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クエスト61【料理改善編_料理完成2】

 ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。

 その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。


「さて、それではお立合い!」


 全身甲冑の騎士が、いつもの謁見の間に持ち込んだ晩餐用のテーブルを前に、大きな声を上げる。


「ではこれより、第一回王城料理バトル[宮廷料理長フリーデン×ウェイシェン商会]の開始をここに宣言いたします!」

「むぅ、騎士団長よ何故この部屋で行うのじゃ? 食堂でよかろうに」

「食堂ではキッチンが近いので、料理長が有利になります。なので大広間で同時に調理して同じタイミングで給仕できるようにとここを会場にしました」

「変な処で公平なんじゃな」


 謁見の間には、既に調理の工程を終えた料理長と、後は料理を部下が運んでくるのを待つ、商人がテーブルの両端に立っていた。


「森の幸をふんだんに使った料理、ご堪能ください」


 料理長は静かに、深々と頭を下げた。


「ウチのプロデュースした最高五つ星の料理でどっひゃー言わせたるわ!」


 褐色肌の、エプロンドレス風な服装を纏った長耳の少女は勝気にふんぞり返る。


「そして今回料理を審査するのは、私騎士団長と、我らが国王、そしてヘイワーズ大臣の三人で行います!」

「良いのか? 審査員が全員料理長の同僚何じゃが?」


 国王の質問に、商人は大手を振って答える。


「かまへんかまへん、その程度のハンデ覆せんで、王国一番の料理人に喧嘩なんざ売らんわぁ」

「おおっと、ここで両者の料理が運ばれてきましたぁ!」


 実況するように騎士団長が声を上げる。ちなみに手にはナイフとスプーンを装備している。


「今回は、前菜、スープ、メイン料理、デザートの四品で勝負します。最初の料理は前菜! 所謂オードブルです」


 テーブルの上に、両者の料理が運ばれてくる中、料理長の胸中は。


(久し振りに食材を思う存分振る舞ると思い、調子に乗って勝負に出てしまいましたが、大事な懸念を忘れておりました。晩餐会において、料理の見た目、味、そして給仕の美しさは最上級であることは当然として、食する側も、相応の食事マナーを要求されるという点、陛下は幼少期より社交界を生きて来られたので安心できます、また今回相対しているウェイシェン商会という方も、口調はお淑やかではありませんが、行儀に関してはしっかりと作法を守っておられる、これは意外)


「まずはウェイシェン商会の料理、おおっろ何だこれは!?  皿の上に、丸い? 何か?」

「教えたるわ、ホタテと魚介のカルパチョや、それをウチの特殊塩と柑橘ドレッシング風味のジュレで固めたんや!」

「ほほう、見た目が綺麗じゃな」

「凄く美味しそうですね」


(ならば懸念材料は普段騎士寮で食事をとるという騎士団長と、食事は火さえ通ってればいいと宣う大臣、この二人の料理マナーは未知数です、ここは久しぶりに使う時が来ましたか、《紋章眼(ヘラルディック・アイ)》)


「対する料理長の前菜は、サラダですね。野菜とキノコのサラダ! 見た目はちょっと普通ですね」

「まぁウチの前衛的過ぎる料理と比べたら、ちと可哀そうかもなぁ、しゃーないウチがそっちの味見したるわぁ、うぁなにこれ美味ぁ」


 料理長のサラダを一口食べた瞬間、商人が座り込んだ。


「これは……普通のサラダやない! 香草や、何種類もの香草が混ぜてあるわ! さらに炒った木の実も、触感が既に止まらんくなるぅ!」


(この力を使えば、私は相手のマナー力を見抜く事が出来るのです。試しに我が陛下は、獅子、豪快ではありますが、勇敢であり頼りになる。さて商人は、鷲ですね、威厳と高貴さが合わさっている、これも安心できます)


「!? 確かに、見た目はただのキノコと野菜のサラダなのに、手が止まらなくなるほどおいしいです!?」

「何やと、ちょっと忍ばしたクルトンにまで濃厚な味付けがぁ! この一皿にどない手間暇かけてんのやぁ!?」


(騎士団長は、熊、礼儀を守ろうとする気概はありますが、しかし豪快、これは要注意です、例えばほら)


「あ、」


 サラダに夢中になった騎士団長が、思わず手に持ったナイフを取り落とした。このままでは金属が床に転がる耳障りな音を立ててしまう。そう思った矢先。


「あれ?」

「どうしたのじゃ騎士団長よ、自分の手に持ったナイフなんぞ見つめて」

「あ、いえ……さっき手を滑らせて床に落としたと思ったナイフが、何故か手の中にありました」

「何を言っておるのじゃ、そしてどうしたのじゃ料理長よ、何故そんな汗だくで立っておる、調理疲れならいったん座ったらどうじゃ?」

「……いえ、お気遣いなく」


(っふー、危ない所でした、ここでナイフを取り落とす等と言うマナー違反は、折角の晩餐会を台無しにするところでした。私の[絶対作法守護の領域]を発動させて難を逃れましたが、これはそうそう発動できる力でもありません)


「ふ、ふん……まぁここは大人しく負けを認めたるわ、せやかて所詮最初の一品や、こっからが本番やで!」

「おお、皿が磨けあげられたかのようにピッカピカじゃ」


 国王が商人の前の皿を見て声を漏らす。


(そして大臣は、狐……マナーを守る事よりも利益を狙う、これは厳しい戦いになりそうです)


「ふむ、料理長もまだまだこれからという顔をしておるの」

「そうです、勝負は始まったばかり! さぁ次の品を!」

「次の料理は負けへんでぇ!」


(果たして、私は最後まで立って居られるでしょうか……)



[続く]


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