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なんで私⁉ 野球知識皆無のJKが戦国時代で野球を広め、信長の恋女房になってしまう件  作者: ハムえっぐ
【反撃開始、お市ちゃんの野望瓦解編】

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第120話 長谷川真昼、将軍に真実を教える

 京の都の二条御所での義昭の暴走は、すでに実力行使の段階に入っていた。


「上様への忠誠を示せ! 織田に通じる裏切り者を炙り出せ!」


 義昭の命を受けた武装集団が、織田家の京都政務担当・村井貞勝の屋敷を完全に包囲したのだ。


「おっちゃん! 囲まれてるで! 二つ引きの家紋や!」


 寝所に飛び込んできた五右衛門の怒声に、貞勝はひっくり返って起き上がる。


「な、な、な、二つ引き⁉ 上様の家紋じゃないか! どうして私を襲うんですか⁉ 京の政務に手違い起こした覚えありませんよ!」


「んなことは知らんわ! ともかくとっとと逃げるで!」


 五右衛門は貞勝を掴んで背中に乗せると、猛然と屋根の上へと駆け上がっていった。


「ヒエッ……矢がピュンピュン飛んで……ああっ! 火矢で、私の唯一心休まる家がああああああ」


 紅蓮に包まれる村井貞勝邸を見て、貞勝の口から魂が飛び出していく。


「ちょうどええわ。このまま気絶しとけ。ほな、走るでええええ!」


 時々天に昇ろうとする貞勝の魂を引っ込めながら、五右衛門は屋根の上をひた走った。

 

 同時刻、細川藤孝邸でも、同じ惨劇が起きていた。

 幕臣でありながら信長と親しい細川藤孝に、義昭が排除を命じたのだ。

 松明の明かりが揺れる中、屋敷の中から藤孝の悲痛な声が響く。


「おやめください! 私と貞勝殿を討って何になりますか! 信長殿との関係を自ら断つなど正気の沙汰ではありませぬ!」


「黙れ裏切り者め! 上様の御成敗じゃ!」


 門が破られようとした、刹那。


 ――タァァァァン!


 乾いた銃声が連続して響き、先頭で槌を振るっていた兵の手元が弾き飛ばされた。


「な、なんだ⁉」


 闇の中から、整然とした隊列を組んだ鉄砲隊が現れる。

 硝煙の匂いを纏った怜悧な美丈夫――明智光秀が中心に立っていた。


「……上様の判断に、異議あり」


 光秀は冷徹に告げると審判のように手を挙げた。

 背後に彼が鍛え上げた精鋭射撃隊が、微動だにせず銃口を向けている。


「これより、重要参考人・細川藤孝殿および村井貞勝殿を保護する。……邪魔をするなら、このまま戦闘開始と行きますかな?」


「あ、明智十兵衛! おのれ! 貴様の九会曼荼羅論のせいで、上様は信長に騙されたんだ!」


「私は天下万民のために合理的な判断をしたまで。……撃て」


 光秀の号令一下、威嚇射撃が地面を穿つ。

 怯んだ隙に手際よく手勢を率いて突破してきた藤孝と、五右衛門に担がれ脱出した貞勝を見つけ救出し、撤退戦を開始。


「五右衛門、そのまま貞勝殿を運んでこっちに!」


「光秀さんか! 助かったわ!」

 

 猛追する山岡景友率いる幕府軍だったが、半兵衛の指示で駆けつけた柴田勝家、丹羽長秀、蜂屋頼隆軍に今堅田で両軍は激突。

 逆に包囲され、大敗を喫した山岡景友は織田軍に降伏した。

 

