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What Remain  作者: 雲居瑞香
番外編
64/66

愛するあなたに花束を・中編










 ルーファスが集めてきた、と言っても人数は少なかった。クライド、ルーファス、リリアンを含めて六人。他にマティアス、エイミー、ノエルだ。人選が微妙である。だがまあ、主要人物と言ったらこうなるだろうか。


「何なんだ? 何かあったのか?」


 クライドがほかの五人を見渡して尋ねた。大有りだ、と答えたのはリリアンである。


「アーサーを振ったと聞いたのだが」

「! どこでその話を……陛下か」


 驚いて尋ねたクライドだったが、自分で答えを出していた。リリアンはこくりとうなずく。

「とりあえず、弁明を聞いてやる。何故断った」

「……無駄に偉そうだな」

「元からこういう性格だ」

 だが、多少イラついているのは認める。リリアンはクライドに向かって言った。


「いいか。クライドさんとアーサーの間がこじれると、私にしわ寄せが来るんだ。機嫌が悪いのも察しろ。私だってもっと心穏やかに過ごしたいわ」


 ここまで言えば、クライドも何故自分が呼び出されたか察しただろう。


「いや、しかし、身分が……」

「それはどうとでもなるだろう。私の義弟にでもなるか」


 ルーファスがさらりと言った。やはり、リリアンが考えることと同じだ。そこでクライドはさらに問題提起。


「いや、しかし……俺が抜けると、ナイツ・オブ・ラウンドの統率者が……」


 みんなの視線がマティアスに集まった。現状、ナイツ・オブ・ラウンドでクライドの次に位置するのが彼だからだ。不安しかない。

 とはいっても、もともとクライドとリリアンの兄ウィルがいて、二人でバランスが取れていた。だが、その一方であるウィルが亡くなってしまったため、現在、ただでさえナイツ・オブ・ラウンドのバランスは悪い。


「これはアーサーに聞いてみなければ確定できないが、私にはナイツ・オブ・ラウンドを率いる覚悟はあるとだけ言っておく」

「……」


 撤回されていなければ、リリアンは一度ナイツ・オブ・ラウンド第四席になった。第五席であるマティアスより席次は上だ。まあ、アーサーが認めれば、だが。もう一度叙任式をしなければならない可能性もある。

「ああ、だからリリアン、最近セオの教育に力入ってるんだ」

 ノエルが納得したようにうなずいた。エイミーが「私もマティよりはリリアンがいいなぁ」と言った。マティアスは大げさに嘆く。

「お前ら……仲間だろ……」

「マティ。ややこしくなるから黙っていろ」

「はい」

 リリアンに鋭く言われ、マティアスはすぐに黙った。


「アーサーも同じ心配をしていたのだが、そう言った問題は割と解決できる。私たちが考えうる問題には、たいてい解決方法が存在するものだ」

「……いや、それ考えられるの、リリアンと宰相くらいじゃないかな」


 ノエルがツッコミを入れたが、リリアンはそのまま聞き流した。

「要するに、あとは二人の心もちの問題だな。特にクライドさん。ヘタレかっ」

「……お前、ウィルが乗り移ってないか……」

 クライドが若干心配そうに尋ねた。いくら精神干渉魔法が使えるからと言ってシャーマンではないのでそんなことはできない。しかし、若干キャラ崩壊しているのは認めるところのリリアンである。なぜなら。

「面倒くさいんだよ、君たちは!」

 みんなが避けて、あえて言わなかったことはっきりと言ったリリアンであった。


「でもさー。どうするの? クライドさんもだけど、陛下も結構頑固じゃない?」


「陛下は既に一回、クライドさんに告白してるんだから、クライドさんが陛下にプロポーズすればいいんじゃないかな」

「一度断っているのに、今度は自分からプロポーズするの?」

「そこは、自分からしたかったんだー、とか言ってさ」

 主に普通の意見を出してくるのはエイミーとノエルだ。この二人は感性がまだふつうであるらしい。マティアスなどは「押し倒せばいいんじゃね?」などと言って各方面からバッシングを受け、最終的にリリアンに蹴られていた。

