クエスト53【料理改善編_物流改善2】
ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。
その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。
「大変です陛下!」
そこに、謁見の間の扉を大きく開けて、低身長種族の女性が資料を抱えて入って来た。
「うむ、何事か大臣よ」
珍しく慌てた様子の大臣に面くらいながら、王様は問いかける。
「はぁ、申し訳ありません陛下、ここ最近の騒動も落ち着きまして、塩の供給も安定しました」
「……それは、良い事なのではないかの?」
「いい事? 確かに物流が安定すれば、国民の暮らしも落ちつき平和が訪れます、しかしです! 塩の流通が復活したというのに!」
「なんじゃ何か問題でもあるかの!?」
「税収が、減っているのです!」
「そういう時もあるんじゃないかのう?」
「元々塩などは採集場から商人が買い付けて、運んでくるものです。湾岸部から海水を煮詰めたり、あるいは天然の岩塩の洞窟なんかから削り出してくる訳なんですが。その行程で関税や重量税、街道使用料、市場使用料、港利用、積み荷登録費、商人証更新料」
「いやいや多い多い……」
「それら諸々の課税が掛かるので、流通が安定すれば税収も増えるはずなのに!」
「逆に今まで取り過ぎたんじゃ?」
「だとしてもこれは陰謀の匂いがします!」
そんな話をしていると。
「誰かが呼んでる気がするなぁ! まいどウェイシェン商会やでー!」
陽気な声と共に、南部の初認を意識した衣装を纏う、褐色肌の耳の長い少女であった。商人の後ろを相変わらず黒服の男達もついてくる。
「ウェイシェン商会……国内最大規模の商会ですね、その商会が我々に何の用ですか?」
「あんなぁ、街道の税金がちと高いんやぁ、安くならんの?」
「何を言い出すかと思えば、街道の税金は街道維持費も含まれています、他にも橋の補修費、関税、重量税、魔物討伐費」
「やっぱ多過ぎじゃろ?」
「全て街道を安全に通っていただく為には必要な経費なのです!」
「せやかてなぁ、運送途中に魔物に出くわしたら、ウチ等自分らで倒しよるで? その分の税の返還も無いやろ?」
「その代わり、街道は定期的に騎士が巡回に出ています、その費用です!」
「あかんでぇ矢鱈目ったら難しい言葉使うて、別名目で取りよるんはお役人の悪い所やで」
陽気な声で大臣と舌戦を繰り広げる商人に、部下の黒服が耳打ちする。
「しかしボス、うち等貴族領の私道通る許可貰ってるんで、街道税払ったことが無いですよね」
「ボス言うなや、あとお前全部しゃべっちゃってる」
そこにすかさず別の黒服がフォローに入る。
「そうですぜ、それだけじゃなくて、重量税は徴税箇所区間では積み荷を家畜に変えて、移動家畜扱いって事で牛を歩かせて通らせて貰ってるんで、ボス天才!」
「ボスって言うなや、あとお前もなんで全部言うかな」
呆れた様子の商人を他所に。
「あと橋の通行税ケチる為に皆で河の浅い所頑張って渡ったな!」「ありゃ大変だった」
「大臣よアレは大丈夫なのか?」
「はい、一応どれも合法的な手段です。しかし何という事でしょう、税収をそんな手段で逃れる輩が居るなんて許せません!」
「うち等悪い事はしてへんでぇ、せやったらどうないするん?」
商人の挑発に、大臣は毅然とした対応で。
「今すぐ法改正を行います、貴族院を招集し、法の抜け道という抜け道を全て塞ぎます!」
大臣は逃さないといった表情で。
「税収は一銭たりとも逃しません! 税金はぁ! 私のお金です!」
「いや国の金じゃ」
冷静に王様が突っ込みを入れる。
「ははぁ、役人っちゅうんは怖いなぁ、税金取る為なら何でもしよる」
商人は嘲笑うように。
「ほなウチも本気や、どんな法律も抜けたる、どんな関税でも避けたって、どんな書類も不備なく揃えたるよ! 全部合法的になぁ!」
「流石っスボス!」
「ボスって言うなや。世の中の金は誰の為に流れていると思う? 商人や、金は巡って、巡った先は全部ウチの財布の中っちゅーことや。ええか、金はぜーんぶウチのもんなんや!」
「いや国民の金!」
王様の叫びは二人には届いて無さそうだった。
後日。
「はへーそんな事があったんですね」
「まったく大変じゃったというのにお主はどこに行っておったのじゃ?」
「いえ部屋の前までは来たんですけど、商売、税金、利益、徴収! みたいな掛け声が響いて怖くなって入るのを止めたんですよね」
「妙な処で感が冴えとるのう」
王の悩みはまだ晴れそうにない。