 藤孝と貞勝は無事、近江坂本城へと辿り着く。


「ふぅ……間一髪でしたな。十兵衛殿、感謝します」


「礼には及びません。幕府再興の時から我ら織田に味方してくれた藤孝殿を見捨てたら、私は死んでも死にきれませんから」


 藤孝と光秀がガッチリと握手を交わす。


「騙してたって……京を平和にしたのは信長様なのに……いたっ!」


 落涙する貞勝の背中へ、五右衛門が手形を付けていく。


「泣くのは早いで。京の町にはおっちゃんが必要なんや。とっとと戻るために戦うで」


「五右衛門君の言う通りです。……さて藤孝殿、貞勝殿、信長様と合流しましょう」


 光秀は京の方角を見つめながら、決意を込めた目で呟いた。


 ***


 岐阜城では半兵衛君の策が進行していた。


「まずは義昭様に、徹底的に低姿勢な書状を送ります」


 半兵衛君が見せた手紙の下書きには、歯の浮くような言葉が並んでいた。

『信長は深く反省しております』『今後は将軍様の仰せのままに』『足利の世は、未来永劫不滅です』……。


「うわぁ……絶対思ってないよね、これ」


「ええ。相手を油断させ、御所に引きこもらせるための甘い球です。監督が油断して采配をミスするようにね」


 その裏で、半兵衛君の手は冷徹に盤面を動かしていた。

 織田軍の主力である柴田勝家さん、丹羽長秀さん、そして秀吉さん・秀長に浅井・朝倉が岐阜へ進軍できないよう、国境の街道を物理的に封鎖・破壊させていたのだ。


「さらに、摂津の荒木村重殿には『失敗すれば次はない』と圧力をかけ、西からの本願寺勢を遮断する壁として配置しました」


「村重さん、完全にパシリだね……」


「官兵衛殿によると教育可能な怪物ですから、使い潰すくらいで丁度いいのです」


 半兵衛君の鉄壁の守備采配。

 これにより、京の義昭は完全に孤立無援の状態に置かれた。


 そして数日後。

 信長様、私、半兵衛君は僅かな手勢を率いて上洛した。

 道中で光秀さん、藤孝様、そして荒木村重さんと合流し、一気に二条御所を包囲する。


 二条御所の楼閣に、将軍・足利義昭が姿を現した。

 彼は眼下の織田軍を見下ろし、狂ったように高笑いしていた。


「ハハハハ! 信長、今さら命乞いか! 遅い、遅いわ! 余を蔑ろにした報いを受けるがよい!」


 義昭は扇子を振り回して叫んできた。


「東からは信玄殿が、西からは久秀と門徒たちが迫っておる! お前の負けじゃ! 天下は余のものじゃ!」


 信長様は馬上で金属バットを肩に担ぎ、ただただ冷ややかな視線を送る。


「……哀れよな」


 半兵衛君が一歩進み出て、よく通る声で告げた。


「義昭様。……残念ながら、貴方の待っている助っ人は、もうこの世にいませんよ」


「……は?」


 義昭の動きが止まる。


「何を申す! 信玄殿は三方ヶ原で勝利し、こちらへ向かって……」


「武田軍は全軍、甲斐へと引き返しました。……理由は、ご想像にお任せします」


 私の告げた言葉に、義昭の顔から血の気が引いていく。

 信玄が……来ない?

 勝ったのに? なぜ? まさか……死……?


 そこへ追い打ちをかけるように、信長様が金属バットの先端を義昭に向けた。


「上様。帝が京の騒乱を嘆いておられます。……俺も足利幕府の一員にして、朝廷の臣でございますれば」


 信長様は獰猛に笑った。

 それは慈悲の笑みではなく、獲物を追い詰めた肉食獣の笑みだった。


「ここはいかがですかな? 互いのために、手打ちにするというのは?」


 背後に明智光秀率いる鉄砲隊と、歴戦の織田軍が殺気を放って控えている。

 東の信玄は消え、西の援軍は来ない。


「あ……あぅ……」


 義昭は腰を抜かし、へたり込んだ。

 手から扇子が滑り落ち、カランと虚しい音を立てた。


「……わ、わかった……。和睦……和睦じゃ……」


 こうして将軍・足利義昭の叛乱は、信長様の圧倒的な圧力と半兵衛君の盤面操作によって、あっけなく鎮圧された。

 

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