第五十一話 瓜
おはようございます。
今日も『回収箱』を読みに来てくださり、本当にありがとうございます。
朝の静かな時間に、こうして物語を読んでいただけることを嬉しく思っています。
第五十一話では、翔平がもう一度、あの箱と向き合います。
ここまで積み重ねてきた出来事が、少しずつ一つにつながり始めています。
朝のひととき、翔平と一緒にこの先を見届けていただけたら嬉しいです。
それでは、第五十一話をどうぞ。
熊谷の家を出る頃には、すっかり日が暮れていた。
「今日はありがとうございました」
熊谷の息子が頭を下げる。
「いや。俺も熊谷さんには世話になったからな」
熊谷の息子が家へ戻る。
俺は一人、店へ向かった。
頭の中には、まだあの写真が残っていた。
箱崎さつき。
俺の妻。
なのに、思い出せない。
疲れているはずなのに、頭だけは妙に冴えていた。
——回収箱の中に入れてしまった。
あの子を。
そして——。
——翔平君を連れて行かないでくれ。
熊谷の手紙が、頭から離れなかった。
あの子を箱に入れた熊谷。
その名前が、今度は回収箱にあった。
——なぜ、あいつまで。
店が見えてきた。
店の前には、いつものように回収箱が置かれている。
街灯に照らされた錆びた蓋が、鈍く光っていた。
足が止まる。
見たくない。
そう思うのに、視線は箱から離れなかった。
箱を見ていると、胸の奥がざわつく。
何かを知っている。
そんな感覚だけが残る。
俺は箱へ近づき、蓋に手を伸ばした。
冷たい。
指先が、蓋の縁をなぞる。
まるで、何度も触れたことがあるように。
その瞬間——。
「翔ちゃん」
背後から、妻の声がした。
心臓が跳ねる。
「——お前」
振り返る。
妻が立っていた。
いつものように、心配そうな顔で俺を見ている。
「こんなところで何してるの?」
「——いや」
俺は箱へ視線を戻した。
「ちょっと気になってな」
妻は黙って隣へ歩いてくる。
「開けるの?」
「ああ」
「——怖くない?」
「分からない」
自分でも驚くほど、正直な言葉だった。
妻は少しだけ笑った。
「じゃあ、一緒に見ようか」
その言葉を聞くと、不思議と肩の力が抜けた。
妻が隣にいる。
それだけで、怖さが遠のいていく。
俺は蓋へ手をかけた。
ゆっくりと持ち上げる。
——ギィィ。
錆びた金属が、不快な音を立てた。
第五十一話まで読んでくださり、本当にありがとうございます。
朝の時間を使って『回収箱』を読んでいただけること、とても嬉しく思っています。
ここまで翔平と一緒に物語を追いかけてくださった皆さまに、心から感謝しています。
少しずつ明らかになっていく過去と、翔平の中に残された記憶。
そして、もう一度向き合うことになった回収箱。
ここから先、これまでの出来事がどのようにつながっていくのか。
最後まで一緒に見届けていただけたら嬉しいです。
これからも『回収箱』をよろしくお願いいたします。




