クエスト44【勇者強化月間】
ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。
その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。
「国王様、どうなされましたか!」
そこに勇ましい足取りで、全身甲冑の騎士が姿を現す。
「おお、騎士団長か……実はな」
直立不動で立つ騎士団長に、王は己の抱えた苦悩を漏らす。
「実はのう……冒険者組合から、最近の勇者はどうもやる気が無いと相談を受けてな」
「やる気ですか、そう言えば確かに最近ここに来る勇者達は、どうも根性が足りないと感じる事はあります!」
「やはりお主も感じるか」
「しかしですよ王様、見た目はやる気の内容に見えて、内心では熱く燃え滾っているかもしれませんよ!」
「そう言うもんかのう?」
「とりあえず、そのやる気の無い勇者とやらを呼んできましょう! どうしてやる気が無いか当人に聞けば手っ取り早いです!」
「それもそうじゃのう、当事者に聞かずにここで考えていてもしょうがないな、よし連れてまいれ!」
「は、しばしお待ちを」
こうして王の前に、1人の若者が連れて来られた。
「ふむ、この者が話に出た勇者なのかの?」
「いえ、何か冒険者組合の所でやる気無さそうにしてたので」
「おま、あんまり適当に選ぶでないぞ!」
「あーやってらんないス」
渦中の若者は、凄くやってらんなそうな顔でそう呟いた。
「ほらやる気無さそうでしょ!」
「いやそんな勝ち誇った顔で言わんでも、まぁともかく聞いてみるか」
「そうですね、勇者よ、何故そうやる気が無いのですか?」
騎士団長に問われ、勇者は答えた。
「やる気はあるっス、でもどーにも挑む気になんねッス」
「それを世間ではやる気が出ないというんじゃがな」
「や、王様に口答えする気はねぇっスけど、ちょっと仕事が割に合ってないって言うか」
「なるほど労働環境に問題があるって事ですか」
「まず、雑魚モンスター(ゴブリン)討伐とか、一匹当たり50Gなんスよ」
「ふむ、騎士団長よ、相場としてはどうなんじゃ?」
「まぁ安いですけど、雑魚モンスターですからね」
「いや、そりゃ正規の騎士様から見ると雑魚っスけど、俺達駆け出しの勇者にとっちゃ命がけの相手なんスよ、それが一匹50Gって、畑仕事手伝っても500Gくらいは貰えるんスよ」
「それは確かに報酬としてバランスが悪いのう」
「しかし魔物の討伐報酬で、冒険者組合の設定した経験値が入って評価レベルが上がります、冒険者レベルを上げれば高難易度の仕事も出来るようになるのです」
「なるほどのう、下積みをこなして上を目指すという事かの」
「でも、畑仕事手伝ったら形の悪い野菜貰えるんスよ」
「どうなんじゃ騎士団長よ?」
「ええっと、ゴブリンが集めた宝とか、装備とか拾えますよ!」
「魔物が使った装備とかなんか使いたくないっス。集めた宝も、奇麗な石とかガラス瓶くらいっスよ」
「ふーむ、思ったよりも深刻じゃのう、しかし冒険者組合の雑魚モンスター退治は結構重要じゃからな」
「そうですね、わざわざ騎士を派遣するほどではないとはいえ、雑魚モンスターでも村人にとって脅威には変わりありません、従来は駆け出しの冒険者の格好のターゲットだったのですが」
「最近はそうではないのか」
「昔に比べて戦う事が好きってのは減ってきましたね、あと最近は躍起になってレベルアップをあまりしない傾向にあります」
「そうなんかの」
「あー、正直レベル上がっても難易度の高い依頼とか、強敵と戦えとかリスクがバカ高いんですよね、そこまでして命かけるより平和に暮らしたいって言うか」
「むしろ何で勇者になったんじゃ……そう言えばお主はどんなスキルを持っておるんじゃ?」
「俺のスキルは計算、あらゆる出来事を演算して効率的に処理する事が出来るっス」
「いや裏方回れ! 後方支援に専念しろ! ソロでゴブリン狩ってないで商業とか農業とか経営の方に進めい!」
後日。
「王様、あの勇者が冒険者支援担当に回ったことで、新人冒険者の教育制度が一新されて若手の戦闘力がメキメキ上がっていったらしいですよ! 当人はもっと前線で活躍したかったらしいですが」
「己の進路選択までは効率的に動けなかったようじゃな」
王の悩みはまだ晴れそうにない。




