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回収箱  作者: しー
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第五十四話 最後の手紙

ここまで長い物語を読み続けてくださっていること、とても嬉しく思っています。

一話一話、皆さまに読んでいただけることを励みに、最後まで大切に書いていきます。

第五十四話も、ぜひゆっくり読んでいただけたら嬉しいです。

それでは、第五十四話をどうぞ。

家を出ると、冷たい夜風が頬を撫でた。

「店まで行って、塩を取ってくるだけだ」

そう呟き、店へ向かう。


照明をつけ、調味料の棚から塩を取った。

レジへ戻ろうとしたとき、机の上の封筒が目に入った。

「——ん?」

表には、見慣れた文字。

——翔へ。

「——瓜?」

その筆跡には見覚えがあった。


封筒を開くと、一枚の紙が入っていた。

翔へ。

この手紙を読んでいるということは、俺はもう君の前にはいない。

最後に、これだけは伝えておく。

君が片想いしていたあの子は、もうこの世にはいない。

「——」

何度も君に伝えようとした。

だが、できなかった。

君はずっと、あの人が生きていると思っていた。

「妻ができた」

そう言って、あの人を俺たちの前に連れてきた。

初めて見たとき、俺は驚いた。

そこには、誰もいなかったからだ。

君には、本当にあの人が見えていた。

それでも君は幸せそうに笑っていた。

それが君のためだと思った。

翔の親父も、同じだった。


君の親父は、君を守るために回収箱を隠した。

それでも君は見つけ出し、店の前に置いた。

まるで、そこになければならないと知っているように。

「——俺が?」

指が震える。

箱を置いたことも、何を入れたのかも、俺は覚えていない。


あの薬のことも書いておく。

君が飲んでいた薬は、君を治療するためのものだった。

あの人を失ったことを受け入れられず、君は現実と向き合えなくなっていた。

薬を飲んでいた間、君にはあの人の姿が見えていなかった。

だが、薬を飲まなくなってから、再びあの人が見えるようになった。

君にとって、あの人は十七年間ずっとそばにいた妻だった。

「——十七年間……」

朝の食卓。

湯呑みの茶。

「いってらっしゃい」と笑う妻。

妻と過ごした日々は、確かに記憶に残っている。

なのに、その記憶のどこにも、妻以外の誰かがいる気配はない。

君が見ていたあの人は、現実には存在しない。

それでも、君には確かに見えていた。

薬をやめたことで、君の中にあった幻が再び現れたんだ。

だが、それと回収箱のことは別だ。

薬が君の身体を変えたわけじゃない。

箱が君に何をしたのか。

それは、君自身の身体が覚えている。

もう、俺から言えることはない。


ただ一つ。

あの箱が回収するものは、物じゃない。

熊。

——鳥。

魚。

瓜。

ただの動物や食べ物の名前じゃない。

熊は熊谷。

鳥はお前自身。

魚は魚住。

そして、瓜は俺。

俺たちの名前が示す順番には、意味がある。

君は熊の頭を喰らい、鳥へと変わり始め、魚の身を喰らった。

熊谷と魚住。箱が示す名前と、君が喰らったものは、奇妙なほど重なっている。

熊の頭を喰らったときも、魚の身を喰らったときも、君は何かを忘れた。

だが、身体は覚えている。

君が何を喰らい、何を自分の中に取り込んできたのか。

箱が回収するものも、君が何をしてきたのかも。

そして、最後に残ったのが——瓜。

だから——。

最後に、美味しく食べな。

瓜より。

第五十四話まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

ここまで『回収箱』を読み続けてくださった皆さまに、心から感謝しています。

長い物語になりましたが、こうして一話ずつ読んでいただけることが、本当に嬉しいです。

最後まで読んでよかったと思っていただける物語にできるよう、残りの話も一つ一つ大切に書いていきたいと思います。

これからも『回収箱』をよろしくお願いいたします。

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