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闇落ちしていたので救います  作者: 来留美


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13/22

13、正反対

楽しくお読みいただけましたら幸いです。


~前話つぶやきあらすじ~

12、犠牲

【キミの痛みを取り除きたい。そのための犠牲は喜んで受け入れる。でもキミは望まないんだと思う】




【キミと同じだから惹かれるんだと思っていた。でも、それは違った。本当は無い物ねだりをしていたのかもしれない】






「やっぱり、入ってないんだね」


 カナヲ君は全ての人を助けようとしている。

 でも、その中にカナヲ君は入っていない。

 それほどカナヲ君は自分を大事に扱わない。


 それに気付いたのは、ここ最近。

 カナヲ君と初めて出逢った日のことを思い出した時に、カナヲ君の異変に気付いた。


 あの日、私はお母さんのことを考えていて前を見ていなかった。

 スマホの画面のお母さんと私が笑った写真を見ていた。

 だから横断歩道の赤信号を見ていなくて飛び出した所をカナヲ君が助けてくれた。


 その飛び出した場面を見た時、殆(ほとん)どの人は前方不注意の飛び出しだと思うはず。

 でもカナヲ君は“死ぬつもりなのか?”と言って怒っていた。


 その時は何も不思議には思わなかったけど、よく考えてみれば、そんなことを思うのはカナヲ君が死ぬつもりだったからかもしれない。


 死に場所を探していた所に私が目の前で死にそうになっていた。

 自分以外の人間を助けたいカナヲ君は、何の迷いもなく私を助けてくれた。

 本当に一瞬の出来事だったんだと思う。


 助けてもらった後にスーツの男性が現れて“学校の日じゃない”と言っていたことも私は疑問に思った。


 だってカナヲ君は特殊で、学校がある日は月曜日、水曜日、金曜日なのに、あの日が火曜日だったから。


 あの日が火曜日だということに気付かず、ただ一人、無意識に彷徨(さまよ)っていたカナヲ君。

 もし、あの日の私が普通に学校へ向かっていたらカナヲ君に逢わないし、カナヲ君はいなくなっていたのかもしれない。


「あの日、私が飛び出していなかったら、カナヲ君は今ここにいないよね?」

「そうだね。俺とヒメは出逢っていないだろうね」

「そうじゃないよ。分かっているでしょう? あの日カナヲ君は、、、命を、、、」


 私の最悪の想像を言葉にするのが怖い。

 カナヲ君に確認をするのも怖い。

 でも確認をしなきゃカナヲ君を救えない。


「あの日、俺は、、、分からない」

「本当のことを教えてよ」

「本当に分からないんだ。ただ覚えているのは、目の前のヒメを助けたいって思ったことだよ」

「私を助ける前の記憶がないの?」

「うん。あの日、俺は何故あの場所にいたのか分からない」


 カナヲ君が嘘をついているようには見えない。


 もしかしたら、あの日カナヲ君の心が限界を超えたのかもしれない。

 だから心を閉ざし、体が無意識に危機から逃れようとしていたのかもしれない。


「カナヲ君が傷付いたら私は悲しいよ」

「それでもヒメが傷付くよりは俺が傷付いた方(ほう)がマシだよ」

「ねぇ、カナヲ君の選択肢は少な過ぎるんじゃないの?」

「でも、辻(つじ)に逆らっても全てが無かったことになってしまう。やるだけ無駄だよ」

「本当に無駄なの? 私は辻(つじ)さんがカナヲ君に執着しているように感じるの」



「執着?」


 カナヲ君は辻(つじ)さんに嫌われているのだと思っているから、私の言葉を聞いて怪訝(けげん)そうな顔をしている。


「よく考えてみてよ。カナヲ君が誰かに助けを求めると無かったことになってしまうのは、カナヲ君を失いたくないからじゃないのかな?」

「俺を失ったら復讐ができないからだろう?」

「違う気がするの。そんな単純じゃないと思うのよ」

「ヒメは辻(つじ)という人物を知らないからだよ。あの冷たい目と感情のない言葉に愛情なんて一欠片もない」


 カナヲ君は辻(つじ)さんという人を軽蔑している。

 そんな目で見ていたら真実も見えないよ。


「お母さんが言ってたの」


 いきなり話題が変わったのに、そこに触れることもなくカナヲ君は優しい目をして私の次の言葉を待っていてくれる。


「私の両親が亡くなったのはお母さんのせいだって。あの日、お母さんの誕生日で私の両親は誕生日ケーキを取りに行った帰りの事故だったの」

「そうだったんだ。でも、その時ヒメは何処に?」

「両親は誕生日ケーキはサプライズにしていたからバレないように、私の子守りとして今のお母さんを家に呼んでいたのよ」

「だからヒメは事故に巻き込まれなかったんだね」



「うん。でもお母さんは、ずっと自分を責めてた。それは私にも伝わってたよ」


 私は悲しそうにするお母さんの顔を思い出し、涙が出そうになる。

 そんな私に気付いたカナヲ君は、優しく私の頭を撫でてくれる。


「でもね、それじゃダメだって気付いたの。お母さんが自分を責めて私に遠慮していたら本当の家族になんてなれないって。だから私は、お母さんに言ったの。“お母さんがいたからこそ、私は生きてる”って」

「その言葉を言うのに、どれだけヒメを悩ませたか俺には想像もできないほど苦しかったんだろうね?」



「凄く悩んだよ。両親がいない今の状況を誰かのせいにして生きてて本当にいいのか。でもね、、、」


 私は“でもね”と言った後、一度大きく深呼吸をしてから、座っていても私より高いカナヲ君を見上げた。


「カナヲ君がいたから私は強くなれたんだよ」

「俺が?」

「うん。カナヲ君は逃げる選択肢は無いって言ってたでしょう? その言葉を聞いた時、私は逃げる選択肢しか選んできてなかったんだって気付いたの」


 そう。

 私は、ずっと逃げてた。

 両親の死の真実からも、お母さんが自分自身を責めている理由からも。


 そして本当は弱くて脆(もろ)い私のガラスの心も、私は知らないフリをしていた。


「私は逃げすぎた。そしてカナヲ君は我慢しすぎたのよ」


 カナヲ君と私は同じ傷を違った方法で処置したの。

 私は傷が見えないように絆創膏で蓋をしていた。

 そしてカナヲ君は傷がどんなに痛くても、血が出ていても何もせず我慢をしていた。


 正反対の私とカナヲ君だから惹かれたのかもしれない。

 お互いに持っていないものをお互いが持っていたから。




お読みいただき、誠にありがとうございます。


~次話つぶやき予告~

14、真実

【ずっとキミの傍にいる。ずっとキミの支えになる。それは嘘でもなんでもない真実】

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