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なんで私⁉ 野球知識皆無のJKが戦国時代で野球を広め、信長の恋女房になってしまう件  作者: ハムえっぐ
【織田家激震、義弟長政裏切り編】

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第85話 長谷川真昼、姉川へ向かう

 岐阜城の大手門が開かれ、織田・徳川連合軍、総勢2万5000の大軍勢が動き出した。

 目指すは北近江、姉川。

 裏切り者の浅井長政さんと、越前の朝倉軍を叩き潰すための総力戦だ。


「ふっふっふ、見てよセンイチ。この圧倒的な兵数!」


 私は馬の上で、パンパンに膨らんだリュックサックを叩いてご満悦だった。

 中身は武器じゃない。岐阜城下で買い漁ったお煎餅に干し柿、それに水筒代わりの竹筒に入れた特製冷やし飴だ。


『……おい小娘。これから決戦じゃぞ? 何を遠足気分で浮かれとるんじゃ』


 センイチが呆れ声でツッコんでくるけど、私は鼻歌交じりで返した。


「だってさー、今回は総力戦だよ? いないのは光秀さんと一益さんぐらい。つまり私の役目は最後方で『フレーッ! フレーッ! 信長様!』って黄色い声援を送るチアガール枠ってことでしょ?」


 織田軍スターティングメンバーはこれだ!

 1番 坂井政尚

 2番 池田恒興

 3番 木下秀吉

 4番 柴田勝家

 5番 森可成

 6番 佐久間信盛

 7番 稲葉良通

 8番 安藤守就

 9番 氏家直元


 監督 織田信長

 コーチ 竹中半兵衛 丹羽長秀

 

 ベンチ入りメンバー

 前田利家 佐々成政 蜂屋頼隆 河尻秀隆 太田牛一 毛利新介 堀久太郎 蒲生鶴千代 木下秀長 竹中重矩


 チアリーダー

 長谷川真昼


 これぞ大軍のメリット! 末端の私は安全圏で高みの見物ができるのだ。

 ……まあ、7、8、9は丹羽長秀さんと姉川決戦の背後にある横山城攻めに行っちゃったけど。

 

 隣を行く信長様は、そんな私の能天気さを無視して、鬼のような形相で北の空を睨みつけている。


「……長政。俺の背中を撃とうとした罪、その身で償わせてやる」


 手にした金属バットが、殺気でビリビリと震えている。

 くわばらくわばら。触らぬ神に祟りなしだね。


 ***


 そして私たちは、決戦の地・姉川の南岸、龍ヶ鼻に陣を敷いた。

 川を挟んだ対岸には、すでに浅井・朝倉の連合軍が布陣を完了していた。

 川霧が立ち込める向こう側から、尋常じゃないプレッシャーがビリビリと伝わってくる。


「……見えますか、真昼殿。あれが敵のラインナップです」


 半兵衛君が扇子で霧の向こうを指し示す。

 目を凝らした私は、思わず持っていた干し柿を取り落とした。


「な、何あれ……⁉」


 まず目に入ったのは、浅井軍の中央に陣取る総大将、浅井長政さん。

 かつての爽やか好青年の面影はどこへやら、今の彼は全身からどす黒い修羅のオーラを立ち昇らせている。

 不気味に赤黒く脈動する英霊ボール『フミオ』が傍に浮遊している。


『フミオさん……! 初代ミスタータイガースにして、物干し竿と呼ばれた長尺バットを操る闘神! 今はマツキに敗れて眠っておるようじゃが、闘気だけで周囲の空気が歪んでおるわ!』


 センイチが唸る通り、長政さんが持つ槍は普通の槍の倍はある長さだ。

 ボールは沈黙しているけれど、溢れ出るオーラでバットみたいにブン回されたら、近寄るだけでミンチになっちゃいそうだ。


 朝倉軍の陣地からは、猛獣の群れのような気配が漂っている。

 総大将朝倉景健だけど、指揮を執るのは山崎吉家。

 彼の手には『マツキ』が握られ、周囲を2つのボールが衛星のように旋回していた。


『フッフッフ! 織田の連中なんぞ、闘志なき弱兵よ! 吉家と儂が鍛えた朝倉の精兵に蹴散らされるがいい』


 吉家の手にあるマツキボールが吠え、バチバチと火花を散らすミノルは炎のような熱気を、鈍い銀色の輝きを放つヨシオは鋼鉄のような硬度を放っている。


『ザトペック投法のミノルさん……牛若丸のヨシオさん……儂の青春時代の大スターじゃ』

 

 センイチの青春時代は知らんけど、凄いボールだってのは肌で感じる。


 極めつけは朝倉軍の最前線で一際目立つ、青色の発光体の存在だ。


「ぜっこうちょおおおおおおお!」


 またもや現れた斎藤龍興だ。

 客将として参戦している彼は、英霊ボール『キヨシ』と共にウォーミングアップをしているんだけど、テンションが高すぎて周りの朝倉兵たちが若干引いている。


「今日は最高だ! 俺の槍が火を噴くぜ! ワッショイ! ワッショイ!」


「……うわぁ。敵の面子、濃くない? 織田の人間が真面目に見えるよ」


 私はドン引きした。

 長政さんの物干し竿に磯野員昌さんや海赤雨のおっさんたち、吉家の猛虎軍団、龍興の絶好調。

 あれ? 兵力も向こうのほうが多くね?


