クエスト34【姫誘拐再び2】
ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。
その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。
「国王様! 姫の救出作戦は進んでいるでしょうか!」
そこに勇ましい足取りで、全身甲冑の騎士が姿を現す。
「おお、騎士団長か、いや今回囚われたとされる場所は、敵の拠点でのう……」
「もしや、あの魔王の幹部が居るとされる難関ダンジョンですか!?」
「うむ、斥候を送ろうにもな、冒険者組合でもベテランを呼び戻している最中だとか」
「致し方ありません、今度こそ私が!」
「いや騎士団長であろうとも、あの最難関ダンジョンを単身で挑み、さらに魔王の幹部を相手にしては無事では済まんじゃろう」
「むぅ自身の力の無さが口惜しいです!」
「まして、敵は遺跡の力を持っておるのじゃ、ワシらも魔道具を用いた兵器を用意せねば……」
「王様、魔道具の力に頼る気持ちもわかります。しかし安易に力に頼り過ぎるのも考え物ではないでしょうか。その力が我々の手に負えなければ、逆にこちらに牙を向く事になるのでは?」
「うむ、事は慎重に、しかし迅速に行わなくてはの……」
「ご心配には及びません!」
そこに、待ってましたとばかりに低身長種族の女性が、勢いよく部屋の扉を開けて入ってきた。
「おお、大臣か心配には及ばんという事はついにか!」
「はい、新たなる脅威に対抗すべく、新しい魔道具を持って来ました!」
そう言って大臣は部屋にいくつかの道具を並べ始めた。
「今度はいったいどんな驚きの機能があるのでしょうか!」
「そう言われると、前回はただの観光ファッションアイテムじゃたからのう」
それぞれの表情を浮かべる二人に、大臣は自信満々に答えた。
「今回はさらにスキルを発展させたものをご用意してますので、ご安心ください!」
そう言って最初に、大きめな瓶を大臣は取り出して見せた。
「なかなか、大きい瓶ですね」
「見た目は不思議な瓶じゃが、どういった機能があるのじゃ?」
「はい、これは[水の沸く瓶]となっておりまして、その名の通り永遠に水が沸き続けるものとなっております!」
「確かに凄い魔道具じゃな!」
「なるほど! この瓶を使えば、敵陣営を水攻め出来るという訳ですね!」
「いや早まるでないぞ騎士団長よ、その作戦では姫まで水没させてしまうぞ」
「まぁ落ち着いてください二人とも」
魔道具の凄さに盛り上がる二人を諫め、大臣は改めて説明に入った。
「この瓶は、内蔵された魔道具の力で、周囲の水を吸収し内部に貯めこむ機能があります。その為に周囲に水分がある限り、水は溜まり続けるのです」
「それは凄いですね!」
「んん……? つまり、ほぼ無尽蔵に水は溜まるが、実はそれほど勢い良くは溜まらない?」
「そうですね、周囲の湿度に依存しますが、大体一時間で200ミリリットルも溜まるでしょう」
「こ、これは凄いですよ!?」
「いや、よく聞くんじゃ、一時間で200mlって、一日かけても2Lちょいしか溜まらんぞ!」
「この装置により、雨期の衣服の乾燥が画期的になります! 宝物庫や書庫の湿気取りにも最適でございます!」
「うむ、兵器じゃなくて便利器具じゃな!」
「いえ、雨期の湿気で汗が籠った鎧の厳しさを王様は知らないからそう言えるのです! これは様々な処で活躍しますよ!」
「だとしても兵器と呼ぶにはささやか過ぎる効果じゃろ!?」
「閣下は視野が狭ぅございますね。もっと多角的視野をもって事に当たらなければ」
「だとしたらお主はこれをどう使おうというのじゃ?」
逆に聞き返されて、大臣はしばし考えて。
「装置の術式を逆にしたら、[渇きの瓶]に出来ますね」
「まぁ量産の暁には農家とかに売ると良いぞ」
「まぁまぁ、続いての魔道具は凄いですよ」
そう言って筒状の魔道具を取り出して見せる。
「これは千里眼の勇者のスキルを解析し、正式には視覚の構造を解析し術式によりレンズ効果を再現した[望遠鏡]でございます」
「おお、千里眼のスキルを再現という事は、これでどこまでも見渡すことが出来るのですか!?」
「まぁ流石に神の権能ほどの距離は見えませんが、それでもかなりの距離が見えるはずです」
「王様これは画期的ですよ! 遠方から敵の様子が探れるのなら、姫の救出も楽になります!」
「まぁしかし建物の中とかは見えんのじゃな」
「そうですね、あくまで直接目視出来る遠方しか見る事は出来ません、あと光の屈折を利用しているので昼間しか使えませんね」
「何かこう、日常のちょっとした便利アイテムとかじゃなくて、一気に敵の軍勢を吹き飛ばすような、そんな威力の魔道具は無いのかのう?」
「そうですね、魔道具に秘められた魔力を強制的にオーバーロードさせて、一気に解き放てばかなりの威力を誇る爆弾として利用する事は出来ます」
「おお、なんと!? ちゃんと兵器転用が出来るんじゃな!」
「ただし、一番等級の低い魔石でも10万、これらの魔道具に使われているものはそこそこ良質な魔石を使用しておりますので、開発に50万Gほど掛かっております」
「うん。やめよう、兵器は良くないの」
後日。
「国王様! 魔道具[望遠鏡]を借りて周囲を探索していたのですが!」
「ほう騎士団長よ、それで成果はあったかの?」
「夜空を眺めた所、巨大な星とその周囲を取り巻くように小さい星が動いているのが観測できました。もしあの星が私達の大地と同じ構造だとしたら、もしかして教会が言っている天動説とは間違っているのではないかと」
「いやすげぇ発見かもしれんけど今はそれどころじゃないから!」
王の悩みはまだ晴れそうにない。




