第四十九話 告白
おはようございます。
朝の静かな時間に、「回収箱」を読んでくださりありがとうございます。
新しい一日の始まりに、少しだけ不穏な物語を。
翔平が知ることになる過去と、そこに残された告白を、最後まで見届けていただけたら嬉しいです。
さらにページをめくると、紙の間から古びた封筒が落ちた。
表には「鳥居君へ」とだけ書かれていた。
「——なんで、俺宛ての手紙が?」
封を開く。
黄ばんだ紙には、震えた文字が並んでいた。
私は、この村の村長を務める熊谷だ。
だからこそ、許されないことをした。
君の奥さんの家族を、この村から追い出そうとしたのだ。
「——妻の家族?」
知らなかった。
君の父親も、瓜の家族も、私に抗議した。
「あの子たちを仲間外れにするのは間違っている」
それでも私は聞かなかった。
村の者たちも私に従い、誰もあの家族に近づかなくなった。
それでも、私は満足しなかった。
私に逆らったあの家族が許せなかったのだ。
村から追い出すだけでは、気が済まなかった。
あの家族が大切にしているものを奪えば、二度と私に逆らえなくなる。
そう考えた私は、君たちが大切にしていた、あの子に目をつけた。
回収箱のことは知っていた。
あの箱に入れれば、あの子を家族から奪えると思った。
そして私は、取り返しのつかないことをした。
そこから先は、文字が大きく滲んでいた。
滲んだ文字の下に、途切れた一文が残っていた。
君たちが大切にしていた、あの子を——。
その先は、何度読み返しても分からなかった。
ただ、その下に一行だけ、はっきりと書かれていた。
回収箱の中に入れてしまった。
「——え?」
呼吸が止まる。
回収箱。
あの箱に。
「子供を——?」
頭の奥が痛んだ。
小さな手が、俺に向かって伸びていた。
泣き声が響く。
冷たい金属の箱。その前に、さつきがいた。
「——さつき!」
駆け寄ろうとした俺の前に、大きな影が立ちはだかった。
熊谷。
その手が、さつきの身体を持ち上げる。
「やめろ!」
俺は熊谷にしがみつき、必死に腕を引いた。
それでも、熊谷は止まらなかった。
さつきが箱の中へ入れられる。
「翔ちゃん——!」
箱の縁から伸びるさつきの手に、俺も手を伸ばした。
もう少しで届く。
あと少しで——。
ガンッ。
蓋が閉じた。
その音が、頭の奥で何度も響く。
「——っ!」
額を押さえる。
息ができない。
助けようとした。手を伸ばした。
それなのに、届かなかった。
「……さつき」
箱の前に立ち尽くす。
さっきまで聞こえていた泣き声は、ぴたりと止んでいた。
「……さつき?」
返事はない。
箱は、何事もなかったかのように静まり返っていた。
中に、さつきがいるはずなのに。
どうして、何も聞こえないんだ。
なぜ、助けられなかった。
どうして、あのとき——。
それ以上は思い出せない。
ただ、耳の奥にさつきの声だけが残っていた。
「……っ」
気づけば、手紙を握りしめていた。
震える指を緩め、続きを目で追う。
紙の下には、まだ文字が続いていた。
箱崎さん。
許してほしいとは言わない。
あの子は何も悪くない。
どうか、あの子だけは——。
翔平君を連れて行かないでくれ。
あの箱は、さつきを奪っただけでは終わらない。
今度は、翔平君を連れて行こうとしている。
悪いのは俺だ。
熊谷だ。
だから、翔平君だけは——。
そこから先は、何も書かれていなかった。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
朝から少し重たいお話になりましたが、ここまで読み進めてくださったことに感謝しています。
過去に何があったのか。
そして、翔平の記憶に残ったものは何なのか。
物語は、少しずつ核心へ近づいています。
次の一話も、ぜひ見届けてください。




