第二十六話 開店
ここまで「回収箱」を読んでくださって、本当にありがとうございます。
一話、また一話と物語を書き進めていく中で、こうして読んでくださる方がいることが、とても嬉しいです。
今回は、翔平のいつもの日常から、少しだけ違った朝が始まります。
何気ない景色や、いつもと変わらないと思っていたものが、ほんの少し違って見えることもあるかもしれません。
ここまで読んでくださった皆さんに感謝を込めて。
第二十六話「開店」。
今回も最後まで、どうぞお楽しみください。
「ご馳走様でした。」
そう呟いて、俺は頭蓋骨を持ち上げた。
——重い。
両手で持ち上げ、しばらく見つめる。
そこで、手が止まった。
何かがおかしい。
熊の頭蓋骨。
そう思っていた。
けれど、丸い。
顎が短い。
鼻の形も——。
「…………」
見れば見るほど、違和感が強くなっていく。
「……熊、だよな?」
口にした瞬間、胸の奥がざわついた。
違う。
そう思った。
けれど、それ以上考えるのが怖かった。
俺は頭蓋骨から目を逸らした。
「……ごめんなさい。」
なぜ謝ったのか、自分でも分からない。
ただ、謝らなければならない気がした。
しばらく黙ったあと、小さく呟く。
「——でも、美味しかった。」
自分の声だけが、静かな台所に響いた。
洗い物を終え、店へ向かう。
外へ出ると、朝日が村を照らしていた。
いつもと同じ道。
いつもと同じ景色。
そして、いつもと同じ場所に回収箱が置かれている。
昨日と何も変わらない。
俺は箱を見つめ、蓋へ手を伸ばした。
開ける。
——空だった。
「……何だ。」
そのとき、箱の底に何かが見えた。
白い錠剤。
その横には、細い金具のようなものがいくつか転がっている。
網。
釣具。
魚住の仕事場で見たものと、よく似ていた。
「——魚住?」
名前が口から漏れる。
目を瞬く。
もう一度、箱の中を見る。
——何もない。
白い錠剤も。
金具も。
箱は空だった。
「…………」
俺はしばらく箱を見つめていた。
やがて、
「——まあ、いいか。」
そう呟いて、蓋を閉じた。
店の戸を開ける。
「……よし。」
開店の看板を表へ出す。
今日も店を開けた。
いつも通り。
何も変わらない朝だった。
熊の頭を食べたことも。
箱のことも。
白い錠剤のことも。
何もなかったことにするように。
俺は店の中へ戻った。
——それが、一番異常だった。
第二十六話まで読んでくださって、本当にありがとうございます。
ここまで長く「回収箱」に付き合ってくださっていることを、心から嬉しく思っています。
書きながら何度も、
「このお話を最後まで読んでもらえるかな」
「怖いと思ってもらえるかな」
「続きが気になると思ってもらえるかな」
と考えることがあります。
そんな中で、一話ずつページを開いてくださる方がいることが、本当に大きな励みになっています。
静かに読んでくださっている方にも、ちゃんと届いているといいなと思いながら書いています。
ここまで一緒に翔平の物語を追いかけてくださって、本当にありがとうございました。
まだ物語は続いていきます。
これから先も、一話一話、大切に書いていきたいと思います。
もしよかったら、もう少しだけ「回収箱」にお付き合いください。
次のお話も、楽しんでいただけたら嬉しいです。




