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クエスト40【猛暑対策】

 ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。

 その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。


「国王様、どうなされましたか!」


 そこに勇ましい足取りで、全身甲冑の騎士が姿を現す。


「おお、騎士団長か……実はな」


 御前にて直立不動で立つ、騎士団長に王は己の抱えた苦悩を漏らそうとした矢先、騎士団長がぐらりと揺れ、床に膝を着いた。


「おお、大丈夫か騎士団長よ!」

「っと、すみませんあまりの暑さに気が遠のいてしまって」

「確かに妙に暑いのう」


 そう現在王国は、未曽有の熱波に包まれていた。


「すみませんが兜を脱ぐ許可をいただけますか?」

「別に構わんが、そういや何でいつも完全武装何じゃ? 謁見の間くらい略式正装でも良かろうに」

「兜を被っていると、寝ぐせとか肌ケアとかサボってても、メイドとかに怒られなくて楽なんです」


 そう言いながら、騎士団長は兜を脱いだ。とたんに兜から滝のような汗が溢れる。


「あー、生き返るー」

「いっそ鎧も脱いできた方良いぞ?」

「そうさせて貰いますーあっつー」


 流石に我慢の限界か、騎士団長は鎧の隙間からザブザブと汗を零しながら部屋を出て行った。そういう王様も、マント等の装飾は取っ払い、半袖のシャツとズボンをまくり随分と威厳の無い格好をしていた。


「王様、お見苦しい所を御見せしました」


 そう言って、鎧を脱いだ略式正装に着替えた騎士団長が戻る。


「うむ、しかし魔道具で城の温度を管理しているとか言っておったはずじゃがどうなっておるのじゃ?」

「はい、何かあまりの暑さに魔力切れを起こしたらしいです。ヘイワーズ大臣が急ぎ魔導士組合に行って強化してくると出て行ってから帰ってきませんね」

「絶対あっちの魔道具で涼んでおるな」

「しかしこの暑さには国民も参っています、どうにか対策を立てないと!」

「ふむぅ、冒険者組合に標高の高い山から氷をとってきて貰うかのう」

「いやいや、王様こういう時こそ勇者の力を頼るべきでは!」

「いや、神から授かった力を涼を取りたいって理由で呼びつけるのもどうかと思うんじゃが」

「と、言う事で氷系の能力を持っていそうな勇者を着替えるついでに組合に問い合わせてみたんですが」

「おお、気が利くではないか、いやそっちにとっては死活問題じゃったな」

「生憎全員で払っているとかで」

「何じゃと!? 城に回す人員は1人も残っておらんのか!」

「能力者で民家を定期的に冷やして回っているそうなので、王城はもうちょっと待って欲しいとか」

「責任者を呼んで来るのじゃ!」


 その時、急に謁見の間がノックされる。


「おや誰か来たようですね」


 そう言って騎士団長が扉を開けると、見知らぬ女性が謁見の間に姿を現す。袖や裾やスカートは妙に短く、お腹や太ももを露出させた貴族服を着こなし、柔和な笑みを浮かべていた。


「ども、お邪魔するっス」

「ふむ、どちらさんじゃ?」


 その女性を見て、騎士団長は慌て始める。


「こ、国王様! この人は冒険者組合の支部長ですよ!」

「何と、見た目はなんか新米冒険者っぽいがの、結構偉い人なのか」

「しかも! 冒険者組合の上級職の中でも最難関とされる賢者の称号を初めて得た人物です」

「おお、肩書はなんか凄そうじゃの、それでその賢者とやらが何用かの?」

「え、あーだって責任者呼んで来いって言われた気がして。だからあーし来たんスよ」

「結構、賢者って偉くて忙しい地位じゃないんかの?」

「あー、あーし結構フッ軽なんスよ。ちょっ城って興味あってーそういやリニューアルした後来た事ねぇやって思ってー、来ちゃった♪」

「騎士団長よ、この来るところ間違えましたって感じの若そうな子が、ほんとに賢者なのか? もしや二人してワシを誑かそうと」

「んもう、疑り深いですねぇ、では彼女が賢者である証拠を御見せしましょう! 実は彼女はあらゆる問題を答える事が出来るのです!」

「ほほう、それは賢者っぽいが、とてもそうは見えんのう」

「では賢者よ、私の問いに答えてください」

「いーよー」


 賢者はさも何でもなさそうな表情で答えた。


「ではここに居られる、国王様ですが、隣国のジャーデン侯との関係は?」

「ダチ」

「いや……そりゃ親交はあるがのう」

「続いて、最近建て直した王城の建設費用は?」

「ヤバイ」

「そりゃやばいくらい高額じゃがのう」

「ここ最近魔王軍の進行が目立って来てますが、対策は?」

「パネェ」

「答えとらん!」

「木の枝に生ったリンゴが、熟すと地面に落ちるのは何故?」

「アガル」

「何が!?」


 直後騎士団長は驚くように身を震わせて。


「……凄いですよ国王様! 彼女に答えられない問題は無いのです!」

「前から思っておったが、お主の採点基準適当過ぎんか?」



 後日。


「なんか賢者から、これアゲルって大量の氷を貰ったんじゃが?」

「ああ、彼女一度見たら大抵の勇者のスキルはコピー出来るらしくて」

「流石賢者じゃ、ってかそこを最初に紹介せい!」


 王の悩みはまだ晴れそうにない。



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