クエスト46【勇者強化月間3】
ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。
その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。
「国王様、どうなされましたか!」
そこに勇ましい足取りで、全身甲冑の騎士が姿を現す。
「おお、騎士団長か……実はな」
直立不動で立つ騎士団長に、王は己の抱えた苦悩を打ち明けた。
「どうも最近の勇者達は、感謝を求めすぎるのではないか?」
「そうですね、昔は勇者といえば始終無言で、何か偉業を成し遂げても黙って去っていくイメージがありますね!」
「しかし最近の、意見をはっきり言うのも悪いとはいえんのう」
「確かに、何も言ってくれないと何考えているかわかりませんしね!」
「それにしても、勇者達がそんなに不満に思うほど、感謝ってされんものかのう?」
「それは各々の感じ方によるところもあります」
「実際聞いてみるしかないのう」
「わかりました、では勇者を連れてまいります!」
「うむ、頼んだぞ」
「は、しばしお待ちを」
こうして一人の若者が連れて来られた。
「また僕ですか」
「んん、お主は以前来た事があったかの?」
「先日呼ばれたばかりですけど!」
「あーちょっとモブ過ぎて覚えていないですね、申し訳ありません!」
「……まぁ個性的でない事は自覚してますけど」
「まぁ来た事があるなら話は早い、お主は人に感謝されたいかの?」
「え、それはサイコパス診断か何かですか!? 回答を間違えたら投獄とかされます?」
「ただのアンケートじゃ」
「そりゃ感謝はされたいですよ」
「ふむ」
「こっちだって命がけで戦って依頼をこなしているんで、やっぱり[ありがとう]の一言があると頑張りがいがあります」
「きっと依頼人は感謝していると思いますよ!」
「いや、それが最近は業務も効率化が進んで、依頼完了、はい報酬、では次の依頼をって感じで終わるんです!」
「まぁ冒険者組合の受付は直接の依頼人じゃないですからね」
「それに昔は村から直接依頼を受けておるから、完了の暁には盛大な宴が」
「羨ましいっ!」
「とはいえ、昔ながら方式には、それなりに不便さがあったしのう。遠くの村に行っても特に依頼がなかったりの」
「冒険者組合に感謝状とか届いてないんですか? 騎士の任務で派遣された時なんかは後日、感謝の手紙とか貰ったものですけど」
「基本的に勇者の依頼って派遣業務なんで、多分村人も誰が来たとか覚えてないと思います」
「ちょっと組合に問い合わせてみましょうか、村人も命懸けで任務をこなした勇者に感謝しないはずが無いのですから!」
そう言って一旦騎士団長は部屋を出て行った。
そして箱を小脇に抱えて戻ってくる。
「冒険者組合あてに届いた、渡し人不明の感謝状です」
そう言って箱の中身、大量の手紙を取り出して見せる。
「結構感謝されておるのう」
「知らなかった……」
「まぁ宛先が派遣された勇者様となっているので、組合側も誰に渡していいかわからないらしく持て余しておりました」
「どれどれ[恥ずかして直接お礼が言えず申し訳ありません][本当に命の恩人です][子供が勇者に憧れるようになりました][ゆうしゃのおにいちゃんありがとう]、ふむ、しっかり感謝されておるな」
「ああ、なんか逆に凄いプレシャーを感じる!?」
読み上げられた感謝状に、勇者は身もだえして喜ぶ。
「感謝がされておらんのではなく、上手く伝わらなかったという事じゃのう」
「そうですね、感謝がしっかりされていると分かったら、何かやる気出てきました」
「それは良い結果になったのう」
「あと、これからは名前を聞かれた際に[名乗るほどの者ではございません]って言うの止めますちゃんと名乗ります」
「変な処の習慣だけ残っとるんじゃな……」
後日。
「王様、勇者に上手く感謝が伝わってなかったことを村に伝えました」
「ふむ、ここから両者の良い関係が築けると良いがの」
「村は今後、入り口に[勇者歓迎]と魔道具で光る看板を立てて、さらには来訪の勇者には無条件で宿を無料にし、入り口で美女に歓迎の花輪を渡して宴を開くそうです」
「多分、何かの罠では? って疑われんかのう」
王の悩みはまだ晴れそうにない。




