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クエスト49【料理改善編_原因究明2】


 ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。

 その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。


「国王様、どうなされましたか!」


 そこに勇ましい足取りで、全身甲冑の騎士が姿を現す。


「おお、騎士団長か……実はな」


 場所はいつもの謁見の間ではなく、大人数でもくつろげる大広間。

 そこに長いテーブルが置かれ、その上には器に注がれた奇麗なスープがいくつか並ぶ。


「おやこんな時間に夕食ですか? スープばかりではお腹に溜まらなくないですか?」

「いや、これは料理長が、何とかあの不味い塩で作った料理なんじゃ」

「あー城では使わずに塩を節約する方向で動いてましたからねー、一口頂いても?」

「うむ、多くの人の意見が欲しいと言っておったでの」


 騎士団長は、テーブルに並べられたスプーンを取ると、手前の一皿を一口分すくう。


「あーうん、まっずい!」


 容赦なく味を批判する。


「濃厚な野菜の旨味! さり気なく溶け込むように入る牛肉、隠し味のハーブ、それとかなり新鮮なミルクを使っていますね! それら上質な食材をいとも容易く蹴散らし、台無しにするこのえぐみ! どうしようもないですね!」

「お主食レポ上手いんじゃな」


 騎士団長の素直な意見に、王は感心する。


「しかしのう、流石の料理長もこの塩で美味しい料理は無理じゃったか」


 他のスープにも騎士団長は口を付けてみるが「不味―い、もう一杯!」と謎の健康法を試しているかのような声を上げていた。


「けっこうな不味さじゃったが、よく飲めるのう」

「まぁ不味くても塩ですし、慣れれば」

「新しく塩を買いなおす手段はないのか!」


 その時、大広間の扉が開き、部屋に入ってくる人物がいた。


「ウィっスー、来ちゃった♪」


 その人物は裾も袖もスカートも短い、お腹や太ももを惜しみなく露出した貴族服を着こなす少女が入ってきた。


「おおこれは冒険者組合支部長の賢者さん、どうしてここに」


 騎士団長が朗らかに迎え入れる。


「何か―ウチの連中、飯やべぇって言ってて、ヤバくてパネェ事になってるって聞いて」

「まぁ町中で話題になっておるからのう」

「えーこの時間に夕食とか、デプっちゃうじゃん!?」


 賢者はテーブルの上に置かれた皿を見て驚愕する。


「うむ、これはのう、うちの宮廷料理長が今噂の不味い塩を使ってなんとか用意してもらったメニューじゃ」

「あーしあの味嫌いじゃないんよね、ジャンクっぽくてー」


 賢者はテーブルに並んだスプーンを手に取ると、適当に一皿をすくう。


「そうですよね! 慣れればいけなくは」


 賢者はスープを口に含んで。


「んんー水に溶かして再結晶したっぽいけど、このまずまずーを取り除くんは、少量じゃなくてめいっぱい水に溶かして(飽和塩水)、そこからさらに塩足しちゃってーまぜまぜーってして(攪拌)、すっとー塩がずーんって沈むから(沈殿)、上の方をばいばいしちゃえばー、にがにがは取れるっス」

「……」

「……今なんか賢者っぽくはあったの」

「何言ってるか分かんないですけどね、でも私はこの苦いのが割と好きになってきましたけど!」

「ふむ、何を言っとるかは分からんが、そのアドバイスは後で料理長にしてやると良いぞ」

「あーでも、それ毎食すんのはちょっと無理かも」

「では賢者さん、他にこのえぐみをどうにかする方法はありますか?」

「うーん、じゃちっと台所貸して貰えるー?」

「騎士寮の調理場なら案内出来ます、こちらです!」


 こうして騎士団長は賢者を連れて大広間を出て行った。

 そして長い時間が過ぎて。


「お待たせしました!」


 何やら器に注がれたスープを持って帰って来た。


「またスープか……」


 本日十何杯目かのスープの登場に、王は辟易した。


「まぁそう言わずに、賢者さんがあの塩を見事調理して見せたんですよ!」

「ふむ、何やら茶色くて濁っておるのう……」


 見た事も無い色のスープに、王は戸惑いながらスプーンですくう。


「しかもあの塩を使っておるのじゃろう? もう罰ゲームじゃろうに……美味い!?」

「驚きですよね! 味見したんですけどあのえぐみが見事になくなっています!」

「まー、まずまずの原因ってー精製過程があまあまでーミネラルが多めだったんよー、だから仕上げの味付けにはいまいち! でも他の調味料と合わせて味付けすっといい感じ! 特にうまうまを含んだ、きのこや魚介の出汁と、遠くの国の豆から作られた秘伝の調味料との相性がばっちし、あーし家庭的っしょ!」

「何を言っているか分からないですけど、美味しいでしょう!」

「うむ、何を言っているかは分からんが、美味いのう!」

「キミ等さー、料理作ってくれる人にもうちょ感謝しい?」


 やや呆れた表情で賢者は言った。

 


 後日。


「大変です国王様! 例のスープですが、賢者さんがくれた、幻の調味料みそみそは、かなりレアらしくて、普通に買えないらしいです!」

「賢者はどこで手に入れたんじゃ?」

「ひ・み・つ♪ だそうです」

「ぬぬう。振出しに戻ってしもうたの」


 王の悩みはまだ晴れそうにない。



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