 織田軍の本陣で、直前の軍議が始まる。


「敵の総数は、浅井8000、朝倉1万5000の計2万3000。対する我ら織田は姉川に1万、徳川5000の計1万5000。横山城攻めに1万、数はほぼ互角ですが……」


 半兵衛君が冷静に分析する。


「問題は、我らが川を渡って攻めなければならないという地形的不利。それに加えて、敵の英霊ボールの数が脅威です。特に朝倉軍はマツキ殿が複数の英霊を統御しており、質・量ともに厄介極まりない」


 場の空気が重くなる。


「誰か、朝倉を食い止められる者はいないか!」


 信長様の問いに、家康さんがスッと立ち上がった。


「信長様! それがしにお任せを!」


 家康さんは胸をドンと叩き、鼻息荒く宣言した。


「この戦、ただの戦にあらず! 我が愛しき旭殿への求婚の儀と心得ております! 三河武士の意地と愛の力で、朝倉の大軍を一歩も通しませんぞ!」


 ……動機が不純すぎる!

 でも瞳はマジだ。愛に生きるタヌキの覚悟だ。


「ほう。いいだろう家康。任せたぞ」


 信長様は腕を組み、冷徹な目で配置図を見下ろした。


「……浅井は俺がやる。長政の目は、俺が直接覚ましてやる」


 織田軍の主力を惜しげもなく投入する構えだ。

 さすが信長様、ガチギレしてる時の采配に容赦がない。


「ですが信長様。家康殿が朝倉軍に敗北すれば、我らの横腹が突かれます。正直言って、家康殿には荷が重いかと」


 半兵衛君が懸念を示す。

 1万5000の猛虎軍団+絶好調男を、わずか5000の兵で止めなければならないのだ。


「なっ! 半兵衛殿、あまりな言いよう! それがしたち三河兵が信用できぬと申されるか! 兵の差はノムサンでカバーいたす!」


「半兵衛、懸念はわかった。……が、ここは家康に託そう。任せたぞ、家康!」


「お任せあれ、信長様! この徳川家康、例え三河兵が全滅しようとも、朝倉を道連れにしてみせまする!」


 うわ~。そこまで言っていいの? 家康さん。半兵衛君、扇子で顔隠してるけど邪悪な笑みを浮かべてるよ?

 半兵衛君的には発破をかけて、やる気を出させてるんだろうけどさあ。


「……ただ、信長様。敵は4つの英霊を持っています。家康殿のノムサンだけでは本当に三河兵が全滅する恐れがあります」


「む……確かにそうだな」


 信長様の視線が、場内を巡る。

 そして――。


「……あ」


 嫌な予感がする。私の野生の勘が、全力で逃げろと警報を鳴らしている。


「真昼」


 信長様が、真顔で私の名前を呼ぶ。


「センイチと共に家康に加勢し、朝倉を叩け」


「えっと……護衛に又左さんとか成政さんとかと一緒ですよね?」


「いや、連中は他の役目がある。徳川軍に加勢するのは真昼とセンイチだけだ」


「そんな殺生な! 5000人が5001人と1ボールになっても意味ないですって!」


 私が抗議するけど、半兵衛君がニコリと笑って追い打ちをかける。


「真昼殿なら、龍興殿の絶好調にも動じないでしょうし、マツキ殿率いる猛虎軍団の圧にも耐性があるはずです。適任ですよ」


「褒めてないよねそれ⁉ ただの鈍感扱いだよね⁉」


『ガタガタ抜かすな小娘! 案ずるな、儂とモリミチさんとノムサンと半兵衛で策は考えてある。行くぞ、決戦へ』


 策? えっと、実行部隊にされる私が作戦会議にいないのっておかしくね?


 ***


 川霧が晴れ、姉川の水面が朝日でギラギラと輝き始めた。

 私は徳川軍の先頭、家康さんの隣に立たされていた。

 川を挟んでズラリと並ぶ朝倉軍団が視界に入る。


 マツキに率いられた沈黙の猛虎・ミノルとヨシオを従える吉家と、発光しながら準備体操をしている龍興。


「……これから殺し合いが始まる空気。やっぱり慣れないなあ。しかも、これからぶつかる相手の数が、こっちの3倍」


 私がガクガク震えていると、家康さんが私の肩をバシッと叩いた。


「真昼殿と一緒なら百人力! さあ、行きましょうぞ、死出の旅へ!」


「死出の旅とか清々しい顔で言わないで! このタヌキぃぃぃ!」


『フン、ボヤくな小娘! 相手にとって不足なしじゃ! 朝倉なんぞ、3タテしてやるわ!』


 センイチもやる気満々で叫んだ。

 

 そこで織田軍本陣で、信長様がバットを振り上げ、雷のような大音声で叫んだ。


「プレイボール!」


 その声と共に姉川全土で地響きが鳴り、水しぶきが上がり、殺気が津波のように押し寄せた。


 私はバットを握りしめ、徳川軍の最前線で叫んだ。


「あああもう! 私に敵が近づいてきたらタヌキを盾にしちゃる!」


 私の魂の絶叫と共に、姉川の戦いの火蓋が切って落とされた。

 

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