クエスト09【姫誘拐事件】
ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。
その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。
「国王様、一大事でございます!」
そこに、全身甲冑の騎士が慌てた様子で姿を現す。
「おお、何事だ騎士団長よ」
「今しがた伝令がありまして、姫が魔物に攫われたとの事です!」
「何と!?」
王は驚いた表情を見せた後、ふと考えるように。
「……どこの姫?」
「えっとですね、攫われたのはジャーデン領のご息女[クリス]嬢ですね」
「ええーっと……」
「侯爵家の嫡男の二番目の娘です、私の姪ですね」
「おおっと、そうか隣国の……いかんな早く救出しなければいかんの!」
「とりあえず城内で救出部隊を準備している所です、冒険者組合にも協力を仰ぎますか?」
「いや、隣国の事情もあるだろう、向こうが公表する前に大きく動くのは避けるのじゃ」
「しかしそれでは!」
「落ち着くのじゃ、まだ状況もよく分かっておらんというのに先走るでない、ワシらは精鋭部隊を集めていざという時に迅速に動けるように構えておくのじゃ」
「……しかし」
「こういう時こそ、神に選ばれし権能に頼るべきではないのかのう」
「!? そうですね、実は本日も何か理由をつけて紹介しようと思っていた勇者が居たのですが、忘れておりました」
「お前もうちょっと城に招く奴は厳選せぇよ……」
「暇してると思うんで、呼んできます!」
「わかったさっさと連れてまいれ」
「は、しばしお待ちを」
こうして王の前に、1人の若者が連れてこられた。
「ではその脅威のスキルを王に語って聞かせよ、あと出来れば姫の救出に役立つスキル希望」
「これ目の前でガチャを祈るでない、違った場合勇者が気まずかろう……」
騎士団長の言葉に、しかし若者は臆することなく答える。
「ご安心を、私のスキルは十分に役立つ事でしょう、この空間移動ならね!」
「何と!」
「まさに今必要な力かもしれませんね!」
若者の強気な発言に、王と騎士団長も盛り上がる。
「私のスキルは、特定の場所と場所を繋ぐ扉の様な物を作るのです、そしてその扉は誰でも通ることが可能となります」
「おお意外にも結構有用なスキルじゃな」
「これを使えば姫の救出も迅速に出来そうですよ!」
「ただし扉で繋ぐ場所は、私が一回訪れる必要があります」
「なるほど行方不明の姫の元へ、という風に移動は出来ないのですか」
「無作為に扉を繋げる事は出来ますが、移動先はランダムになってしまいますね」
その言葉に王様は少し肩を落とす。
「なるほど、では姫の所在が分かるまでは待つしかないのう」
攫われた姫の居場所が分かり次第、勇者をその場所に向かわせれば、この城から姫の元までの扉が作れる。
「そしたら城から救出部隊を送るのが最速じゃろうな」
「いえ、もっと早い手段がありますよ、今すぐにでもランダムに扉を繋げて貰うのです!」
かなり運任せな作戦を、騎士団長は提案してきた。
「お主、正気か。そんな偶然にも姫の所に繋がる訳があるまい……」
「万が一にでも繋がれば良いではないですか! さぁ扉を作ってみてください!」
騎士団長の言葉に、緊張した面持ちで勇者は集中し始めた。
「わかりました、しかし本当にランダムなので、水中とか遥か上空に繋がる事もあります。お気を付けを……間もなく扉が出来ます」
勇者が手をかざすと、人ひとり分くらいが通れる木製扉が虚空に立っていた。騎士団長は意を決した表情で、扉に手を触れる。
「では王様、行ってまいります」
「なにもお主が行かんでも、兵士に行かせれば良いのではないか?」
「万が一姫様の元に辿り着けた場合、兵士では魔物の対処が出来ないでしょう、私が適任です、では」
そう言って騎士団長は、扉を開け、その奥に広がる暗闇へと入っていった。
扉は自然に締まり、王と勇者は静かに成り行きを見守る。
十分程度の時間が過ぎ、閉ざされた扉が自然と開いた。そして騎士団長の声が響く。
「やはり駄目ですね、姫の所には繋がっていません」
そう言いながら扉から出てきた騎士団長は、何故かポップなイラストのだぶついた黒シャツを着て、リボンやフリルのついたスカートに、十字架やチェーンが所々ついた服装になっていた。手にはクレープと飴でコーティングされたフルーツを持っている。
「よくぞ無事に帰って……え、何じゃその恰好は、お主どこに行ってきたんじゃ?」
「さぁ……詳しくはわかりませんが、原〇とかいう賑やかな処に」
「いったい何処に繋がったんじゃ!?」
後日。
「駄目です王様! 何度試しても……繋がりません!」
「まだランダムチャレンジしておったのか……勇者も一日に作れる扉の制限があるのだから、あまり無茶に付き合わせるでないぞ」
「く……何度試しても、あの〇宿とやらに繋がりません」
「おいおいおい趣旨変っとるて、せめて姫の身を心配せい」
王の悩みはまだ晴れそうにない。




