74.行政書士の災難
辻先輩の紹介で「素行調査」を行った牧瀬雄三は、真面目な男だった。
雄三という名前だが、長男である。
先日、母親の雪路が亡くなり、四十九日法要も終り、遺産相続の会議が行われたが、雄三の姉の幸子の夫、梶田英介が依頼主である。
○月〇日。
辻先輩の紹介で「素行調査」を行った牧瀬雄三は、真面目な男だった。
雄三という名前だが、長男である。
先日、母親の雪路が亡くなり、四十九日法要も終り、遺産相続の会議が行われたが、雄三の姉の幸子の夫、梶田英介が依頼主である。
梶田が疑っているのは、牧瀬が母親の遺産になる通帳残高から、異常に使い込んでいるのでは?ということだった。
辻先輩には珍しく、「断ってもいいよ」と言ったのだが、すぐに理由は分かった。
梶田は、所謂「ギャンブル依存症」で、特にパチンコ狂いだった。
家人には、「もう止めた」と言っていたが、一度冷めたギャンブル熱は、コロニーのお陰で一気に盛り返した。
コロニーによる「引きこもり」「外出自粛」は、業界を一気に冷え込みさせ、「勝ちやすく」なったのだ。「釘が甘くなった」からだ。
一部のパチンコ依存症の者達は、ここぞとばかりに、感染リスクなどお構いなしに遊び儲けた。
夢は長く続かなかった。
コロニーが終ると、自然淘汰でパチンコの会社は倒産が相次ぎ、生き残った会社の店の「釘」甘くなくなった。早い話、梶谷は借金が出来ていた。
梶田は、出来るだけ多く嫁に相続させる為、預貯金の通帳チェックを行ったり、俺に調査依頼をしたりした。俺の調査で「付けいる隙」を見付ける積もりだった。
残念ながら、「品行方正」だった。もう仕事はリタイアしているが、質素に暮らし、親の介護をしていたのだ。
俺は、辻先輩を通じて、調査報告書を提出した。
牧瀬の要望で、親族会議が行われ、行政書士を招いて、「分割協議」が行われた。
梶田は、娘婿なので、参加出来ない。
行政書士を通じて遺産分割は行われた。
梶田は、幸子をなじった。「もっと貰える筈だろう?家だってあるんだろうが。」
「業者を呼んで、みて貰ったら、二束三文だったのよ、だから雄三のもののままにしたのよ。」
雄三は「法定相続人」であることは勿論、「成年後見人」だった。
一番の権利があるにも拘わらず雄三は、きょうだいに多めに相続させた。
にも関わらず、梶田は恨んだ。
幸子は第一子であり、自分の財産と幸子の財産は共有だから、という極めて「身勝手な」解釈の元、最後の打ち合わせをしている雄三と、行政書士三田前映子の前に現れ、ナイフで暴れた。
近所の人の報告で、梶田は現行犯逮捕された。
辻先輩からの連絡で知った俺は暗澹とした気分になった。
辻先輩の診療所からの帰り、運転している倉持が言った。
「先輩。隣の駅前に新しいお好み屋が出来たの知ってます?行ってみます?」
「いえーすう!!」
倉持は、いい後輩や。
ええ彼女見付けてやらんとな。ワコ以外で。
―完―
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