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クエスト37【勇者謁見3】

 ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。

 その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。


「国王様、大変でございます!」


 そこに勇ましい足取りで、全身甲冑の騎士が姿を現す。


「おお、何じゃ騎士団長いきなり藪から棒に」

「はい、それが……金貨偽造犯を捕らえたと報告がありまして」

「何と!? そんな重犯罪が我が国で起ころうとは……!」

「犯人が王へのお目通りを希望しておりますが如何しますか?」

「ふむ、何故そのような事をしでかしたのか気になるのう、連れてまいれ」

「は、しばしお待ちを」


 こうして王の前に、縄で捕縛された状態で犯罪者が連れて来られた。


「では、面を上げい」


 王に促されて、犯罪者は顔を上げた。


「ぼ、僕は勇者だ! こんなのは冤罪なんだ!」


 自らを勇者と名乗った犯罪者は、縛られた状態でわめき始めた。


「ふむ、もしお主が言う事が本当であれば、無罪としようが……じっさいどうなんじゃ騎士団長?」

「私は捕縛した兵士から引き継いで連れて来ただけですので、詳しくは……」

「詳しくは私が話しましょう!」


 謁見の間の扉が開いて、低身長種族の女性がつかつかと入ってきた。


「おお大臣か、確かに犯罪は大臣の担当じゃな」

「はい、この者は国境付近の商人三人に、贋金を金貨3万G相当を使用した疑いで捕縛されています。持ち物の金貨を調査した所、贋金と判別されました」


 そう言って大臣が証拠品として押収された贋金を差し出して見せる。


「見た目では本物にしか見えんのう」


 金貨は大陸で流通している帝国発行のG金貨そのものにしか見えなかった。

 犯罪者は呻くように言う。


「これが贋金のはずが無いんだ! 僕は教会に認められた勇者だぞ! 僕のスキルは金を生み出す能力なんだ!」

「ほう、金を生み出す、とはのう」

「だから僕が生み出した金貨は本物なんだ! 何故これが偽物って判断されるんだよ!」

「そうですね」


 言いながら、大臣は大きめな辞典を開く。


「えっと、これは帝国発行のG金貨330度版ですね、金の含有率は40%ほど。刻印された発行年度も一致しておりますが、この金貨は発行地域毎に文様が微妙に変えられています。時期によって含有率も少し変えられていますので、目利きの商人ならばちらっと見たり持っただけで、いつ何処の地域で発行された金貨かがわかるのです」

「ほう、そんなに細かく偽造防止がされておるのだな」

「そして、含有率、年度、刻印の違いでこれらが一致する金貨は実は存在しないのです。それなのにこの金貨は全部、同じ含有率、年度、刻印がされています。偽造されている証明なのです!」

「なんと、全部同じに見えてもそれぞれに細かい違いがあるのじゃな」

「まぁ両替商や銀行にのみ伝えられているさらに細かい判別方法もありますが、とにかく、スキルによる偽造とはいえ犯罪は犯罪です! 重罪には極刑を、死刑を判決します」

「待ってくれ! 悪気があったわけじゃないんだ! 本当にお金が無限に出てくるものだと……!」

「んんー、情状酌量の余地を与えてあげたい気持ちはありますが、お金を無数に生み出すとかインフレ直行の厄介な能力なので正直無罪放免にはしずらいですね」


 流石に騎士団長も困り顔だ。

 市場にお金が溢れ出ると、皆お金を別の価値のモノに交換し始めるので、相対的に物価が上昇し、お金の価値が下がるのである。


「そんな、王様! どうかお慈悲を!」

「うーむ、何故そのような能力を神に祈ったのじゃ……よほど強い願いでなければ、神からスキルは授からないものじゃが」

「え、何かお金が無限にあったら最強じゃんって思って」

「別に今後スキルを使わないのであれば無罪にしても良いが、無暗のその力を使うと今後より危険な犯罪者に命を狙われかねんぞ?」

「そんなっ!? せっかく授かったのに! この力で豪邸を買って女にモテてウハウハなハーレム生活が!?」

「何でこんな奴に神の加護が降りたんじゃろうなぁ……」

「単純に無限に金が取れる能力と考えても、攫われたり悪用したりはいくらでも考えられそうですしね」

「た、助けてください! もうこの国ではスキルは使いませんから!」

「いや他所で使う気満々なのじゃな……」

「王様、やはりこいつ牢にぶち込みましょう!」


 流石に騎士団長も致し方ないといった様子で告げる。


「そんあぁ、俺はまだこの能力で一度も豪遊をしてないのに……宝石や美術品を買いあさって、ハーレムもまだ……」

「陛下、こ奴はもう死刑にしましょう、こんな百害あって一利無しな者は居なくなった方がいい」


 あからさまに軽蔑の視線を大臣は向けた。


「いやいや、まぁアレだ。もうちょっとこやつの能力の使い道とかを考えてはやれんか?」


 助け舟を出した国王に犯罪者は縋るように懇願する。


「そうです国王様! 私をこの国専属の金貨偽造師として雇ってください! 些細な金貨の違いも勉強し、誰が見ても見抜けない贋金を作って見せます! 大陸中の富を独占する一大国家にのし上げてみせますのでどうか!」

「それすると周辺国と戦争になるんじゃ!」



 後日。


「国王様、確か魔王軍もこの帝国発行の金貨を使って居るんですよね、なんででしょう?」

「元々人間だった者も、多く編入されておるらしいからの、何処か裏ルートとやらで貿易や商売が成り立っておるのかもしれん」

「それではあの男を魔王城に向かわせれば、魔王城の経済は混乱し弱体化するのでは!?」

「どのみち処刑と変わらんのよなぁ」


 王の悩みはまだ晴れそうにない。


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