第二十七話 幼馴染
ここまで「回収箱」を読んでくださって、本当にありがとうございます。
今回は、翔平と幼馴染の瓜との時間が描かれます。
昔から変わらない関係だからこそ、気を遣わずに話せることや、くだらないことで笑える時間があります。
そんな何気ない会話の中にも、少しだけ気になるものが見えてくるかもしれません。
いつもの日常の中にある、小さな違和感。
それを感じながら、今回も最後まで楽しんでいただけたら嬉しいです。
第二十七話「幼馴染」
どうぞ、ゆっくりお楽しみください。
店の掃除をしていると、扉がガラガラッと開いた。
「相変わらず、この店はボロいな。けど、落ち着くんだよな」
瓜が笑いながら入ってきた。
「文句を言いに来たなら帰れ」
「誰が文句を言いに来たんだよ」
瓜は勝手に店の奥へ入っていく。
学校から帰ると、よくこの店の奥で遊んだ。店を継いだ今でも、瓜だけは昔と変わらず勝手に入ってくる。
「お前、昔から勝手だよな」
「今さらだろ」
振り返って笑う顔も、昔と変わらなかった。
湯のみを用意していると、瓜の腹が目に入った。
以前より、ずっと大きくなっている。
「お前、その腹どうしたんだよ?」
「最近、お前がくれた魚が美味くてな」
「魚?」
思わず手が止まった。
「こんなに食ってるのに、すぐ腹が減るんだ」
瓜は額の汗を拭った。
「……俺、魚なんかやったか?」
「この前もらっただろ」
記憶を探っても、魚を渡した場面だけが浮かばない。
一緒に飯を食ったことも、店の奥で遊んだことも覚えているのに。
「……おかしいな」
頭の奥が重くなった。
妻の言葉が蘇る。
——最近、同じことを何度も聞くことが増えたもの。
「……俺、本当に疲れてるのか?」
「無理すんなよ。昔から、お前はすぐ顔に出るんだから」
「お前だって、その腹に出てるだろ」
「関係ねぇよ」
二人で笑った。
「今日は仕事休みなのか?」
「おう。最近忙しかったからな。昔みたいに仕事ばっかりってわけにもいかねぇ体になっちまった」
「俺たちも、もう若くないな」
「まだ五十そこそこだろ」
くだらないやり取りを交わす。
昔と変わらないはずなのに、瓜の額には汗が浮かんでいた。
瓜は湯のみを置き、膨らんだ腹をさすった。
「……まだ腹が減るんだよな」
「さっき食ったばかりじゃないのか?」
「食っても、すぐにな」
瓜は苦笑した。
その腹は、ただ太ったというには不自然なほど膨らんでいた。
「……魚、そんなにうまかったか?」
「ああ、うまかったぞ」
瓜は迷いなく答えた。
俺は返事ができなかった。
魚を渡した覚えはない。
それなのに、瓜は確かにもらったと言う。
——昔と変わらない。
そう思ったはずなのに、瓜の腹から目が離せなかった。
魚を食べただけで、こんなふうになるものなのか。
疑問は浮かんだが、口には出せなかった。
今は、その笑顔まで少しだけ怖かった。
第二十七話まで読んでくださって、本当にありがとうございます。
今回は、翔平と瓜の昔から続く関係を中心に描きました。
長い付き合いの友人とは、久しぶりに会っても、まるで昨日まで一緒にいたように話せることがありますよね。
くだらないことで笑ったり、昔と同じようなやり取りをしたり。
そういう時間って、なんだかいいなと思いながら書いていました。
一方で、いつもと変わらないはずの日常の中に、少しずつ気になるものも増えてきました。
これから翔平の周りで何が起こっていくのか。
そして、今までの出来事がどこへつながっていくのか。
楽しみにしていただけたら嬉しいです。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。
次のお話も、ぜひお付き合いください。




