クエスト56【料理改善編_生産改善】
ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。
その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。
「国王様、どうなされましたか!」
そこに勇ましい足取りで、全身甲冑の騎士が姿を現す。
「おお、騎士団長か……実はな商会のおかげで物流が安定し、物が速く届く様になったんじゃ」
「別に良い事に聞こえますけど?」
「ここまではのう、そして商会の星で料理屋の格付けを行ったじゃろう? それで町は今グルメブーム到来中じゃ」
「不味い塩で我慢した反動ですね、お蔭で町の料理の質が向上してみんな大喜びだと思うんですけど」
「うむ各店が料理に本気なったことでな、今食材が不足しておるのじゃ!」
「あー今度はそう来ましたか!」
「城に入荷する野菜も不足してきておる、また宮廷料理長が頭を抱えておる」
「あー愉快なポーズを取ってそうですね」
「このままでは、城の晩餐にも影響が出てしまうぞ!」
「そういえば、確か教会は自分達で自給自足していると言っていましたね」
「そうじゃのう、教会のブランド野菜を作ると息まいておったの」
「いくつか譲ってもらえるよう交渉しましょうか」
「あの教会が、譲るかのう?」
「でも城に卸しているって、こういうの箔になりませんかね?」
「ふむ、ブランド戦略ならば確かにそういう側面はあるのう」
「ではちょっと責任者に話聞いてきます!」
そう言って威勢よく騎士団長は部屋を出て行った。
「まぁ多分、支部長代理のあのシスターじゃろうな」
不憫そうな少女を思いながら、王はつぶやいた。
そしてしばしの時が流れて。
「んもう、なんなんですかぁ! いま収穫で忙しい時期なのにいぃ」
悲鳴の様な不満を述べながら、1人の修道女が謁見の間へと連れて来られた。
「別に連れて来んでも、むこうで契約なり結べばいいんじゃないかの?」
「王様聞いてください! 教会は城に野菜を仕入れないと言ってるのです!」
「あーもう、それはちょっとぉ誤解があるっていうかぁ、今教会は人員総出でカブをひたすら作っている最中なんですぅ!」
「何ゆえカブ?」
「噂ではぁ、あの有名なウェイシェン商会がぁ、カブを仕入れたと噂されて、それで皆一一斉に株を買い始めてぇ、そこから資産者も株を作り始めたんですぅ」
「まーたあの商人何か企んどるんかのう」
「案外普通にレストランに納品する為だったんじゃないですか?」
「とにかぁくぅ、今教会はカブを作るのに忙しいのですぅ。今は1カブ、150Gですがぁ、これが明日には200Gになるかも知れないのですからぁ、ご用のある方はピーっという発信音の後にぃメッセージをぉ」
「じゃぁカブ以外売ってください、正直私そこまでカブ好きじゃないんで」
「ワシもカブはあんまり、なんか美味い調理法とか無いのかのう?」
「宮廷料理長なら知ってそうですが、伝統料理ではあまり使わなそうですね」
「そうなんじゃよな、そこまで熱狂するほどカブって需要はある物なんじゃろうか?」
「いまでは普通のご家庭や、冒険者まで畑耕しているらしいです」
「何か歪じゃのう……そのうち泡の如く弾けたりするんじゃないかのう」
「何を不吉な事を言うんですかぁ、神の罰が当たりますよぅ、神の好物はカブなんですぅ、そう決まったんですぅ! そして皆がカブを求め、いずれは1カブ、550Gも夢じゃぁ!ない」
まるで算盤をはじくような指使いで、シスターは夢を語る。
するといつの間にか現れた白装束の部下が、小さく彼女の耳元で報告した。
「えぇ? それ本当ですかぁ? 次はウェイシェン商会が砂糖を購入したので、次来るのはぁ砂糖だって皆買い占めに走ってるぅ? じゃ、じゃぁ教会のカブはぁどうしたらいいんですかぁ?」
「弾けるのが速かったのう」
「大量に作られたカブはどうなるのでしょうか?」
「大暴落じゃろうな、何せ普通の農家から教会、町の住人に冒険者までがこぞってつくっておったからのう」
「しかもそんなに大量にカブが在ってもどうしようもないですよね?」
その時、修道女の掠れた笑い声が響いた。
「……ハハ、ハハハハハハハハハァ! 今神託が降りましたぁ! 1カブ、50Gまで下がった今こそ、カブを買い集めよと! 教会はこれよりカブの収穫祭を宣言しますぅ!」
「でもカブってそんなに料理に使いますかね?」
「誰もぉ料理に使うとはぁ言っていません! カブの中身をくりぬいて、表面を顔の様に加工するんでぅ! これをシンボルとして各家の玄関やぁ軒先に飾るのですぅ! いっそ仮装なんかしてぇカブの置かれた家々を回る巡礼を模したイベントを開催するのですぅ!」
「おお、転んでもただでは起きないのが教会らしいのう」
「でもなんか面白そうですねこのイベント! 私鎧だけで動くお化けの仮装しようかな!」
「それ普段着じゃろ」
こうしてここに、後に各家でカブをくり抜き、顔を模したランプを玄関につるし、仮装して家々を回るという教会最大の収穫祭が生まれたのであった。
そしてその後に人々は、その始まりがカブを作り過ぎて処分に困った教会の苦肉の策であることは、もう誰も知らないのであった。
後日。
「国王様! 市場のカブはだいぶ消費されたようです!」
「存外大人気のイベントとなったのう」
「はい、それで来年に向けてさらなるカブの増産体制が行われるとの事で」
「またカブを増やしとる!?」
王の悩みはまだ晴れそうにない。




