クエスト45【勇者強化月間2】
ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。
その王城にて、ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。
「国王様、どうなされましたか!」
そこに勇ましい足取りで、全身甲冑の騎士が姿を現す。
「おお、騎士団長か……実はな」
「まだ冒険者組合の、勇者のやる気問題が解決していないんですか?」
「うむ、先日の勇者が後方支援に入って、教育課程はだいぶ整備されたらしいがの」
「とはいえ、まだまだやる気があるとは言えない現状ですね」
「ふむ、どうしたものかのう」
「やはり、当人たちの生の言葉を聞いてみるべきではないでしょうか!」
「そうじゃの、前回もそれで解決したしの、よし連れてまいれ!」
「は、しばしお待ちください」
こうして、1人の若者が連れて来られた。
「さて、どうしてやる気を出さないんですか!」
「うわっ! 何ですかいきなり?」
若者は驚いた声を上げる。
「何じゃ説明も無しにつれて来たんかの、実は組合では勇者達のやる気が無いと嘆いておるのだ」
「と言う訳です、何か不満があればおっしゃってください」
「そうは言っても……別にそれなりに頑張ってはいますけども」
「どうなんじゃろか、昔の勇者とかはもちっと覇気があった気がするがのう」
「確かにこっちが逆に気圧されるくらいの自信に満ちていたものですが」
「それってどのくらい前ですか? 今はそこまで頑張る人ってあんまりいないですよ」
「ふむ、だとすると何故昔の勇者達はああも熱血じゃったのかのう? 今の方が魔物も活性化して活躍の重要性は上がっとるはずじゃが」
「ちょっと大臣に聞いてきましょうか」
そう言って騎士団長は一旦部屋を後にした。
そして様々な資料を抱えて、戻ってきた。
「色々と昔の文献を借りてきました!」
「よくそんな物が残っておったのう?」
「何でも吟遊詩人や画家なんかが必要としているらしくて、それでですね」
そう言って騎士団長は持ってきた資料から、大きめな紙を広げた。紙には村人に勇者と思しき若者が、盛大に歓迎を受けている所であった。
「ふむ、物凄い歓迎っぷりじゃな、これはさぞかし名のある勇者を描いたんじゃろうな」
「ええっと資料には、旅立ったばかりの勇者、ゴブリンを倒して村人に歓迎される」
「え、ゴブリンでこれ!?」
招かれた若者が驚きの声を上げる。
「ほら、ゴブリンの大群とかを倒したんじゃろ」
「記録では三匹くらいですね」
「ありえない……今じゃドラゴン追い払っても何ならちょっと塩対応ですよ!」
「むむぅ丁度この村がゴブリンに非常に苦しめられただけかもしれんし、次の資料は無いかの?」
「ええっと続いてこちら、勇者強敵と戦うの絵です」
広げた紙には、勇者と思しき若者がちょっと大きいイノシシと戦っている様子が描かれる。
「いや今時こんなん倒しても100Gも貰えないですよ!」
「ちなみにこの後、より盛大なパーティーが三日三晩続いたとの事です」
「イノシシで凄い英雄扱いじゃの」
「まぁこの時勇者って、年に一人くらいしか選出されなかったので、単純に人手不足の時期だったってのもあります」
「今より魔物ももっと少ない訳じゃしなぁ」
「おかしいですよ! なんで今より敵が強いのに、報酬とか待遇が下がっているんですか!」
「勇者の競争力が上がっているという事ですね、増加する魔物の脅威に人々の願いが強まり、勇者が大量に増えた結果、勇者一人の価値が下がる勇者インフレーションが起こっているわけです」
「要するに。皆いちいち盛大に祝ってられないという訳か、知らず知らずのうちに環境が変わるもんじゃなぁ」
「そんなの不公平だ! 僕だってゴブリン倒して村人総出で宴を開いて、宿泊無料で英雄扱いされたい!」
喚く勇者を後目に騎士団長は。
「いっその事最初の村付近にでも、大げさに感謝してくれる勇者専用アトラクションでも建てますか? 国営で」
「なにそれ楽しそう!」
若者の目が輝く。
「むう、せめて他の民も楽しめる施設にせんと苦情が来るぞい」
「ヘイワーズ大臣に意見を聞いてみますか」
「あ奴に頼むとえぐいくらいの集金システムが組み込まれそうで怖いのう」
後日。
「国王様、ヘイワーズ大臣から試案を貰ってきました」
「ほう、意外に早かったのう、あ奴も存外乗り気じゃったか、どれどれ」
「何でも犯罪者の収容所を兼ねるそうで、さらに立地は海岸沿いをゴミで埋め立ててリゾート地化するとか、勇者以外にも楽しめるようカジノも併設するとか、で、名前が[ドリームアイランド計画]」
「いや予想以上にえっぐぃ」
王の悩みはまだ晴れそうにない。




