クエスト42【猛暑対策3】
ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。
その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。
「国王様、どうされましたか!」
そこに勇ましい足取りで、全身甲冑の騎士が姿を現す。
「おお、騎士団長か……実はな」
御前にて直立不動に立つ騎士団長に、王は己の抱えた苦悩を。
「そう言えば、全身甲冑に戻っておるな、なんじゃ暑くはないのかの?」
王は、シャツにズボンというだいぶ簡易な服装をしていた。
「何を言っているのですか国王様! 魔王の侵略が迫っている中、暑さで国防を疎かにするべきではありません! 何時いかなる時も、気を張っておらぬばなりません!」
「うむ、言う事だけは立派なんじゃがな」
「まぁ流石に従来の格好では暑すぎるので、見た目は変わっておりませんが、夏仕様にしてあります。関節部分は金属メッシュで風通しを良くしてありますし、装甲部位もハニカム構造で外気を遮断しております、材質も一部軽銀に変えましたのでこれで防御力は下がりましたが、大分動きやすくなりましたよ」
「準備の良い……そう言えば城の警備の兵士達はどうなっておるか? 流石に全員夏仕様には出来んじゃろ?」
「心頭滅却すれば燃え盛る業火も何とやら、気合で警備に当たらせております!」
「そこはスパルタなんじゃな、自分はこっそり夏仕様にしとるのに」
「まぁ最低限、胸当てとヘルメットくらいの装備で許していますけど、それでも皆大分参っているようでして、全員木陰でひしめき合っておりました」
「おお、暑さで警備がまともに機能しておらん、これこそ国防の危機ではあるまいか?」
その時、謁見の間の扉が勢いよく開かれた。
「やっぴー、国の一大事だと聞いてきたっス」
軽い口調で、袖も裾もスカートも短い格好の女性が、陽気なポーズで入ってきた。
「うむ、もう何か来る理由とかどうでもよくなってないかのう賢者よ」
「ソナ事無いヨー、あーしはオズっち(国王)が困ってるってー思ってレスる為に来たんよー」
「おお、ではこの暑さに参っている兵士達を救う方法があるという訳ですね、是非教えてください!」
「えっとねー、皆あーしみたいな恰好すると良いよー」
そう言って、賢者はやたらと短い袖や裾やスカートをヒラヒラとさせる。
「確かに涼しそうですが、防御力が心許なさそうです」
「いやいや、ピーちゃん(騎士団長)は勘違いしてるっスよ、あーしの格好は守りじゃなくて攻めっス、兵法にもあるっしょ、攻撃は最大の防御ナリンゲニン!」
「流石は賢者様です、まさか、防具で攻撃をするという発想はなかったです!」
「多分戦闘的な事じゃなく、精神とかファッション的な攻めの意だと思うんじゃが」
「そんでー、ピーちゃんはこれを着ると、もっと攻め攻めで最強になれるんよ」
「私にですか? 私は鎧を夏仕様にしているのでもう暑さには耐性が、え、何ですかコレ、紐と短い布……旗とかですか?」
「ピーちゃんに似合いそうな水着持ってきたんスよ、ねぇねぇ着て見てー」
「え、これ防具なんですか!? こんなの体のどこも守れてないじゃないですか! ってか布製じゃ防御力が足りませんよ!」
「いやいや、こいつぁ伝説の[ビキニアーマー]って奴っスよ。ほら見てみー、こんな見た目でも防御力激ヤバな事になってっからー」
「何と! 防御力65!? ちょっとした伝説の防具級!」
「ほらほら試しに着てみ? あっちの部屋誰も居ないからっさ」
「確かにこの防御力は魅力的ですね、ちょっと失礼します!」
「防御力があるなら見た目は重要じゃないんじゃな……」
騎士団長がごく迫の水着を持って部屋を出ていく。
待っている間、王は賢者に疑問を投げかけた。
「逆に何でその素材で、普通に鎧とか服とか作らんのじゃ?」
「オズっち分かってないねー、希少な素材を使ってっから布面積が小さいんじゃん!」
「逆に希少でそれだけしか素材が無いなら、防具にするの諦めた方が良いのでは」
「あー、安心して欲しいっス、ちゃんとオズっちの分も用意してあるよー」
「遠慮しておこう」
「もう布面積足りなさ過ぎて、すっごい角度のブーメランパンツが出来てっからー」
「じゃから履かんというに! そんな恰好でマントを羽織って人前に出た暁には、セルフ裸の王様になってしまうじゃろ!」
そうこうしている内に、着替え終わったらしく、謁見の間の扉を開き、騎士団長が姿を現す。
「これで私の防御力は大幅アップ! これでこの夏も戦えますよ!」
「おお……」
そう言って勢いよく姿を現したのは、全身甲冑のいつも通りの姿の騎士団長。
「あー駄目だよピーちゃん! 水着の上から鎧とか着たら!」
「おかげで中は快適です!」
あろう事か、騎士団長は水着の上に鎧を着るという、システムハックも甚だしい暴挙に出たのである。
「まぁ服の上から鎧を着たらいかん理由は無いからの」
後日。
「なんか賢者が次はもっと際どい奴でリベンジだーって言っていましたけど、どうかしたんでしょうか?」
「さぁ分からん、賢者なりの思惑があるんじゃろうか。所で他の兵士達は結局どうなったんじゃ?」
「なんか帰り際に賢者が、みんな頑張れっ頑張れっ、お国の為に精一杯頑張ってる人大好きーって励ましたら皆もう凄いやる気で」
「やっすい連中じゃのう」
王の悩みはまだ晴れそうにない。