「要するに、アーサーがうなずかざるを得ない状況を作り出せばいいわけだ」

「リリアン、発言が作戦立案めいてきてる」

 ため息をついてエイミーが言った。たぶん、アーサーは理詰めで説得すればうなずく。納得する。だが、この場合は感情に訴えたほうが正しいのだろう。


「……まあ、不謹慎ですけど、宰相はメアリ様になんと言ってプロポーズしたんですか?」


 ノエルがルーファスに尋ねた。この中で既婚者はルーファスだけだ。最も、彼の妻メアリは、内戦時に亡くなっているが。彼女が、アーサーのナイツ・オブ・ラウンド第二席である。

「……メアリからプロポーズされたんだ。脅迫まがいだった……言わせるな、恥ずかしいだろう」

 というようなことを真顔で言うルーファスなので、リリアンは彼と同じくくりに入れられてしまうのである。


「やっぱり、紅い薔薇の花束じゃない? 歌にもあるし」


 エイミーが言った。確かに、有名なオペラでそう言う歌はある。

「エイミーは薔薇の花束をもらってうれしいのか?」

「わあっ、とはなるね」

 マティアスの問いにエイミーが答えた。確かに、インパクトはある。

「ちなみにリリアンは?」

「処理に困る」

「お前、そう言うやつだよな」

「ちなみに、百八本で『結婚してください』になるらしいぞ」

「何でそう言うのは知ってんだよ」

 マティアスとのやり取りである。ふざけるのをやめれば、彼も結構まともな意見を出す。貴族の女性はこう言ったことが好きなので、リリアンも有名どころはだいたい知っていた。


「へえ。他には?」


 興味を示したのはエイミーだ。彼女が一番反応したものを送るのが一番無難かもしれない。すでに、薔薇の花束+プロポーズに落ち着きかけていた。

「あとは、三百六十五本で『一年中あなたを思っています』」

「重い!」

「あとは、九十九本で『永遠の愛』、十二本で『私の妻になってください』、三本で『あなたを愛しています』だったか。諸説あるが」

 個人的には、三本の『あなたを愛しています』が一番いいと思う。本数で花言葉が違ってくる薔薇だが、だいたい愛の告白に使える。

「……薔薇を送ることは確定なのか」

 そう言ったのはクライドだ。彼はまだ納得していないらしい。

「というか、俺じゃなくても、陛下にはもっとふさわしい人が……」

「あなたの言う身分で言えば、セオ辺りがふさわしいってこと?」

「……」

 リリアンの指摘に、クライドはこわばった表情になった。自分はふさわしくない、と訴えながらも、アーサーが自分以外の男のものになるのが嫌なのだろう。


「わかったならおとなしく覚悟を決めろ。面倒くさいから、私が」


 本当に、間に挟まれるリリアンは面倒くさいのだ。

「ロマンティックな状況も用意しておけばいいんじゃないかな」

「おお! 楽しそう。でも、誰が演出すんの?」

 ノエルとエイミーも意見を出し合うが、エイミーが鋭い指摘をした。確かに、誰が演出するのだろう。まあ、このメンバーの中ではこの二人がやるしかなさそうだけど。


「つーか、薔薇は?」


 マティアスのさらなる指摘である。リリアンはクライドを見て言った。

「クライドさん、自分で買ってきなよ」

「本当に!? やるのか?」

 この期に及んで及び腰のクライドだが、リリアンはスルーして「こういうのは自分で買いに行く方がいいだろう」とだけ言った。こういうのは、自分で買いに行き、その姿を目撃される方がいいだろうと思った。

「決行は三日後。とりあえずクライドさんは薔薇を見に行けばいいと思う。その他諸問題は私たちに任せて、口説き文句でも考えておけ」

 八歳も年上の男性に対して、とても偉そうな態度だった。









ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


プロポーズ大作戦、ってなかったでしたっけ。


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