クエスト35【姫誘拐再び3】
ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。
その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。
「国王様、どうなされましたか!」
そこに勇ましい足取りで、全身甲冑の騎士が姿を現す。
「おお、騎士団長か……実はな、ジャーデン領の姫救出部隊が、全滅したとの報告があったのじゃ」
「何と! あの最強と名高い騎士団が……」
その報告に、騎士団長も恐れ戦く。
「それだけ今回は厳しいという事じゃ、やはり我らも力を」
「いえ、もはや周辺諸国にも協力を仰いで、連合軍を提案してはどうでしょうか? 遺跡の力を手にしたとすれば、周辺国も他人事ではないはずです」
「ううむ、その提案は確かにそうじゃが、しかしそうなると姫の救出が二の次になってしまいそうじゃの」
「むむむ、では連合軍と協力しつつ、こちらで特別救出部隊を組みますか?」
「そうじゃの、ジャーデン領と協力して連合軍と特殊救出部隊の人員選出を進めようかの」
「話は聞きました!」
そこに、威勢よく扉を開いて、低身長種族の女性が乗り込んできた。
「おお、大臣か、このタイミングで来たという事は……」
「はい、次なる魔道具をと思ったのですが。しかし今回の件を受けて勇者の研究が足りないことを痛感しました」
「うむ、皆同じ気持ちじゃ。気ばかりが焦ってもしょうがないであろう、ここは耐える場面じゃ」
「はい、という訳で実際に勇者を招いてスキルを研究したいと思います」
「お、おお研究熱心なのはいい事じゃ」
「という訳で冒険者組合から何人かモルモッ……勇者を連れてきました」
「……今実験動物って?」
「言ってません」
「王様! ヘイワーズ大臣の言う通りですよ、もうこうなったら勇者のスキルで一発逆転を狙う以外に道はありません!」
「まぁそうじゃな、とりあえず見てみるか」
「では連れてまいります」
そう言って珍しく大臣が選別した勇者達が数名連れて来られた。
「では[研究対象No.005]前へ、そして自身のスキル説明を」
「いやもう完全に実験動物を見る目をしている!?」
呼ばれて屈強そうな男が前に出る。
「私の能力は、身体硬化です。身体を堅くする事が出来ます」
「ほう、それは何かと便利そうじゃな」
「姫救出作戦が始動した暁には、最前線にて突入し、姫を発見したらその身を守る盾として八面六臂の活躍が期待できそうですね!」
盛り上がる二人を後目に、やれやれといった様子で大臣は答えた。
「いえ、そう便利な能力とは言えません。身体の強度が増す代わりに柔軟性、つまり移動力が下がってしまいます。最大硬化時では鋼鉄以上の強度を誇る代わりにまったく身動きが取れません。これでは盾ではなくただの彫像です」
「いやそこまでは言わんでも……」
「[研究対象No.005]には、今後各節部分に弛緩剤などを投与すれば、柔軟性が手に入るのか、あるいは脚部にキャスターを付けて、あるいはこのモルモットのスキルを鍛えれば」
「またモルモットって言った!」
「言ってません」
頑なに言動を否定して、大臣は次の勇者を指名した。
「次、[研究対象No.007]前へ、そして自身のスキルの説明を」
「おう、俺のスキルは武器の生成さ。最強無敵究極絶対の武器を生み出すことが出来るんだぜ!」
「おお、ではさっそくその、さいきょ……む、てき、武器を見せてください!」
「良いぜ! はっぁあああ! でろぉ俺の最強の武器!」
そう言って勇者が手をかざすとそこには、とても画面には映せない、名状し難き棒状の物が握られていた。
「な、なんと禍々しい!」
「そこはかとなく冒涜的で退廃的な不のオーラを感じるようじゃ、こう、閉められた扉を無理やりこじ開けて、金庫的な物を叩き壊す感じがするのう」
盛り上がる二人を後目に、大臣は冷たい視線を向ける。
「ただこれそれほど攻撃力が無いんですよ」
「え、そうなのですか?」
「ええ。[研究対象No.007]のスキルは、自身のイメージを攻撃力に投影する力と考えられます。つまり現時点では攻撃力の高いイメージが出来ていないという訳です。今手に持っているのは、何となく強そうな武器のイメージでしかありません」
「では実際に伝説の武器などを見せれば、それがイメージに投影されて強化されるという事ですか!? 凄いですよまだまだ成長する事の出来るスキルなんて!」
「とりあえず、ジャーデン領には以前の戦争時に使われた業物や名の知れた武器などが貯蔵してあったはずじゃ、そこに連れて行ってみるかのう?」
「いえ、実は事はそう簡単な話ではなく。当人がそれを脅威と感じるか、実際に痛みを受けたかもイメージにかかわってくるのです。つまりイメージを強化する為には実際にその武器に切られてみないといけないわけですね」
「名の知れた業物に切られたら、ただでは済みませんよ!」
「しかしイメージの強化には必要なのです。やってくれますね[研究対象No.007]?」
「……だ」
「?」
「……嫌だ、いやだいやだいやだ! 俺はスキルを強化してくれるからって協力したんだ! それなのに毎日閉じ込められて、怪しい薬や危ない実験に付き合わされて、挙句今度は剣で切られろ? 俺はここで帰らせて貰うぞ!!」
そう言って脱兎のごとく、勇者は逃げて行った。その様子を見送って大臣は冷静に処置を施す。
「[研究対象No.007]が逃走した、総員捕縛の準備を」
「やっぱりモルモットって言った!」
「言ってない」
大臣は静かに首を振った。
後日。
「国王様、例のいめーじを武器にするというスキルを解析した魔道具が完成したとの事です!」
「ほう、別の強力な武器をイメージできる者がそのスキルを使えるならば、だいぶ強力なスキルになりそうじゃのう、さっそく見せて貰おうかの」
「はい、これがその魔道具となっております」
そう言って騎士団長は、両手で持てる程度の筒状の道具を取り出して見せる。
「ここのスイッチを押すとですね」
ヴゥゥゥン……。と鈍い音がして、筒状の先から光を放つ刀身が生み出された。
「凄い! こんな武器見たことが無いですよ王様!」
「うーむしかし、やはり画面には映せそうにないのう……」
王の悩みはまだ晴れそうにない。




