クエスト50【料理改善編_原因究明3】
ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。
その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。
「国王様、どうなされましたか!」
そこに勇ましい足取りで、全身甲冑の騎士が姿を現す。
「おお、騎士団長か……実はな」
「まだ料理の味に慣れないんですか?」
「料理長も塩を使わずに何とか頑張っておるがのう」
「そう言えばちょっと甘い料理が多いですね」
「いやいや今回の事で塩がいかに大事か思い知ったわい」
ここしばらく、市場には粗悪な塩が大量に出回り、国民達は料理の質低下に悩まされていた。
「もともと塩を仕入れていた業者から新たに買い付けは出来んのか?」
「それが、大臣に聞いたところ、教会から大量の買い付けがあって精製途中の物も全部買い取っていったとか」
「教会か……なんでまたそんなに大量に塩を?」
「塩浄化という、土地を清め幽霊や悪霊を出なくする儀式に使うそうです、この前敵の拠点が攻略されたので、その場所の浄化に使ったものと思われます」
「うむぅ、正規の儀式に使うのであれば文句はつけずらいのう」
「それで余った塩を大量に流したという事です」
「そこじゃ! ちゃんと精製してから売れというのに、ちょっと責任者を呼んで来るのじゃ!」
「責任者ですね、分かりました、しばしお待ちを!」
そう言って騎士団長は部屋を出て行った。
そしてしばらくして、1人のシスターが連れて来られた。
「何じゃまたお主が責任者なのか」
「えっとぉ、あのあのいきなり連れてこられてぇ、お前が犯人かぁと言われましても、ぜんぜんぜんぜん前世くらい遡っても思い当たる節がぁ無いですけどぉ?」
シスターは全く身に覚えがないといった様子で首を振った。
「っと言うか教会関係者っぽいのがレリフ嬢しか居ませんでした」
「ふむ、この時期は別に祭事は無かったはずじゃがの?」
「今教会はぁちょっと多忙な時期でしてぇ、いえ表向きの行事では無いんですけどぉ」
「何じゃ国王にも明かせぬ行いでもしておるのか」
「いえいえいえ、教会って質素倹約が信条なんでぇ、何処の教会も自給自足が決まり何ですよぉ、それで教会で作っている作物の収穫時期でぇ、皆郊外の専用菜園に繰り出していますぅ」
「それは凄いですね! そう言えば教会の仕出しに良く人が並んでいましたね!」
「しかし教会総出で収穫とはかなり大規模なんじゃな」
「うちはぁその辺ガチなんでぇ、各地の巡礼者から得た世界中の農耕知識を総動員して、教会のブランド野菜作ってるんですぅ、この時期はぁ畑に金が生るんですよぉ!」
「売ろうとして居らんかこれ?」
「しかし王様、教会で調理した焼き菓子や果実酒を販売する事は、禁止ではありませんので、この際野菜を売っても法には触れません」
「いや売り方!」
「手始めに販売したぁ清めの塩はぁ大変好評との噂ですぅ」
「やっぱお前らかの」
「あれ不味くて不評でしたよ」
「ちょっと町の人達はぁ、塩分摂取量が多過ぎるんですねぇ、皆教会を見習って、減塩、質素、倹約、ヘルシー、ボジティブ、エモーショナルな生活を心掛けて貰いたいのですぅ」
「最後メンタル寄りじゃったな」
「でも教会も塩は調理に必須なんじゃないですか? 市場に良質な塩が出回らなくなって困るのは教会も同じでは?」
「それがうちでは困らないんですねぇ、うちの味付けはぁ、香草メイン。うちの畑で育てている香草とそれから作り出された香辛料によって独自の味付けがされているのでぇ、信者達にも安心ですぅ!」
「何とハーブじゃと!」
「国王様、何ですかハーブって?」
「確か、遥か遠方の巨大国家が、その昔貿易で無双したという交易品があってのう、それが茶葉と香草、そして香辛料だったはずじゃ、当時袋1つで金塊相当という高級品じゃった、それを教会は栽培しておるとは!」
「……別にぃ違法じゃないですよぉ、そもそも浄化効果のある香草類はうちじゃ必須ですしぃ、ポーションの原料にもなるので感謝もされますしぃ」
「聞く限りだと、悪用はしていないですね」
「まぁ悪い事はしておらんのう」
「そしてぇ、うちの仕出しの香辛料たっぷりスープがぁ、お腹を空かせた人達の胃袋をつかんでぇ信者さんになってくれるんですよぉ、特に今塩気を抜かれた町民にぃ、うち特性のエスニックはぁ、まさに仕事明けのエール、サウナ上がりのミルク、羊皮紙に零したインクの如く染み込むんですぅ、そしたらもうそれ無ではいられなくなりますぅ!」
「やってる事は飯の仕出しなのに、何で言い方はアウト寄りなんじゃ……」
「あ、でも教会にハーブとかの使い方を教われば、今の状況を脱する事が出来るんじゃないでしょうか?」
「確かに、聞く限りでは凄く美味しそうじゃし、今度寄らせて貰おうかの。別に国王が教会に顔を出しても文句は言われまい」
「まぁ飯目的というのは伏せましょうか」
「あ、それでしたらぁ、次の祝日に是非お越しくださいぃ」
「その日は何かあるのかのう?」
「祝日の仕出しはカレーなんですぅ!」
とてつもないパワーワードを繰り出したシスターだったが、王と騎士団長はきょとんとして。
「カレーって何ですか?」
「食べた事が無いのう」
「えー、それって可哀そうっていかぁ人生丸損してますぅ、うちのエスニック仕出しの中でもダントツ人気メニューですのでぇ、覚悟して食べに来てくださいぃ!」
「覚悟って、なんじゃうま過ぎるという意味かの」
「あ、じゃなくて辛いんですよぅ、ちなみにお二方は辛さ何倍にチャレンジしますかぁ?」
「そうは言われても、食べた事無いですからね、皆はどのような辛さで食べるのが普通なんですか?」
「そうですねぇ一番香辛料を少なく甘いのがエンジェル辛、子供に人気ですぅ。次にアークエンジェル辛でちょっと刺激的に。プリン辛パリティでなかなか辛いです」
「うーむ分からん」
「ちなみにレリフ嬢はどのくらい辛いのがいけるんですか?」
「私はヴァチャ辛(3倍)くらいですねぇ、まだまだですぅ。うちの神父くらいになるとぉスロ辛(6倍)とか行くんでぇ」
「そ、それはどのくらい辛いんでしょうか?」
好奇心で騎士団長が尋ねる。
「初心者にはお勧めしませんねぇ」
「結構ヤバそうな辛さなんじゃな」
「教皇様なんか辛ラフィム(9倍)を平気で平らげるんですよぉ、ありゃ人じゃないです、神に最も近い御力を感じますぅ!」
「いや辛さ耐性じゃなくて信仰心とか人柄で評価したれ」
「いいですね、私も憧れます。いつか私もその9倍にチャレンジして教皇になりたいです!」
「いや教皇になる為の試練じゃないじゃろ、辛いモノ食べるのは」
「そうですよぉ、教皇様並みの加護が無ければぁ一般人では耐えられません、それくらい高みに居るお方なのですぅ」
「確かに聞く限り、人としては遠ざかっておるな」
その後。
「国王様、さらに聞く所によると、裏辛ランクと言うのがありまして、辛テル(10倍)、辛酷マー(15倍)とまだまだ先があるそうです!」
「ワシは甘口にするぞ!」
王の悩みはまだ晴れそうにない。




