クエスト54【料理改善編_物流改善3】
ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。
その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。
「国王様、どうなされましたか!」
そこに勇ましい足取りで、全身甲冑の騎士が姿を現す。
「おお騎士団長か……実はの」
直立不動で立つ騎士団長に、王は己の抱えた苦悩を漏らす。
「何か商人関係の苦情がむっちゃ届いとるんじゃ」
「街でもちょっとした騒ぎになっているみたいですよ。これまで問題なく届いていた荷物が届かなくなったと。また輸送関係も手続きが煩雑になって荷物がたまっているって声が」
「ふむ、コレはアレじゃのう……大臣が法整備するって言っておった奴じゃな」
「めちゃくちゃ弊害が出てますねー、えっと書類の審査が厳しくなって関所の通過に時間がかかる、関所を通らない商品に関しても書類の付帯が必要、流通工程の報告義務、生物(家畜や野菜)の輸送に関する法整備、結果として全方面に厳しく調査をする方針ですね」
「それで物流が止まったら意味無いんじゃが」
「まぁ大臣曰く、施行初期の手続きの不慣れさが原因なので、慣れたら解決するとの事で、これで悪質な業者や不当な利益を得ている業者が駆逐されるらしいので、健全化はしているそうですよ」
「それまで、どうにかするにしてものう」
「国王様! こういう時こそ、ほら例の!」
「おう、うむ? ああ、また勇者に頼むのかの? 毎回そう都合よくは」
「いえ、それが実はもう動いているのです。街で勇者達が各々のスキルを使って物流をサポートしているのです」
「おお、それは画期的じゃのう」
「基本的に移動系のスキルを持つ勇者達が大活躍していますね、瞬間移動や移動強化系、次いで筋肉強化や怪力系、あとは暇を持て余した勇者達が日銭を求めて日雇いの荷運びを」
「助かってはおるが夢が無いのう」
「他にも浮遊系スキルや、像の様に力持ちとか、蟻の怪力を誇るスキルとか、えーどれ連れてきましょう? やっぱり複数連れてきて比較した方がいいでしょうかね?」
「いや呼ばんでいいじゃろ、何じゃ蟻って?」
「蟻のように自重の50倍の荷物が持てるそうです」
「怪力に含めとけよ」
「まぁしかし勇者とは言っても、業者としては初心者ですからね。冒険と同じ感覚で、配達に来ない日もあったり、依頼を忘れたり、寄り道が多かったい、魔物の討伐クエストを優先したりとか」
「いやそっちが本業じゃからなぁ」
一時的な参入は便利だが、勇者が運送に駆り出されると本来討伐を担っていた冒険業務が疎かになってしまう。
「何か良い手はないものか……」
王様がそう口にした時、謁見の間の扉が大きく開かれた。
「何や呼ばれとる様な気がしてなぁ、邪魔するでぇ!」
そう言って部屋に入って来たのは、南部の商人の格好をした褐色肌の名が耳種族の少女であった。後ろには複数の黒尽くめの男たちが付いてくる。
「ウチに掛かればなぁこんな問題はあっちゅーまやで! 解決したるわ」
「どのように解決するのか興味がありますね」
騎士団長の言葉に、商人は待ってましたとばかりに。
「まずは荷物をウチ等がいったん預かるんや、そんで近くて手空きの勇者を探す、報酬の相場も決めたる、そんで代金はしっかり回収出来れば軌道には乗るやろ、任しとき、ウチが全部仲介したるわ!」
「それは素晴らしですね!」
「ええんかのうこんなスピード解決しちゃって」
「まー手数料は貰うけどな」
「ボス」
「ボス言うなや、そんでなんや?」
「ウチ等の調味料商売マネして、在庫抱えきれんくなった商会の連中どうします?」
「まったくどうしようもない連中やな、塩なんて物流が復帰する前のちょっとしたおまけみたいなもんや、物流が動き出したら暴落やな、ましてや他の調味料なんぞに手を出してからに、砂糖なんぞ保管の方が大変なんやから」
「見捨てますかボス?」
「まー言うて、商会は身内やしな、商人が居らんと市場は儲からん、一人勝ちして終わりじゃないんや。そいつらの抱えてる在庫、全部買うたろやないか、格安でやけどな!」
「なんじゃ意外に優しい所もあるんじゃな」
「ヘイワーズ大臣だったら、金の稼げない商人に利用価値無しって見捨てそうです!」
「しかしボス、こっちもこっちで砂糖とかの在庫抱えてしまいますぜ」
「ボス言うなや。ま、こっちはこっちで使い道があるんや」
そう言って商人は不敵な笑みを浮かべて見せた。
後日。
「国王様、物流が安定して回るようになりました!」
「それはいい事じゃないか」
「これも全てウェイシェン商会のお蔭ですね!」
「いや結構、事の発端あいつらだけどね!」
王の悩みはまだ晴れそうにない。




