クエスト47【勇者強化月間4】
ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。
その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。
「国王様、どうなされましたか!」
そこに勇ましい足取りで、全身甲冑の騎士が姿を現す。
「おお、騎士団長か……実はな」
直立不動で控える騎士団長に、王は己の抱えた苦悩を漏らそうとした瞬間、すかさず騎士団長が口をはさんだ。
「例の勇者達の根性の話ですね!」
「うむ、よく分かったのう」
「長い付き合いですからね、聞いた話では支給される初期装備も更新されて、ベテランから特別訓練も実施されるとか、それでもまだ改善されないのですか?」
「思ったよりも結構色々と実施されとるのう」
「ここまで至れり尽くせりだというのに、まーだ不満が上がってるんですよ! 最近の勇者達は贅沢です!」
「ふむ、ここまで来るとそういう問題ではないのかもしれんな」
「どういう事でしょうか?」
「まぁ一度、勇者の声を聴いてみるかの」
「は、しばしお待ちを」
こうして一人の若者が連れて来られた。
「またですか」
「ふむ、騎士団長よ他の勇者は居らんかったのか?」
「うーん、どうもこの辺の勇者の見分けがつかなくて」
「そう言う感じ地味に傷つくんですけど」
流石の勇者も文句を言う。
「それでどうなんですか? まだ現状に不満はありますか?」
「何ですか急に」
「組合もかなり改革をしておるようだがのう」
「そういうのじゃないんですよ」
若者はちょと歯切れ悪そうに言った。
「ふむ、現状では訓練課程も最適化し、支給される装備品も改善され、さらにプロによる特別訓練も実施されておる、これならば過去に活躍した英雄に成れる日もそう遠くはあるまいと思うんじゃがの」
「勇者達は華々しく活躍したいんじゃないんですか?」
「それはそうです、神に選ばれてスキルを手に入れたんですから、それを使って困っている人々を助けたいです! でもドラゴン退治の依頼とか回してくれないし、魔王討伐も許可されないし」
「無謀じゃの……」
「暗殺技能やチートじみたスキルを持っていたとしても、訓練も受けていない人にそれを許可するほど組合も無能ではありませんよ、ドラゴンやましてや魔王などこちらの想像を超える強さを持っているんですよ」
「じゃぁいつかそんな日が来るって信じながら、コツコツとゴブリンとかを狩ってろって言うんですか!」
「それが一番近道じゃろ」
「昔の勇者達は、自分達で任務を選んで挑戦していましたが、その結果、生存率が非常に低くそれが慢性的な勇者不足に繋がっていました。その事を反省し、個々の勇者の実力に合わせた任務の斡旋が冒険者組合の役割となったのです、組合はあなた達の邪魔をしているのではなく、夢を叶える最適な道を模索しては居ると思いますけど」
「でも毎日、訓練ばっかりで辛いです」
「騎士団長よ、うちの兵士の訓練スケジュールを」
「えー、城の業務と雑務、内容は街の見回り、城外周辺の巡視、警備等を交代で行います。それと訓練ですね、各種武術や素手の格闘、実戦形式の戦闘訓練、さらに装備や馬の手入れや座学、事務業等も行います。それとは別に突発的な業務や任務にも従事します、最低限このくらいのスケジュールはこなして従騎士と成れますね、上を目指す騎士はここからさらに自主訓練も行っている者もおります」
「か、過酷ですね……」
「まぁ騎士は城の、ひいてはこの街の最後の砦じゃからな、皆この国を守る為必死に鍛えておるのじゃ、勿論皆スキルなぞは持っておらん」
「え、じゃぁ僕等って?」
若者は自分の存在意義に、疑問を持ち始める。
「とはいえ我々騎士はあくまで国の為に存在しています。国が承認した任務でしか動きませんし、国外の村にまで安易に派遣される事は出来ません」
「そうじゃ、身近な人々の間から、願いの力で生まれた勇者よ、そなた達は人々の身近な存在として、スキルをもって願いを叶える立場なのじゃ、華々しい活躍も大事じゃが、身近な人々の声にももうちょっと耳を貸してはくれぬか?」
「……そうですね、ちょっと気ばかりが焦ってしまって。確かに強力な魔物退治も大事ですが、かといって畑を荒らす魔物や、迷子の子猫を探す事も、人々にとって同じ悩みには違いないですよね」
若者は何か肩の荷が下りた気持ちで答えた。
「これからは地道に、人々の声に耳を傾けて、迷子のペットとか落とし物探しとか、夫婦の浮気調査とか、貴族の不正なんかをメインに頑張っていこうと思います」
「なんか別の業種っぽくなっとらんか?」
後日。
「国王様、勇者の一部が国民の身近な悩みなどの依頼解決に特化したグループを結成したようです」
「魔王退治などの大きな目標を掲げるよりも、そっちの方が良いのう。何も勇者が全員前線に行く必要も無い訳じゃし」
「[何でも解決! 勇者探偵団]という名前で活動を始め、すでに何件も依頼を解決しているとかで街での人気も上々です」
「良い事ではないか」
「冒険者組合も新たに、探偵業に特化した訓練コースを設置するかを検討しているとか」
「やっぱ組合ちと金儲けを意識しとらんかの?」
王の悩みはまだ晴れそうにない。




