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回収箱  作者: しー
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44/55

第四十四話 標本

読んでくださってありがとうございます。

いつもと変わらない朝。

いつもと変わらない日常。

けれど、ほんの些細な違和感が積み重なることで、当たり前だと思っていた景色は、少しずつ違って見えるのかもしれません。

気づかなければ、そのまま通り過ぎてしまうような小さな変化。

それでも、一度気になってしまえば、簡単には目を逸らせなくなるものです。

今回も、主人公の日常に潜む違和感を感じながら、最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

レジを開け、釣り銭を数える。

「千円札、よし」

「五百円玉、よし」


壁の時計を見る。

まだ開店まで時間がある。

ふと、土間に目をやった。

いつの間にか、袋が置かれていた。

「——?」

見覚えのある袋だった。

店を出ようとしたときだった。

袋を持ち上げる。

カサリ。

中で何かが擦れる音がした。

袋を覗く。

四匹分の魚の骨。

「——そうだ」

持って帰ってきた。

……そうだった気がする。

いつ、どこから。

そのあたりは、曖昧だった。

「俺、何でこんなものを?」

答えは浮かばなかった。

捨てればいい。

そう思ったのに、手は袋を離さなかった。


袋を手にしたまま、店を出た。

次に気づいたとき、俺は家の台所に立っていた。

手には、魚の骨が入った袋。

いつ店を出たのか、覚えていない。

袋を開く。

一本。

また一本。

折れないよう、慎重に骨を並べていく。

頭。

背骨。

尾びれ。

どこに何があるのか、妙にはっきり分かった。

一本も欠けていない。

四匹とも。

俺は頭を少し傾け、並んだ骨を眺めた。

まるで、生きていた頃の姿へ戻すように。

「——俺は、何をやってるんだ」

乾いた笑いが漏れた。

それでも、崩す気にはなれなかった。

皿の上には、四匹分の骨が不自然なほど整然と並んでいた。

「……」

何かを間違えた気がした。

けれど、何を間違えたのかは分からない。


皿を流し台の隅へ、そっと置く。

「帰ってきたら、妻に笑われるな」

そう呟き、店へ戻った。

最後まで読んでくださって、ありがとうございます。

当たり前だったはずの日常に、少しずつ違和感が混ざり始めています。

その違和感がどこへつながるのか、引き続き見届けていただけたら嬉しいです。

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