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クエスト05【盗賊退治1】

 ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。

 そしてその城内にて、国王ブージ三世は苦悩していた。


「国王様、どうなされましたか!」


 そこに勇ましい足取りで、全身騎士甲冑の騎士が姿を現す。


「おお、騎士団長か……実はな」


 目の前にて直立不動で制止する騎士団長に、王は己の悩みを打ち明けた。


「ようやく近隣の森に巣くうドラゴンの件が解決したのだがの」


 色々あって、一応これ以上ドラゴンによる被害が出ることは防げた。


「はい、ただいま特注の納屋を手空きの者総出で取り掛かっております! 国民からも見学も申し入れが殺到しているとかで」

「実はの、その森の竜の巣後を今度は盗賊がねぐらにしたようなのじゃ」

「なんと!」


 ねぐらの主は居なくなったとはいえ、竜の気配が残る場所には野生動物や近隣住民は恐れて近寄らない。隠れ潜むには格好の場所となっていた。


「確かあの辺は、主要街道にも隣接していましたね、交易に支障が出る前に騎士隊の派遣をするべきではないでしょうか!」

「しかしのう、森に潜む盗賊団を打ち倒すとなれば中々に手間じゃろう」


 生い茂る森をくまなく探し回るのは容易な事ではない。まして重い鎧に身を包んだ騎士団ではどうしても先回りされ罠を張られたり逃げられたりしてしまう。

 本来は森の管理者や狩人が補佐に回り、盗賊を追い立てる役割を担うのだが、ドラゴンの件で隣の森は管理者が不在状態であった。


「竜退治の一件で派遣したばかりの騎士団を、再び行かせるのはなぁ」

「なるほど、そういう事でしたら、お任せください! 私めが今まさに、解決策を持ってまいりました!」


 その言葉に、王の顔に光が宿る。


「おお、その言葉を待っておったぞ!」


 次の言葉を催促するような王の表情に、しかし騎士団長は待ったをかける。


「おっとお待ちください国王様! 今まで我々は目の前の問題に対してその解決策を求めて動いていまいりました。しかし、それでは後手となってしまいます」

「むぅ」

「今回も竜の次に盗賊と、解決したつもりが次の災いを呼ぶ結果に」

「確かにそうじゃのう」

「今後我々は先を読むことが大事なのかと考えました! そこで今回は、予知能力のスキルを持つ者を呼んでおります!」

「おお騎士団長にしては、冴えておるの」


 予知で先通しが分かれば、先回りして動く事も不可能ではない。


「という訳でどうぞこちらにお越しください」


 そう言って騎士団長は王を部屋の外へと導いた。

 そして、王城内で普段は宴会などに使用する、広めのホールに王を案内した。


「別にいつも通り、謁見の間に勇者を連れてこれば良いのではないかの?」

「実は国内とそして近隣に、予知能力がある者に呼びかけの札を立てた所、思ったよりも沢山の応募がありまして」


 王が連れてこられた宴会ホールには、占い師のような格好の者の集団がひしめき合っていた。


「いや多っ!?」

「全国津々浦々から集めてまいりました予知能力者、延べ120名! これだけ集まれば予知し放題ですよ! 者どもー! 予知したいかー!」

「「「おおおー!」」」


 宴会ホールが沸き上がる。


「いや馬鹿かお前、こんなに集めた所でほとんどが詐欺師の類であろうに」

「おや王様は星占いとか信じないタイプですか? これだけ集まったら一人くらいは本物居そうだとは思えませんか?」

「居たとしても、こんなにいたら予言も全員バラバラになってどれが本物か分からんくなるだろうに」

「そう言うと思いまして、彼らをここに集めておいたのですよ! ではこれより、オイヘンブージ王国主催[第一回、予知能力者選抜サバイバル]開催します!」

「「「おおおー!」」」


 会場内に無数の怒号が響き渡った。


「予知能力者選抜サバイバルとな?」

「はい、誰が本物の予知能力者かわからない、ならばふるいに掛ければ良いのです! という事で最初はじゃんけん大会だー!」

「「「おおおー!」」」

「予知能力者たるものじゃんけんに勝てなくて何が予知かー!」

「大丈夫かの? 運で勝つ奴もいるのではあるまいか?」

「とりあえずは頭数を減らしましょう、という訳で準備はいいかー?」

「「「おおおー!」」」

「さいしょは、ぐー、じゃんけん」


 こうして勝つか負けるか、予知能力者かはたまた詐欺師か、運命を掛けたじゃんけん大会の火ぶたが切って落とされた。


 そして。


「はぁはぁ……半分くらいは減りましたね」


 ずっと大声を出し続けていた為、騎士団長は肩で息をしながら少し広く感じるホールを見渡した。


「それでもまだ結構居るがのう」

「じゃんけんに勝って休んでいる暇はないぞー、次は〇×クイズだー!」

「「「おおおー!」」」

「まだやるのか!?」

「もちろん選抜サバイバルですので!」


 そして。


「さらに半分くらいになりましたね」

「三十人弱といった所かの」

「よーし次は、チームに分かれて試合を行います、種目はサッカーだ!」

「「「おおおー!」」」

「いや待った、何でサッカー!?」

「ふふふ、予めこのくらいは予知して、今日までにサッカーの特訓をしてきてこそ真の予知能力者です!」

「なんか大分無茶な事を言っておるが」

「無茶も通れば草履が引っ込むとかなんとか!」

「「「おおおー!」」」

「もう好きにするとよい……」


 そして。


「次の種目はー」

「「「おおおー!」」」

「まだまだー!」

「「「おおおー!」」」



 そして。


 いつも通りの謁見の間に場所を移して、王と騎士団長の前に予知能力者選抜サバイバルに見事勝ち残った勇者が立つ。


「王様、この者が120名の中から選び抜かれた予知能力のスキルを持つ者でございます」

「お……おお」


 その者の放つオーラと思しき迫力に、王様も思わず声が上ずる。

 それもそのはず、選び抜かれた予知能力者は、身長2メールに近く、全身筋骨隆々の偉丈夫であったのだ。予知能力者は己の肉体美を自慢するかの如く、占い師風のローブの下は、腰回りを布で覆うだけという出で立ちであった。


「まさしく予知能力者にふさわしい出で立ちですね!」


 騎士団長は満足そうに頷く。


「そうかなー、もし兵隊の募集で来たんなら手放しで喜ぶんじゃが」


 訝しむ王様をよそに、騎士団長は勇者に向き直る。


「ではさっそく勇者よ、その予知能力で王の悩みを解決するのです!」


 騎士団長に指名され、勇者はゆっくりと口を開いた。


「……ワタシノ、筋肉ガ予知シマス、筋肉デス、筋肉ガスベテヲ解決シマス」

「何となくそう言うと思ったわ!」



 後日。


「結局何だったのだあの騒ぎは」

「そうは言われましても、最後の腕相撲勝負で私を負かした以上、あの勇者の予知は本物という事になります」

「まさかお主を負かすとはの、兵士として是非とも雇いたい……そうじゃ、あの者に盗賊退治を任せれば!」

「あ、いや彼日課のトレーニングと走り込みがあるので盗賊退治は無理との事です、あと明日は晴れだそうですよ」

「それが当たったからと言って何なんじゃ!」


 王の悩みはまだ晴れそうにない。


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