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闇落ちしていたので救います  作者: 来留美


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15/22

15、幸せはすぐ傍に

楽しくお読みいただけましたら幸いです。


~前話つぶやきあらすじ~

14、真実

【ずっとキミの傍にいる。ずっとキミの支えになる。それは嘘でもなんでもない真実】




【ただ逢いたいと願うだけで力が湧いた。大丈夫。キミも同じだよね? 傍には信頼できる人がいるから】






「でも、どうしてカナヲ君には真実を教えないんですか?」


 私が辻(つじ)さんに向かって言うと、お母さんが言おうとした所で辻(つじ)さんが止めた。


「それは、カナヲは限界だったからですよ」


 そう言った辻(つじ)さんの顔は辛そうだった。

 何かあったんだと私は理解した。


「カナヲの脳は両親の死の記憶でいっぱいで、これ以上カナヲに真実を伝えたら確実に壊れてしまう。これ以上、両親の死に関係したことはカナヲには伝えてはいけないんですよ」

「でも、カナヲ君は両親の死の理由を知っていましたよ? だから、あなたを恨んで憎んでいました」

「それでいいんですよ。恨んで憎んでくれれば、カナヲの心はそちらに向く。両親の死の悲しさよりも怒りを優先してくれます」


 辻(つじ)さんは自分を悪者にしたの?

 それでいいの?

 カナヲ君を救おうとしているのに報われないなんて、そんなの悲しすぎるよ。


「本当に貴方(あなた)がた親子は同じ表情を隠すことなく見せますね」


 辻(つじ)さんは私とお母さんを交互に見て、呆(あき)れた様(よう)に言うが、嬉しそうに笑っている。


「始めてですよ。貴方(あなた)がたの様(よう)なお金でも動かない人を見るのは」

「お金?」

「あっ、聞いていませんか? 私はカナヲに関わる人達をお金を使って遠ざけていたんですよ」

「それってカナヲ君が助けを求めた人達が居なくなるって言っていた理由ですか?」

「そう。だから貴方(あなた)がたも同じだと思っていました。でも、お金では動かないのですから、真実を話すしか道はなかったんですよ」


 お金?

 私は何も言われていない。

 ということは、お母さんが言われてたの?

 お母さんは、お金よりもカナヲ君を救うことを選んでくれたの?


 私がお母さんを見ると小さく頷いている。

 お母さんはカナヲ君を優先してくれた。

 それが分かっただけでも嬉しくて泣きそうになる。


「そして真実を知った貴方(あなた)のお母様は、私に協力をしてくれる代わりに貴方(あなた)にだけは真実を伝えてほしいと仰(おっしゃ)ったんですよ」

「ヒメちゃん、ごめんね。カナヲ君とヒメちゃんが離ればなれになることを知ってて、辻(つじ)さんに協力することを決めちゃって」


 本当に柔らかい表情で辻(つじ)さんはお母さんを見て言うと、お母さんは辻(つじ)さんの顔を見てから私に申し訳なさそうに言った。


「カナヲ君の病気は治りますか?」


 私は、辻(つじ)さんが一番訊かれたくない質問をした。

 私に嘘をつこうとすれば、辻(つじ)さんもお母さんも許さないと決めて。


 私はカナヲ君を助けるって誓ったの。

 それを分かっていたお母さんが辻(つじ)さんに協力をするということは、助かると信じているから。


 信じているのに、嘘をつかれたら傷付くのはお母さんで、そんな人を信じたお母さんを許さないのは当然のことよ。



「本当に貴方(あなた)がたは、羨ましい程そっくりな親子ですね」

「えっ」

「姫華(ひめか)さん。貴方(あなた)のお母様も同じことを私に訊いてきましたよ。ど直球にです」


 なんだか嬉しいような恥ずかしいような気分になりお母さんを見ると、お母さんも同じ様(よう)な気分になっている様(よう)だった。


「治るとは断言しません。でも諦めはしません。ワタシは、あの人が残した大事なカナヲを救う。それが、あの人の願いだと信じていますから」

「やっぱり、カナヲ君に執着しているんですね」

「執着?」

「私は、そう思っていました。でも今の話を聞いて、確信しました。辻(つじ)さんはカナヲ君を愛しているんですね」



「ワタシの天才子役と称賛されていた演技を姫華(ひめか)さんは見抜いていたようですね」


 辻(つじ)さんは困った顔をしながら言った。


「血の繋がった本当の親子なのに他人の様(よう)に接するのは大変ですよね?」

「血の繋がった親子ですか? それだったら、もう少し仲良く過ごせていたかもしれませんね」

「えっ」

「カナヲはワタシの大事な人の息子であり、ワタシの息子ではありませんよ。ワタシは他人ですが、身寄りのないカナヲを引き取ることに何の迷いもありませんでした」


 辻(つじ)さんの想いはお母さんと同じ。

 自分の子供ではないのに、何の迷いもなく当然のように一緒にいることを選んだ。


 私もカナヲ君も素敵な人に育ててもらったんだ。

 両親がいなくても私達は幸せなんだって今さら気付いた。


「カナヲ君は日本に帰ってきますか?」

「それはカナヲ次第ですよ。海外に行くことをカナヲには無理強(むりじ)いはしていませんので」


 私は一番訊きたかったことを辻(つじ)さんに訊くと、辻(つじ)さんは即答してくれた。


「えっ、カナヲ君が自ら海外へ行くと言ったんですか?」

「そうですね。真実を知ってしまったのですから」

「えっ、カナヲ君は知っているんですか?」



「そうですね。ワタシと姫華(ひめか)さんのお母様との電話の会話を聞かれてしまって。何故だか分からないのですが、ワタシは姫華(ひめか)さんのお母様の前では演技ができないのです」


 困った顔で言う辻(つじ)さんだけど、お母さんを見る目は本当に優しい。


「辻(つじ)さんはカナヲ君の前で演技をしなくて済むようになったんですか?」

「そうですね。今から少しずつ本物の家族になれるように頑張ります。カナヲも頑張っていますから」


 なんだか全てが良い方向へ向かっている気がする。

 カナヲ君の病気も治って私に逢いに来てくれるよね?


 私、待ってるから。

 本当は今すぐにでも逢いたい。

 でも今は、その時じゃない。

 それをカナヲ君も分かっている。




お読みいただき、誠にありがとうございます。


~次話つぶやき予告~

16、黒い影

【希望が見えたはずだった。でも現実は甘くない。やっぱり黒い影は蝕(むしば)んでいく】

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