クエスト07【盗賊退治3】
ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。
その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。
「国王様、盗賊討伐隊の編成が間もなく完了します!」
そこに勇ましい足取りで、全身甲冑の騎士が姿を現す。
「おお、結構時間がかかったのう」
「近隣の狩人に加え、冒険者組合に協力を仰ぎましたので。その代わりかなり大規模な討伐隊になりそうです」
この度王国は、森に潜む盗賊団討伐の為に、王国主導の元可能な限りの人員を集めた。
「これで盗賊団も一掃できるのう」
「今回は珍しく、冒険者組合が全面的に協力してくれるとの事です」
どうも冒険者組合は、ドラゴン退治に加勢出来なかった事を、盗賊退治で挽回しようとしているらしい。
「しかもですよ国王様! 冒険者組合は今回の作戦に、ベテランの冒険者を派遣してくれるとの事です!」
興奮した様子で騎士団長は告げる。
「なんと、組合も本気という訳かの」
「そのようです、時に王様は伝説の冒険者をご存じですか?」
「なにやら凄そうな肩書じゃの」
「かつて東の地で、略奪の限りを繰り広げていた鬼という一族がおりまして。その者たちに単身攻め込み見事壊滅させし者が居るのです」
「その者は神に選ばれた権能者ではないのか?」
「はいスキルは持っていないようですが、何でも妙な出自の剣士で果物から生まれたとか」
「ほう!?」
「そして三匹の動物だけを連れて見事、鬼の一族を攻め滅ぼしたのです」
「なんと」
「そして奪われた財宝を持ち帰り、その財を持って今の冒険者組合の繁栄に繋がるとか」
「にわかには信じがたいのう」
「その組合一の冒険者が、本日お越しいただいております」
「そこまで凄いのであれば是非とも一目会いたいのう、ご案内せよ」
「は、しばしお待ちを」
こうして王の前に、二人の冒険者が連れてこられた。
一人はだいぶ高齢の老人でもう一人は同じくだいぶ高齢の老婆。
「我らがその冒険者を育てたんじゃ」
「まさかのご両親!?」
驚愕する王に、興奮気味に騎士団長が語る。
「そう、彼らこそ鬼の一族を滅ぼした冒険者を育てたという伝説の冒険者なのです! ちなみに登録している冒険者の中で最高齢です」
「息子さんの方が良かったのう……」
老人は曲がった腰を庇いながら答える。
「息子の太郎は、天下無敵を目指して諸国行脚の旅に出とるよ」
「な、なるほど」
「国王様! 何をがっかりしているのですか、伝説の冒険者がスキルも持たずに圧倒的な強さを手に入れたのも、彼らが育てたからなのですよ!」
「確かにそうじゃの、今回は狩人達を一流の冒険者に育てに来たのかの」
伝説の冒険者を育てたご両親とあらば、近隣から集まった狩人達も頼もしくなる。
「実はな、今日呼ばれたのはうちのばあさんの方なのだ、我は付き添いだよ」
「ほう、しかしこのご婦人が何故?」
注目される中、老婆が前へと踏み出す。
「実はね、息子が鬼に勝てたのも動物達を従えられたのも、私の作った特殊な団子のお蔭なんだよ」
そう言って老婆は懐から、布袋に包まれたものを取り出して見せた。
「これが私の作った天下一の[○○団子]さ、これを食べれば百人力、一度食べたらどんな傷もたちまち治り、二つ食べれば天下無双、三つ食べたらもう人ではなくなるよ」
「怖っ!?」
「美味しそうですね、一ついただけませんか?」
「おい騎士団長やめろ! なんかこれ怪しいって!」
老婆の差し出した団子に、思わず手を伸ばす騎士団長を国王は静止する。
「しかも脳の中枢神経を刺激して、一口食べたら止まらなくなり、この団子を食べる為ならあらゆる恐怖も感情も無視して命令を遂行する冷酷な殺戮マシーンとなるよ」
「怖い怖い怖い怖い……」
震えあがる王様をよそに、騎士団長は不意に差し出された団子を手に取ると、迷うことなくそれを口に運んだ。
「うっ!?」
「大丈夫か騎士団長よ! ほら、早く吐き出すのじゃ!」
突如苦しみだす騎士団長。
「ウ……ウウウウウウヴヴヴヴヴヴ! これ粉っぽくてパサパサしてます! 飲み物がないと呑み込めない!?」
驚く王をよそに、老人が説明を補足する。
「と、そんな感じの暗示を信じた太郎は、伝説の冒険者となったのだ」
「プラシーボかい……」
後日。
「国王様! 見てください、怪我がすぐ治り、戦闘力も三倍近くに! やはりあの団子、ものすごい効果がありますよ!」
「まだ効果続いてるのか!? あれから何日経ってると思っとるんじゃ!」
王の悩みはまだ晴れそうにない。




