クエスト52【料理改善編_物流改善】
ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。
その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。
「国王様、どうなされましたか!」
そこに勇ましい足取りで、全身甲冑の騎士が姿を現す。
「おお、騎士団長か……実はな」
国王が言いかけた時。
「おおう、国王様! 話を聞いてくれ!」
「いや俺が先だ、俺の話を聞いてくれ!」
謁見の前に騒がしく二人の男性が入って来た。
「むぅなんじゃ騒がしい」
片方は街の料理人といった格好で、もう一人は冒険者といった感じだった。
「何事ですか一体、個々は王城内です、狼藉は止めなさい!」
今にも掴み掛りそうな二人の男性の間に入って、騎士団長は仲裁に入る。
「そもそもこいつがふざけた真似さえしなけりゃあな!」
「んだとぉ、黙って聞いてりゃ偉そうに!」
「ともかく落ち着くのです!」
騎士団長が力で無理やり二人を引き離す。
「ええい埒が明かん、まずはそこの店主! 何用か述べるのじゃ!」
王様も耐えかねて場を仕切る。
「へ、へい。国王様も仕上げます。何でもこの者が星をくれてやるから飯を安くしろだと言ってきやがりまして!」
「ふむ、星とな?」
「最近町の店で、評価を星で表すのが流行ってるみてぇでこいつがさらに星が欲しかったら金を出せと」
「ちがう! 俺はお店に客が来るように親切心で星を上げようと思っただけだ!」
冒険者の男が反論する。
「何が親切心だ! 態度が悪いだ店が汚いだぁ料理と関係ないとこグチグチと言いやがって!」
「俺の評価は総合評価なんだよ!気持ちのいい接客や店作りも料理の評価なんだよ!」
「一体何なんじゃ……?」
「王様、最近町でこういったトラブルが多いらしいんですよ、星をやるからサービスしろだとか、星の代わりにタダにしろ、星をあげたんだから看板娘と付き合わせろとか」
「その星って何なんじゃ!」
「へぇ王様、何でも妙な連中が付けてる料理の番付みてぇなもんでさ」
「俺はその審査委員に選ばれてるんだよ、俺が星を付けりゃ店は繁盛間違い無し!」
「冒険者組合はまた妙な事をしておるのう」
呆れる王様に騎士団長が答えた。
「それが冒険者組合は無関係らしくて」
「ふむ? そこの冒険者よ、いったい誰に審査員に選ばれたのじゃ?」
「そりゃぁ王様、アレですよ……あの何か変な塩売ってる連中です」
「変な塩?」
また妙な単語が出てきて、首を傾げる王様をよそに、再び謁見の間の扉が大きく開かれた。
「御呼びとあらば即参上! ウチの噂をしとるんはこの辺かぁ? まいどーウェイシェン商会でございまーす!」
陽気な掛け声とともに、褐色の肌をした南の方の商人っぽい格好をした、耳の長い見た目は少女のような女の子が、黒い格好をした男性達を引き連れて謁見の間へと入って来た。
「今日は千客万来じゃのう」
「商人ですか、ちょっと今は訪問販売は受け付けてなくてですね」
騎士団長が断りの返事を入れようとした時、冒険者の男が耳の長い女商人を指さした。
「あ、こいつです! こいつがおいしい店に星をあげようって誘ってきたんですよ!」
冒険者の指を遮るように、黒服が前に出る。
「てめぇウチのボス気やすく指さしてんじゃねぇぞ!」
「ボスは止めぃ、あんま人様に大声上げるもんちゃうぞ」
声を荒げる部下を、商人は片手で制した。
「ああそうだ、確か美味しい塩とかいってこいつら怪しい塩を売ろうとして来た奴等だ!」
料理人も見覚えがあるらしく、声を上げた。
「美味しい塩ですか? 国王様、何やらこの連中が今回の事件に関係ありそうな気がしてきましたよ!」
「いやまぁ怪しいのはそうなんじゃが」
「おっと変な言掛りはやめて貰いますぅ? ウチ等は清く正しいウェイシェン商会やねんで、誠実、真心、安心、安全でやらしてもろうてます」
「なら問題ないですね、疑って申し訳ありません!」
「いや騎士団著口八丁に惑わされ過ぎじゃ、まずは商人と言うからにはどんな物を売っておるか見せて貰おうかの」
「お、お目が高いねぇ。そんじゃまずはコレ! とある戦士が愛用されたという、つかえば怪力無双[益荒男塩]、そしてこいつは高貴なお姫様が愛用されたという[桜塩]、さらに高位なアンデッドも一撃で美味さに震える[柑橘塩]どれも効果は抜群やー」
「これは怪しいのう、それで何で塩を売る商人が、店のランク付けを推奨してるんじゃ?」
「そりゃぁ当然、星を沢山掲げた料理屋のほとんどが、いいや全ての店がウチの塩を使ってたんと知ったらどうや? ウチの塩バカ売れ間違いなしやで」
調子良さそうな顔をする商人に、黒服が耳打ちした。
「ボス」
「ボスって言うなや、そいでなんや?」
「教会の塩の買い占めに便乗して、塩の供給不足と、国民にグルメの意識を植え付け、ぶっちゃけ中身あんまり変わらないハーブ配合の塩を割高で売る計画がようやく軌道に乗ってきましたね」
「おま、何でそないな事今言うんや……」
「いや、うちのボスはすげぇぞって舐められないように言わないとと思いまして」
「絶対今ちゃうやん、あとボスって言うなや」
唐突に展開される暴露に、王と騎士団長は少し唖然として。
「崖に追い詰められても無いのに、ここまで自白する黒幕も珍しいのう」
「棚からぼた餅ですね! しょっ引きましょうか?」
「いや、商人が塩を買い占めて、高く売るのは別に法律に反しておらんでのう」
今にも捕まえに行こうとする騎士団長を王様は制した。
「なんやぁウチのボス捕まえよう言うかぁあぁ?」
それに対して、ガラの悪そうな黒服が啖呵を切る。
「拙いですぜボス、このままじゃ、星を付与させてウチの特製塩色んな所に使わせて、そこから特性の調味料シリーズ、調理器具、食材に至るまでウチでプロデュースして高級レストランをプロデュースして、最終的にご家庭に高級レストランの味をお届けって名目でインスタントまで手掛けようって言う計画がバレてしまいますぜ!」
「お前、全部言うやん……あとボスって言うな」
唐突な暴露に、王と騎士団長は呆然として。
「とりあえず全員捕まえときますか?」
「うーむ、ちょっと悩むの」
後日。
「王様、噂の通り例のハーブ入りの塩が結構流行ってますよ!」
「ほう、味は確かなのかのう」
「大臣が悔しがって、王国印の特製塩を作ろうって息巻いています!」
「あ奴塩なんて抜いても気付かないとか言ってなかったかの……」
王の悩みはまだ晴れそうにない。




