をクイッと上げて優しい眼差しで見てきた。
整った顔が近くにあって照れてしまうのに、目が離せない。
やっぱり、カナヲ君には人を惹きつける何かがあるんだと思う。
お読みいただき、誠にありがとうございます。
~次話つぶやき予告~
4、恐怖
【恐怖というものは二人で立ち向かえば怖くないのかもしれない】




