18、捜索
楽しくお読みいただけましたら幸いです。
~前話つぶやきあらすじ~
17、忘却の電話
【嬉しくて忘れていく。でも、それは良いことだって思うことにした。だって頭の中はキミのことでいっぱいだから】
【探していた。キミを。何処に行けば逢える? 分からないからキミを待つしかない】
「カナヲ君との電話、終わりました」
私は辻さんにスマホを渡して言った。
お母さんは私の様子を見てから辻さんへ向き直る。
「カナヲ君の病気は新薬で治るんですか?」
お母さんがまたもや、ど直球に訊く。
「新薬はカナヲに効きます。それはデータで証明しています。でも、まだカナヲには使っていないので治るとは断言できません」
「そうですか」
「でも、カナヲに使って治ったら、またここに来ます。必ずカナヲを連れて」
「それまでは辻さん。あなたを保留にします」
「保留ですか?」
「はい。あなたはまだ信用して良いのか分かりません。何故だか分かりませんが私には信用に値する何かが足りません」
私は、信用しても良いのではと思っていたけど、お母さんは何か引っ掛かる部分があるみたい。
子供には分からない大人の経験からくる何かなんだと思う。
そして辻さんは帰っていった。
少し沈黙が流れる。
「ねぇ、お母さん。辻さん、寂しそうに帰って行ったね」
「そうね」
「わざわざ海外から来てくれたのにね」
「そうね」
「でも私は、お母さんの行動は間違ってないと思うよ」
「そうね」
お母さんは私との会話中、ずっと上の空だった。
お母さんだって、やっと辻さんに逢えたのに。
大人って、ただ好きってだけで人を信じることはできないんだね。
でも、それは私を守るためだよね?
ごめんね、お母さん。
ありがとう、お母さん。
「お母さん。プレゼント交換をしようよ」
「そうね」
そしてお母さんとプレゼント交換をした。
二人とも一番欲しいモノではなかったけど、今はこのプレゼントが一番嬉しかった。
ただお母さんが傍にいて笑ってくれるだけで嬉しかった。
だから私も、お母さんの隣で心から笑った。
それから辻さんの新薬が発売された。
カナヲ君にも使われたのかな?
辻さんからは連絡は来ない。
もしかしたら嫌われたのかもしれない。
カナヲ君を心配するだけの私達に価値は無いと判断したのかもしれない。
でも、辻さんが私達にカナヲ君の様子を報告する必要はない。
辻さんはカナヲ君を救うためにやっているだけ。
私達には何の関係もない。
私達は辻さんを疑い過ぎたのかもしれない。
ただ善意で私達にカナヲ君の状況を教えてくれていたのに。
「ずっと辻さんからの連絡がないよね?」
お母さんがスマホの画面を見ながら私に言った。
辻さんからの連絡を待っている。
お母さんも連絡が無いことに疑問を持っている。
「電話しちゃう?」
お母さんが、そう言って私にスマホ画面を見せた時、着信がきた。
そこには辻さんと書いてある。
「お母さん、辻さんからだよ」
「えっ、嘘!」
そしてお母さんは急いで電話に出る。
「はい。もしもし」
辻さんの声は聞こえない。
お母さんの表情を見ながら、どんな内容なのか推測する。
「本当ですか? 分かりました。こちらでも捜してみます」
お母さんは急いで電話を切って私を不安そうな顔で見てきた。
「お母さん?」
「あのね、ヒメちゃん。カナヲ君がいなくなったんだって」
「嘘」
「今、辻さんが捜してるけど見つからないんだって」
「どうしていなくなっちゃったの? やっぱり辻さんに何かされていたの?」
「違うの。ヒメちゃん。カナヲ君は、、、」
お母さんは何か言い難そうにしている。
何?
カナヲ君は何なの?
「ヒメちゃんに真実を話したいけど、今のヒメちゃんは動揺していて落ち着いて聞けないと思うの」
「何? 何なの? カナヲ君がどうしたの?」
「ねぇ、ヒメちゃん。ちゃんと聞いて!」
お母さんの強い口調に私は落ち着きを取り戻す。
「あのね、カナヲ君は大丈夫だから。分かる?」
「うん」
「カナヲ君は小さな子供じゃないのよ。遠くにいる私達が動揺したって何の意味もないのよ。私達はできることをしなくちゃね」
「うん」
「じゃあ、カナヲ君がいなくなったのは、たった今だから日本に帰って来るなら何時頃になると思う?」
「それは飛行機の時間を確認しなきゃ」
「そうね」
そして私達は焦らず、ゆっくりとカナヲ君の行動を分析する。
飛行機は早くても明日の午前中に到着する。
それからカナヲ君が何処に行くのか、予想を立てて直ぐ捜せるようにしておく。
カナヲ君。
どうしていなくなっちゃったの?
何がしたいの?
人に迷惑をかけない良い子なのに。
それにしても辻さんが、カナヲ君がいなくなって直ぐ私達に知らせてくれるなんて、どうしてなの?
中学生なんだから少し待てば帰って来るでしょう?
日本は大丈夫でも海外は治安が悪かったりするから危ないのかな?
「ヒメちゃん!」
夜中、眠れずにいた私の部屋にお母さんが叫びながら入ってきた。
「ヒメちゃん。カナヲ君が見つかったんだって」
「本当?」
「うん。灯台の展望台にいたみたい」
「灯台の展望台?」
「うん。良かったね。見つかって」
「うん」
灯台の展望台に、どうしていたの?
私の所に来ようとはしてなかったんだね。
それはそれで悲しいな。
「あっ、辻さんと電話中だったんだ」
お母さんはバタバタとリビングへ戻り辻さんに謝っていた。
「私もカナヲ君と話をしたいなぁ」
私の願望は誰にも聞こえることなく消えていった。
お読みいただき、誠にありがとうございます。
~次話つぶやき予告~
19、覚悟
【ただ確かめたかった。キミが居ればそれでいいと覚悟はしていた】




