クエスト58【料理改善編_生産改善3】
ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。
その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。
「国王様、どうなされましたか!」
そこに勇ましい足取りで、全身甲冑の騎士が姿を現す。
「おお、騎士団長か……実はな」
「ああ、例の勇者が放棄した農業開拓地ですか、とりあえず農業で自給自足したり、都会の喧騒から離れて田んぼでも耕しながらゆっくり過ごしたいとかいう人様に、提供される郊外の開拓地ですね」
「うむ、もっと利用方法は無い物かとな」
「正直言って厳しいですね。開拓地でも比較的の内に適している場所は、教会や商業組合が既に抑えられていますから、どうしても開拓に向かない土地しか残っていません」
「あそこはそんなに無向いてないのかのう、農業なんて地面を耕したらいいんじゃないのか?」
「はぁーこれだから王族はぁ」
「そりゃワシ生まれてこのかた王族じゃからな」
「まず森林に覆われているので、森の伐採から始めないといけません」
「木材も入っていいんじゃないかの?」
「単純に地面を耕す前に森の伐採の時点で重労働です、しかも畑にするのであれば根っこごと除去しなければなりませんし、川も無いので井戸を掘る必要があります。後わりと獣や魔物が襲ってきます」
「いやそれもう、農耕に向いてる向いてない以前に領土として組み込めてないんじゃ」
「その為に並行して、住居や柵や、防犯設備などを用意する必要があります、この辺はどこの開拓農地も同じですよ、まぁ作業人数が桁違いですが」
「人数さえ揃えば、農業は出来るのかのう」
「あの開拓地は、そこまでやってさらに土も入れ替えないとダメですね、ある程度掘り返して石とかも取り除かないとダメですね」
「手間じゃな」
「だから皆あそこは手を付けないんですよ」
「なんかいい方法無いかのう?」
「まぁそういうと思いまして、実はこの部屋にある物を用意しました」
そう言って騎士団長が、部屋の隅に置かれた大きめの箱に目配せをする。
「うん、部屋に入った時なんかでっかい箱あるなぁって思っておったけど、ようやく触れるんじゃな」
「ではちょっと失礼」
そう言うと、騎士団長は部屋の隅に置かれた大きな箱をこちらへ持ってくる。
「なんなんじゃこの箱は」
「えーとちょっと待ってくださいね、手順が……まずこの箱、種も仕掛けもありません」
そう言って、騎士団長が箱の上を開けて中身を見せる、中は何も入っていない空っぽだった。
「それでは蓋を戻しまして、ワン・ツー」
騎士団長が箱の側面を何度か叩くと。
「セージ!」
騎士団長が箱を叩くと、箱から煙が立ち上がり、すぐに箱は四方へと開くように倒れた。その中から現れたのは、裾も袖もスカート丈も短い格好をした賢者であった。
「イェーイ、イッツァミラクール!」
はしゃぐ様にポーズを取って。
「んで農業の話っスか」
すんとこちらの会話に入ろうとする。
「いやいやいや、待つのじゃちょっと追いつかん、今どうやってあの箱から出てきたのじゃ!?」
「あー、まぁ魔法っス」
「凄いですよね! 流石賢者です何でもできるんですね!」
「え、今のは最初から箱に入ってて、魔法で姿を消していたのか、それとも魔法で箱の中に現れたのか?」
「んもう、王様そういうのを聞くのは野暮ってもんですよ!」
「あーまー、やろうと思えば割と誰でも。箱の中に鏡が」
「あー駄目ですよ! 今度騎士団の皆に私が披露するんですから!」
「あーそれよりー、今日あーしを呼んだ理由―」
「おっとそうでした、辺境の農耕開拓地をうまく利用する方法を王が聞きたいそうなのです」
「あー、あそこでっスね。手っ取り早いのは全部焼く事っスね」
「急に物騒じゃの」
「植物をメラメラ―ってすると灰になるっス、灰って食べらんないけど、肥料になるんスよ」
「ふむ、騎士団長よ肥料とは何じゃ?」
「あーすみません食べられないってあたりで興味失って聞いてなかったです」
「要するにー、作物の栄養になるんスねー、それがあればお野菜たっぷりっス」
「素晴らしいのう、なんですぐにやらんのじゃ?」
「まぁー下手すっと森全部灰になっちゃって、動物達も全滅って事もあるっス」
「結構危ないのじゃな!」
「あと焼き払うと、普通に潜んで魔物が一斉に襲ってくる」
「全面戦争じゃ!?」
後日。
「なるほど土地を切り開くのがこんなに大変だったとは思いもよらなんだ」
「まぁ普通の街道沿いとかの農耕地だったらそこまで大変じゃなかったんですけどね」
「うむ、そういや今の王国の広範囲にわたって広がっておる農耕地は、どうやって切り開いたのじゃ? 一気に開拓したら潜んでいた魔物と縄張り争いになるんじゃろ?」
「その戦いに勝利て今の農家達が居るのです」
「農家つえぇー」
王の悩みはまだ晴れそうにない。




