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闇落ちしていたので救います  作者: 来留美


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19/22

19、覚悟

楽しくお読みいただけましたら幸いです。


~前話つぶやきあらすじ~

18、捜索

【探していた。キミを。何処に行けば逢える? 分からないからキミを待つしかない】




【ただ確かめたかった。キミが居ればそれでいいと覚悟はしていた】






「ヒメちゃん! 大変よ」


 休日でのんびり過ごしていたある日、お母さんがスマホを持って私の部屋へいきなり入ってきた。


「なっ、何? どうしたの?」

「つ、つ、、、」

「つ?」

「辻(つじ)さんから招待されたの」

「招待?」

「辻(つじ)さんのお家に。ヒメちゃんもよ。行く?」

「えっ、そんなの行くわよ」



「本当に? でも大事な話があるみたいなのよ」


 お母さんはなんだか心配そうに私を見て言った。

 どんな話なのか分からないけどカナヲ君が住んでる街に行けるなら行くよ。


「それでも行くよ」

「それなら今から準備して。直ぐに迎えが来るみたい」


 それからバタバタと準備をしていたら家の呼び鈴が鳴った。

 そこには辻(つじ)さんがいた。


「お久しぶりです」


 辻(つじ)さんは挨拶をしてニコッと笑ったが目が笑っていない。

 何か良くないことが待っていることは分かる。

 それでも行くと決めたのだから、私は気合いを入れて車へ乗った。


 辻(つじ)さん専用の飛行機に乗り、飛行場に着くと車に乗り大きな家に着いた。

 この大きな建物がカナヲ君が住んでいる家。


 家の中に入ってもカナヲ君の姿はない。

 キョロキョロと見回していると、辻(つじ)さんが気付いて笑っていた。


「カナヲには後で会えますよ。姫華(ひめか)さんがワタシの出す条件に承諾していただけたらですが」


 私の選択で決まるの?

 なんだか怖い。


「未成年者に、威圧するような言い方(かた)はやめていただけます? あなたは私にも仰(おっしゃ)っていますよね?」

「それは、申し訳ありません。ですが、今から話すことはカナヲの人生に関わることなのです。お二人には、それを簡単に考えてもらっても困るのですよ」

「ですが、話す前から怯えさせては、それこそちゃんと考えられませんよ」

「そうですね。申し訳ありません」


 お母さんは私を守ろうと、そして辻(つじ)さんに隙を見せないようにと、強い口調で言っている。


「あまり時間も無いので、さっそく話をさせていただきます」


 それから辻(つじ)さんは、カナヲ君のことを話し出す。


「カナヲは、いつか姫華(ひめか)さん。貴方(あなた)のことを忘れるでしょう」


 辻(つじ)さんの一言は私の頭をフリーズさせた。

 何を言われてもいいように覚悟はしていた。

 でも、そんな覚悟は何の意味もなかった。


「カナヲは、少しずつ記憶がなくなっています」

「どうしてですか?」


 私は不安で焦り、辻(つじ)さんが最後まで話すのを待ちきれず訊いてしまった。


「それは分かりません。しかし、あの日からです。クリスマスに姫華(ひめか)さんと話をした日からです」

「私のせい?」

「最初は気のせいだと思っていました。小さなことだったので。しかし、カナヲが姫華(ひめか)さんと電話で話をしたことを覚えていなかったので、そこで異変に気付きました」


 嘘。

 カナヲ君。

 あの日、話をしたことを覚えていないの?

 私は、しっかり覚えているのに。


「病院にも行きました。脳に異常はなく原因不明です」

「治る見込みはありますか?」

「今は分かりませんとしかお伝えできません。本当に何故こんなことになったのか分からないので」

「辻(つじ)さんのことも忘れてしまうのでは?」



「そうですね。昔のワタシのことは忘れていると思います。しかし、今のワタシのことは全て覚えているようなんです。ワタシとしては、それは好都合なんです。昔のワタシはカナヲを苦しめていたので」


 辻(つじ)さんは本当に悔やんでいる。

 カナヲ君のためだと思ってやっていたことだったけれど、心は痛かったんだと思う。


「あなたは好都合かもしれませんが、カナヲ君自身は苦しいはずです。それを、あなたは好都合なんて言葉で終わらせるんですか?」


 お母さんは辻(つじ)さんに怒っている。

 何故だか分からない。

 だって嫌な記憶が失くなるなら良いと私は思うから。


「もし、ヒメちゃんが記憶を失くしたら私は何度でも伝えます。ヒメちゃんにとっては苦しい記憶かもしれないけど、それもヒメちゃんの一部だから。もし、それで傷付くことがあったなら抱き締めて言います。“私はあなたの味方だよ”って」


 お母さんは私に向かって言う。

 お母さんは本当に私のお母さんだ。

 私のことを大切に思ってくれて。

 私のことを一番に思ってくれて。


 何があっても私の味方になってくれる。


「しかしカナヲの場合は、両親の死の記憶を思い出せば眠れなくなる。今は忘れてしまっているから毎日ぐっすりと眠れている。それでも貴女(あなた)は伝えるのですか?」


 辻(つじ)さんはお母さんの気持ちも分かっている。

 でも、お母さんの様(よう)に伝えることで悪い方向に進むことも分かっている。

 だから伝えない選択をしている。


 どちらが正解なんて分からない。

 どちらもカナヲ君のためだって分かるから。


 大人だって分からないのに、子供の私が分かるわけがない。

 どちらの選択が正解なの?


「ヒメ?」


 私の後ろから声がした。

 この声を私は知っている。

 直ぐに振り向くと、カナヲ君が嬉しそうに笑っていた。


「カナヲ君」

「ヒメ。どうしてここに?」

「そんなのカナヲ君に逢いに来たのよ」

「そうなんだ。やっとヒメに逢えた」


 カナヲ君が笑っているから私も嬉しくて笑ってしまう。


「カナヲ。何故ここに? 今日は近くの別荘に居なさいと言ったでしょう?」

「そうだけど、宿題を忘れたから取りに帰って来たんだよ」

「今すぐ別荘へ戻りなさい」

「なんでだよ。せっかくヒメが来てるのに」


 辻(つじ)さんは焦った様子でカナヲ君に言っている。

 そんなに私達が来てることを秘密にしたかったの?


「そうだ。ヒメに訊きたいことがあったんだ」

「何?」


 カナヲ君が元気に私に訊いてくる。

 だから、何か楽しい話なのかなと思った。


「俺とヒメって何処で出逢ったのか覚えてるか?」

「それは、、、」

「カナヲ!」


 カナヲ君の質問に私が答えようとした時、大きな声で辻(つじ)さんがカナヲ君の名前を呼んだ。

 怒っているように感じる。

 何故?




お読みいただき、誠にありがとうございます。


~次話つぶやき予告~

20、整理

【全てを覚えていることに意味がある。いつか答え合わせができるように、、、。“いつか”】

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