クエスト51【料理改善編_原因解明4】
ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。
その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。
「国王様、どうなされましたか!」
そこに勇ましい足取りで、全身甲冑の騎士が姿を現す。
「おお、騎士団長か……実はな」
直立不動で立つ騎士団長に、王は己の抱えた苦悩を漏らす。
「……そういや大臣はどうしたかの? 最近姿を見せんが」
「何度か相談には行きましたけど、物凄い書類を広げて作業に集中している様子でしたね」
「ふむ、何をしておるのかのう、まさか今回の一件を真面目に調査しているという訳でもあるまい」
「いえ、そのまさかでございます!」
凛とした良く通る声が、謁見の間に響いた。満を持してとばかりに姿を現したのは、低身長種族の女性であった。
「おお、大臣か、そのまさかとう事は、本当に調査しておったのか?」
「はい、かれこれ三日ほど徹夜しております」
よく見ると大臣の髪は解れ、目の下には大きな隈が出来ていた。
「そんなに調査に時間が掛かる物なんですか? 犯人は教会と決まったじゃないですか」
「その事ですが、確かに今回の発端は、教会による塩の大量買いと、不要となった精製不測の塩の拡散に有ります。しかし私は事前に、教会側から塩の使用目的と必要分の買い付けの申請書に目を通しておりました」
「なんと!?」
「で、では全ての黒幕は……ヘイワーズ大臣、貴女だったのですか!?」
「話は最後まで聞いてください。申請書によると確かに塩の大量購入は行われましたが、ほとんどが精製途中の物ばかり、しかも不要分を安価に卸しています。つまり市場への影響にはほとんど関与していません、むしろ防腐処理や保存食用等の食用以外での使用には問題が無いのです」
「しかし実際に町では塩不足が起こっておるぞ」
「そこが問題なのです、教会が行ったのは、塩業者からの直接買い取りで、一般市場への影響は最小限となるはずでした、しかし誰かがそれに便乗し塩の買い占めを行ったのです!」
「それも教会がやったのではないか? 教会側も町の塩不足を歓迎しておるようだったし」
「やはり教会が悪なのですね! さっそく冒険者組合に教皇の討伐依頼を出しましょう!」
「その申請書を渡された、冒険者組合の職員の気持ちも考えてやるんじゃ」
「確かに教会側は今回の件を利用するつもりの様ですが、それは信者獲得の為、また独自栽培の香草を市民に提供するのも一応は善意です、まったくそんなに高く売れるなら私だってハーブ栽培やりたい」
「大臣?」
「なにも言っていません」
大臣は気を取り直して。
「調べによると、教会が粗製の塩を売る際に複数の商会が、大量に塩の買い付けを行ったことが分かっています」
「何と、つまり商業組合が」
「私は怪しいと睨んでいます」
「なるほど敵は、商業組合何ですね? では商業組合に殴り込みに行きましょう! 商業組合の一番偉い人って組合長でしょうか?」
「いや何でそんな、討伐依頼出す前提で動くんじゃ」
「それに商業組合は、教会や冒険者組合と違って、複数の商会から成る相互扶助組織ですので、一番偉いという人物は居ません。まぁ噂では陰で操る凄腕のフィクサーが居ると言われています。羨ましい、そんな立ち位置に私もなってみたい」
「大臣?」
「何も言っていませんよ?」
どうやら寝不足で、大臣はちょっと本音が漏れてしまうらしい。
「じゃあそのふぃくさーって奴を倒せば解決ですね!」
「あくまで噂です、本当にいるか分かりません。それに今回の件はどうにも腑に落ちない、それで調べ回っていたのです」
「何ぞまだ気になる事でもあるのかのう?」
「まず大前提として、塩の買い占めは儲かりません」
「何故じゃ、今皆塩が無くて困っておるじゃろう、そこに塩を高額で出したら売れるんじゃないかのう?」
「それは国王様が裕福だからです、第一粗精製ですが塩はあるのです、今高額で塩を売っても大抵の庶民は安い粗精製の塩で我慢します。つまり塩で儲けようとするならば全てを独占するしかない」
「なるほどのう」
「しかしそれをやってしまえば、恐らく国、我々が動かざるを得ない。だから塩では儲けが出ないのです」
「ではよっぽど商売が下手な奴がやったんですかね?」
「いえ、むしろ……これは狙いは別? 塩は売る為ではなく、市場から無くすのが目的だった? 教会が粗製の塩を安く売るタイミングならば警戒されないから……つまり粗製の塩を使わざるを得なくして、不満のはけ口を教会や国家に向けつつ市場を混乱させる?」
「つまり、敵の狙いは料理を不味くして不満足感を煽ったというのか、何の為に? どう儲けようというんじゃ?」
「いえ、おそらくこの先があります」
「まだ何かあるというのか!?」
「恐らくはですが、向こうの狙いがまだ私にはわかりません、しかし商会を使って塩の買い占めをしている以上、どこかでその塩を使わなければただ損をしただけに終わります。そんな相手ならば敵ではないのですが」
「一体何が起こるというんじゃ!」
「それは、向こうの……その誰かの出方を待つしかないかと」
後日。
「国王様! 町の人達も粗製の塩にハーブを合わせた調理法を見出したらしく、収束に向かっています!」
「おおそれは良かったの……しかし本当にこのままで終わるのかのう」
「もうちょっとしたら、元々の業者からも塩が入ってきますから、何も心配はないと思いますけど」
「本当にそうかのう? ここまで騒がしておいて、目的が市場のハーブブームとかだと単純に教会が一人勝ちでしかないんじゃが」
王の悩みはまだ晴れそうにない。




