クエスト57【料理改善編_生産改善2】
ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。
その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。
「国王様、謁見の申し込みが来ております!」
そこに勇ましい足取りで、全身甲冑の騎士が姿を現す。
「おお騎士団長か。ふむ、謁見とは逆に久しいのう」
「最近色々と騒動がありましたからねぇ」
「事態が落ち着いて、平和になった証拠じゃな、よし通すが良い」
「は、しばしお待ちを」
こうして王の前に、1人の若者が連れて来られた。
「うむ、よく来たの面を上げいって何じゃお主か」
若者は何度か王城に来た事がある勇者であった。
「お久しぶりですね、最後は適当なダンジョンに放置されたそうですが」
「……まぁ初心者向けのダンジョンだったので何とか」
「じゃからワシは止めたのじゃ」
「もうそれはいいんです、って言うかちょっとでも思う事があるなら、僕のお願いを聞いてください!」
「何じゃまた餞別かのう」
「いえ、今回は土地をください!」
「何じゃ貴族になりたいのかの?」
「いえ、農業を始めたいんです!」
「ああ、最近農業ブームですからね」
「農業ってブームになる物なんかのう、普通は農家をやりたくなくて冒険者になるんじゃ?」
「ちょっと冒険に出ていた間に聞いたんですよ、何やら今農業がすっごいブームになってるって! 誰もが畑を耕し始めて一攫千金を夢見ている! 今王都はグリーンラッシュだ、ここで畑を耕さない奴はぁ玉無しだって!」
「また随分と古い情報を握って来たの」
「まぁでも落ち着いたとはいえ、野菜不足なのは事実です、農家が増えるのはいい事ですよ」
「ふむぅ、農業開拓地が郊外の端の方にあったじゃろ?」
「確かにあそこは年中人手不足ですが……よろしいのですか?」
「[開墾特許状]の事を言っておるなら構わんぞ、勇者よそなたの手で耕した土地はそなたのと地となる事を認めよう」
「ありがとうございます! よーしビッグな農業系勇者になるぞー!」
勇者は大喜びで部屋を出て行った。
「良いのですか? 開拓地なんて荒れた大地とか鬱蒼と生い茂る森ばかりで、とても農業に向く土地じゃないとの事ですが」
「まぁすぐに音を上げるならそこまで、逆に頑張って畑を作れたのならそれで良い事じゃろう」
相応が予想した結果の通り、数日後。
「国王様、自分農家辞めたいです!」
「いや思ったより早!」
僅か数日で勇者は音を上げた。
「噂じゃ農業は楽しく健康で時間もゆっくり感じるスローライフって聞いてたのに!」
「なんじゃワシはそんな事いっとらんぞ」
「無茶苦茶ハードじゃないですか!」
「それはそうじゃろう」
「朝起きて! 畑耕して! 野菜育てて! 虫も湧くし、害獣も出るし! あと腰が痛い!」
「それが農業じゃ」
「あとゴブリンとかスライムが野菜盗みに来るし!」
「魔物退治は本業じゃろ」
「とーにーかーく! こんなのじゃ僕の望んだスローライフじゃありません! 返金を要求します」
「何じゃ返金って、元々お主の土地でもないじゃろうが。人手が足りんのなら依頼でも出してやるがのう、そもそもお主の思うスローライフ農業ってなんじゃ」
「え、朝種を撒いたら、夜には天をも貫く巨大な豆の木がですね、生えてですねそれをよじ登っていくと、金銀財宝がですね」
「それはそれでスローライフじゃないじゃろう!」
「もう農業すら関係ないですもんね」
「それで、ちょっとは畑は耕せたかのう? 出来栄え次第では王国が買い取ろうぞ」
「いえ、まだ作物とかは育ててないんですよ」
「何じゃまだその辺かのう、早く種くらい撒くのじゃ、そもそも何を育てようとしておったんじゃ?」
「はい、カブを」
「一足どころか百足くらい遅い!」
後日。
「王様、結局勇者は農地を手放したそうです」
「なんじゃ根性が無いのう、まぁ魔物まで出るとなると大変か、そういや他の農地も条件は似た様なもんじゃが、魔物とかどうやって対処しておるんかのう」
「いえ、普通に魔物は出るそうです」
「なんとよく無事じゃったの」
「たいていの農家は魔物より強いんで」
「今度からそいつらを勇者として雇え!」
王の悩みはまだ晴れそうにない。




