クエスト62【料理改善編_掌理完成3】
ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。
その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。
そんな事よりも、第一回王城料理バトル[宮廷料理長フリーデン×ウェイシェン商会]の続きが始まる。
「今回は、前菜、スープ、メイン料理、デザートの四品で勝負していただきます」
司会者のノリで、全身甲冑を着た騎士が、長テーブルを間にして場を取り仕切る。
王を中心に、机の両端に今回の料理人、料理長と商人が立ち、その間に騎士団長と大臣がそれぞれ座る。
「次はスープ勝負です」
宣言と共に、別室で作られた料理がテーブルに並べられる。
「スープは負けへんで、コレの秘訣はなぁ塩なんや、ウチの特製塩ならどんな料理だって最高級になるんや!」
相変わらず勝気な様子で、商人は告げる。
「お手柔らかに」
静かに料理長は佇む。しかしその胸中は穏やかではなかった。
(先ほどは危なかった。我が《紋章眼》によって鑑定した騎士団長のマナー力は熊、マナーは知っているが、油断すると先ほどの様な失態に繋がる。先ほどはとっさに[絶対作法守護の領域]にて難を逃れましたが、そう何度も使えるものでは無い、このまま無事に終わってくれれば良いのですが)
「まずはウチのスープや、どや、チーズをたっぷりと使ったシチューやで!」
「うん、コレは普通に美味しそうじゃな」
「やっぱりサラダだけではお腹は膨れませんからね、具沢山で助かります!」
商人の用意したシチューは皆好反応を示す。続いて料理長のスープも運ばれてきた。
「なんやなんやぁ? 料理勝負やぁゆうとるのに、ごく普通のコンソメスープやないかーい、こんなん手抜きやろ、ほなしゃーないからウチが味見したる何コレ美味ぁ!」
コンソメスープを一口飲んだ瞬間、商人が崩れ落ちた。
「本当じゃ、恐ろしく透き通っておるのに、恐ろしく味がしっかりしておる!」
「味の濃さが本当に丁度良いですね! これこそこのスープの風呂に浸かって眠りたいくらいです!」
(む、いけませんね。騎士団長が皿を持ってスープを一気飲みにしようとしています、
美味しさに我を忘れての事でしょうが、それは流石にアンタッチャブル!)
「あれ?」
「ん、どうしたのじゃ騎士団長よ」
「いえ、スープが美味しかったので、皿を持って一気飲みしようとしたら、私の皿だけなんか飲み易そうなポットに変わって居まして」
「最初からそれで提供されとったんじゃないかの?」
「あれーそうだったかな?」
「所で何じゃ料理長よ、そんな汗だくの上に体がふらふらじゃが、疲れておるなら休めというに」
「…………まことに、お気遣いなく」
(危ない所でした、提供された器が、直飲みに適した容器であれば口を付けて飲むのはマナー違反になりません、これで本日二度目の発動です、明日は筋肉痛で動けない事でしょう)
「恐ろしいわぁ、これ仕込みに三日間とか掛かる奴や! こんなん手間かかり過ぎて誰も作らんわぁ!」
商人が、文句は言いつつも、綺麗な手付きで次々とスープをスプーンですくって口に運んでいく。
「さて、いよいよメインディッシュの登場です! 待ってました!」
騎士団長が拍手で料理を迎え入れる。
最初に運ばれてきたのは、ウェイシェン商会のメイン料理、何やら白いドームに覆われた塊が運び込まれてくる。
「ウチのメインは、鯛の塩釜焼や! 鯛は商人の間で商売繁盛を示してメデタイってなぁ!」
そう言って白いドームを崩すと、中から良い香りと共に、調理された鯛が姿を現す。
「これに、白ワインとハーブのソースをかけて完成や!」
「意外じゃ、魚料理なんじゃな」
「いやでもこの食欲をそそる香りは堪らないですねぇ」
(!? これはいけませんね、大臣が飲み物を欲してそうにしています、提供されたのは水のみ、今回は審査員という事で味に専念する為の配慮でしょうが、やはりコース料理で水のみでは味気ないという物、ここは仕方がありません!)
「あの……」
「何じゃ大臣よ」
「折角の魚料理なので、ワインなど頼めないかと……って、いつの間に?」
「どうしたのじゃ? ワインなら傍らに白ワインがグラスで提供されておるではないか」
「そうでしたね、いつの間に」
「そしてどうしたんじゃ料理長よ! もう全身から滝の汗が出てて、床に膝を着いておるし意識も朦朧としておるではないか! いい加減休むのじゃ!」
「………………お気遣い……痛み入ります」
(はぁっ、はぁつ、流石に一日に三度も発動は、体に堪えますね、これはもう翌日は起き上がることすら困難でしょう、しかしマナーが守られるのであればそれでパ・ド・プロブレム!)
「そんでもってぇ? そっちのメインディッシュはなんやぁ? ははーん、至ってごく普通の肉料理、ステーキかいな、捻りがないわー、そんでもって何その肉厚! そんなん絶対に美味い奴やん!」
「待ってください、私肉には煩いので分りましたよ、この肉はビーフではなく、ポークです!」
「何やて!?」
「ほう、しかし凄く柔らかい上に、溢れるばかりの肉汁、ただのポークステーキではないぞ」
「!? しまった! 山の幸や、この豚ぁたらふく山の幸で育った特産豚なんやぁ! それを木の実などと一緒にグリルして味と香りをつけとるんやぁ! そんなんもーよだれが止まらんや無いかい!」
「ってか商人、お主普通に料理食べとるが、勝負はいいのかのう?」
「はーん、まだウチには切り札が残っとる、ウチの勝負は最後のデザートで全部ひっくり返す戦法なんやぁ!」
「それは凄そうじゃが、ポークステーキの切り分けの列に、皿を持って並んでいると説得力に欠けるのう」
[続く]




