クエスト33【姫誘拐事件再び】
ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。
その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。
「国王様、どうなされましたか!」
そこに勇ましい足取りで、全身甲冑の騎士が姿を現す。
「おお、騎士団長か……実はの」
直立不動で控える騎士団長に、王は苦悩を漏らす。
「クリス姫がまたも誘拐されたらしいのじゃ!」
「そんな、まさか!?」
あまりの出来事に、騎士団長も平常心を失う。
「あそこまで遺跡の力で強化した[鉄姫]を捕らえる敵が居るだなんて!?」
「まぁ驚くべきはそこじゃろうな」
そう以前誘拐された姫は、謎の遺跡の力を手に入れて、大幅にパワーアップして帰って来たのだ。
「しかしながら敵もただ黙ってみている訳ではなかったという事じゃのう、もしかしたら敵も遺跡の力を使っているのかもしれん」
「そんな、そうなったら我々の勝ち目はもう……」
珍しく絶望する騎士団長。そこに待ったをかける声が響いた。
「そんな事もあろうかと思いまして!」
唐突に部屋に入ってきたのは、身長が人よりも平均して低い種族の女性、大臣であった。
「おお大臣か」
「話は伺っております、そして何時しかこのような時が来るのではないかと言う予感もしておりました」
「どういう事ですか?」
「なるほどのう、流石は大臣じゃ、つまり今来たという事は何か解決策を持ってきたという訳じゃな?」
「ご明察、実は冒険者組合に魔道具を集めさせていたでしょう?」
「あーなんか城の装飾に使いたいと言っていましたね」
「実はそれはこのような事態を想定しての事だったのです、皆さんは魔道具とはどういう物かご存じでしょうか?」
「ええっと、ダンジョンとか魔物を倒すとたまに手に入る宝石の類でしたよね」
「その中でも魔力の籠っとるのを、魔石や魔宝玉等と呼んでいるのじゃな」
「はい、魔力とは純粋なエネルギーとも言えます。神の様な権能を用いれば、それこそ遍く人々の願いを叶えるといった御業も可能でしょうが、我々は単純な術式を組み込み、炎に変換したり、水に変えたりといった程度の使い方しかできません。そして魔力の籠った石に術式を組み込んだ道具を、魔道具と呼びます」
「アレですね、前に王様を感電させたやつとかですね」
「気が付けば城中に取りつけられとるなぁ、廊下とか暗くなったら勝手に明かりとか点くしのう」
「現在魔術師組合では、勇者達のスキルを解析し、魔石を用いてそのスキルを再現した魔道具を作る研究を行っております、今回はその成果の一部を持って来ました」
そう言って大臣はいくつかの道具を持ち込んだ。
「結構ありますねぇ!」
「そこまで研究が進んでおったとはな、ではさっそく紹介するのじゃ!」
「わかりました。今回は空を飛ぶスキルを持つ勇者の力を解析して、作り出された魔道具を紹介していきます」
そう言って取り出したのはちょっと大きめの旅行鞄であった。
「こちらは[浮かぶトランク]となっております」
「何と! この鞄を持つと空を飛べるようになるんですね!」
「いやいや、流石にそこまで凄くはないじゃろ、鞄の中に入ったら飛べるとかじゃろう」
「いえ、この鞄がちょっと浮くんです」
小柄な大臣に比べると、ほぼ同じサイズ感のある旅行鞄ではあるが、大臣の宣言通り、手に持った鞄はちょっと浮いていた。
「なんと! これならどれほど荷物を詰め込もうと持ち運びに便利ですね!」
「いやまぁ凄いんは凄いんじゃが、大本のスキルを解析して作られたのがそのくらい? という疑問は残ってしまうのう」
それぞれ感想を述べる二人に、大臣はやれやれといった様子で。
「落ち着いてくださいお二方。これはあくまで試作品、そこから発展させた魔道具も持ってきておりますよ」
そう言って次の道具を取り出して見せる。
「続いて[空飛ぶサンダル]でございます」
「おお、履物ですか! これを履いたら鳥の様に空を駆ける事が可能に!」
「いやしかしサンダルじゃぞ、どちらかと言うと空を歩くみたいな感じじゃないか?」
「なんとこのサンダルを履くとちょっと浮くんです」
「いや機能面の発展は無いんかい!」
「あーでも王様! 確かに2センチほど浮いてる気がします! これなら水たまりや沼とかちょっとした小川とかなら気にせず渡れますよ!」
「ええい、サンダルは元々そう言う所を気にせず渡れる履物じゃ!」
盛り上がる二人を後目に、大臣は次の魔道具を準備していた。
「お待たせしました。そしてこれが研究の成果なのです、その名も[空飛ぶ絨毯]!」
そう言って床にそこそこに大きい絨毯を広げて見せた。
「おおこれはまさか!」
「ワシも聞いた事があるぞ、かの有名なあの乗ったら空を自由に飛べるという」
「これに乗るとですね、ちょっと気持ちが浮つきます」
「もう気持ちの問題!?」
「あー確かに、こんな座り心地の良い絨毯に乗っちゃったら、ちょっと調子乗っちゃいますね!」
「いやスキルを解析して再現した魔道具と言う話はどこに行ったのじゃ!」
「まぁ王様、慌てないでください。確かにこれら一つ一つの機能はよろしくありません、ならば何故複数も用意したのか? そうこれらは効果を重複させることで真価を発揮するのです、ではピース騎士団長、これらをすべて身に着けてください」
そう言って大臣は、騎士団長に[浮かぶトランク][空飛ぶ靴][空飛ぶ絨毯]を装備させた。
「ど、どうじゃ騎士団長よ、空は飛べそうか?」
「お、王様、これは!?」
盛り上がる二人をよそに、大臣はクールな様子で。
「どうですか、ちょっと浮いた観光客っぽくなるでしょう?」
「いや浮くってそういう意味で!?」
後日。
「しかし大臣よ、何故一番にこの空を飛ぶスキルの研究したのじゃ?」
「それは勿論、我が城で一番火力の高い戦術は、竜に乗った騎士団長が敵上空から襲い掛かる事ですので、他の騎士も同様に飛ばせれば空中強襲部隊が出来上がるのではと」
「いや十分強力で草」
王の悩みはまだ晴れそうにない。




