↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
回収箱  作者: しー
PR
40/55

第四十話 部屋

第四十話では、翔平がこれまで感じてきた違和感が、少しずつ形を変えていきます。

いつもとは違う場所。

そこに漂う、見慣れない空気。

そして、本人にも説明できない感覚。

目に映るものだけでなく、翔平自身が何を感じているのかにも注目しながら、読んでいただけたらと思います。

第四十話「部屋」

どうぞ、最後までお楽しみください。

ギィィ——。

中へ入るほど、生臭い匂いが濃くなった。

なのに、鼻を塞ごうとは思わなかった。

もっと嗅ぎたい。

そう思った瞬間、自分でもぞっとした。

「……何だ、この感じ」

電気をつける。

カチッ。

部屋の中央にベッドが一つ。

その上に、大小四匹の魚が頭を揃え、腹を上にして並んでいた。

まるで患者のようだった。

「……何だ、これは」

目も口も動かない。

それなのに、こちらを待っているように見えた。

ぐうぅ……。

腹が鳴った。

「食べるな」

自分に言い聞かせても、視線は魚から離れない。

白い腹。濡れた皮膚。その下の肉。

どこを食べればいいのか、妙にはっきり分かった。

「……脂が、のってそうだ」

口にした瞬間、背筋が凍った。


一匹に近づき、身に触れる。

まだ温かい。

手を引こうとしたが、その感触が心地よかった。

指先に力が入り、身が裂ける。

生臭い匂いに、腹の奥が熱くなった。

「やめろ……」

そう呟きながら、魚の身を口へ運ぶ。

脂の甘みが広がった。

「……うまい」

自分の声にぞっとした。

「違う……」

なのに、もう一口欲しかった。

俺は魚の身をむしり、次々と口へ運んだ。

止めようと思うほど、欲しさが強くなる。

一匹目の身が消え、白い骨だけが残った。

骨の隙間まで探り尽くすと、次の魚に手を伸ばした。

二匹目。三匹目。そして、四匹目。

皮が剥がれ、肉がなくなり、骨がむき出しになる。

それでも指先は止まらなかった。

最後の一片を口に押し込んだ、そのとき——。

——ぽたり。

床に魚の脂が落ちた。

その音に、身体がびくりと跳ねた。

「……え?」

目の前にあったのは、四匹分の白い骨だった。

「……俺は」

荒い息が漏れる。

震える手には脂がつき、口元にはまだ味が残っていた。

「何を……やってるんだ」

「違う……俺は、こんなもの……」

言葉が続かない。

もっと食べたい。

その感覚だけが、消えてくれなかった。

「……違う」

視界がぐにゃりと歪んだ。

膝から力が抜ける。

倒れ込む直前、目に映ったのは四匹分の白い骨だった。

そして——。

目の前が、真っ暗になった。

第四十話では、翔平の身体や感覚に起きている変化を、ひとつの場面を通して描きました。

自分では望んでいないはずなのに、なぜか惹かれてしまうもの。

頭では拒もうとしているのに、身体が感じ取ってしまうもの。

これまでのお話の中で描かれてきた「違和感」と重ねながら、翔平の変化を感じ取っていただけたらと思います。

ここから先、翔平自身が何を見て、何を思うのか。

その変化にも、ぜひ注目していただければと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。