クエスト39【裸の王様】
ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。
その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。
「国王様、怪しい商人が物凄く怪しい商品を売りに来ています!」
そこに全身甲冑の騎士が姿を現す。
「おお、騎士団長か。うん追い返せそんな怪しい奴」
「それがですね、商人は何と[バカには見えない服]を売っているとか」
「何と! ついに我が国にも……よし通すが良い」
「は、しばしお待ちを」
こうして王の前に、怪しい商人が連れて来られた。
商人は大きなローブを身に纏い、フードを被っている為姿は良く見えないいかにも怪しい風貌をしていた。
「この度はお招きいただき誠にありがとうございます」
怪しい商人は、王に向かって深々と頭を下げた。
「うむ、なんかこっちも緊張してきたのう……それでワシに売りたいという物があるそうじゃな?」
「これはこれは、既にご存じでしたか」
商人は怪しい笑みを浮かべると、積み荷を漁り始める。
その様子を見ながら、王は騎士団長に問う。
「ついに来たわけじゃが、どうする騎士団長よ、服が本物だとしたらワシにだけ見えてお主には見えないわけじゃが」
「んん? それは前提条件がおかしいですね。でも二人とも服が見えたらただ服を売りに来た商人って事になりますね」
「いや、最悪の場合二人とも見えない可能性もあるのう」
「そもそも馬鹿って何なんでしょうか、何の基準で判定されるんですか?」
「それは、あの商人に聞くしかあるまい」
そうこうしている内に、商人は目当ての商品を取り出して見せる。
「まずは取り出したるこのランプ!」
「「はずれかー!」」
二人は悔しそうに呟いた。
「えー……まだ商品の説明はしておりませんが」
「あ、いやこっちの話です」
「うむそうじゃ続けてくれい」
「……では、このランプは今よりはるか400年前に」
商品説明が続く中、王が騎士団長に尋ねる。
「騎士団長よ、[バカには見えない服]を売っているのではなかったのか?」
「国王様、目玉商品は後半に取っておくものですよ」
「目玉商品かなぁ?」
こそこそと話している内に、商人の商品説明が終わった。
「と、いう訳で如何でしょうか? この400年の歴史ある魔法の」
「あーそういうの良いから、次行ってくれるかのう」
「そうですね、早く次の商品を見せてください!」
二人の言葉に、商人は一瞬言葉を詰まらせ。
「あ、はい。次、次の商品ですか。あれ? えー……説明下手だったかな? このアイテムに興味持って貰えないとか初めてなんだけど……?」
何故かやや混乱した様子で、次の商品を準備し始める。
「次ですよ、次こそあの服が出てくる番です」
「ふむ、ここはいっそ話に乗って着てみるかのう、この日の為にワシ結構インナーマッスルを鍛えといたんじゃ」
「おっと筋肉の事でしたら私の方が凄いですよー、ここは先に私が試着を」
「ふん、そうやって着てみて見えますかーって上から鎧着てるから見えんわ! 何て突っ込みを誘うんじゃろ、そうは行かんぞ!」
等と二人がやりあっているうちに、次の商品の準備が出来たようだ。
「お待たせいたしましたー、どうも先ほどの商品はお気になさらなかったようで―、では続いての商品はこちら、なんとあの有名な伝説の剣でございます!」
「「またはずれかー!」」
「……え、ん? はず、れ?」
「いや気にせず商品説明を続けてくれるかの」
「ただの合いの手なので気にしないでください」
「はぁ、まぁなんかやり辛いけど。この剣ははるか昔にこの世を支配しようとした魔王を、時の勇者が」
商人の説明が続く中、二人はこそこそと話し始める。
「あれかの、一定の商品を買わないと出してこない奴かの? 試しになんか買ってみるか?」
「いや、一個売れたら、こういうのはバレる前にそそくさと帰る奴では? 目当ての商品が出てくるまで待つべきです」
「そういやさっきの、商品何だったかな? 値段を聞いておくべきじゃったな。もし相場の値段で売られたら、詐欺かどうか分からん」
「そもそも[バカには見えない服]の相場なんてあるんでしょうか?」
そうこう話しているうちに、商人の説明が終わる。
「如何でしょうか? この伝説の聖剣こそ、現在の魔王を唯一倒せるといっても過言では」
「あー、まぁ剣は間に合ってますね」
「そういや城建て直した時に新たに50本発注したのう、では次の商品に行くのじゃ」
「え、話聞いてました? 聖剣なんですけど……? え、最近ってこういう反応なの? それとも商品出す順番間違えた?」
困惑した様子で、商人は次のアイテムを探す。
「じゃ、次はこれ[天まで伸びる不思議な豆]」
「「はずれかー!」」
「もぅなんかここやり難い!」
後日。
「国王様、あの商人の品目を再確認したんですけど」
「ほう」
「なんか読み間違えていたみたいで、[バカ見えなくなる服]という姿を消す服だったみたいです」
「何と、いやだとするとあの怪しい商人は何だったんじゃ?」
「よくよく考えると普通に有用なアイテムを売っていただけでは……」
「まぁ無駄遣いせず節約したという事での」
王の悩みはまだ晴れそうにない。




