クエスト31【墓場の幽霊騒動3】
ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。
その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。
「国王様、どうなされましたか!」
そこに勇ましい足取りで、全身甲冑の騎士が姿を現す。
「おお、騎士団長か……結局墓場の件は解決しておらんでのう」
「申し訳ありません、相手は手強く、専門家の力をもってしても解決に至らなかったのは遺憾の極みでございます」
「む、うむ。何かあんまり真面目に取り込んでいる感じはしなかったがのう」
「それでは、今回も専門家の力を借りましょう!」
「ううむ、ちょっと可愛そうなのでそろそろ呼びつけるのを控えた方が良いのでは」
「何を言ってるんですか! 専門家の力が無ければ、我々は幽霊の姿すら見る事は叶わないんですよ!」
「そう言えば二度ほど墓場には行ったみたいじゃが、結局怪しい現象には会わんかったようじゃしの」
「と、いう訳で連れてきます! しばしお待ちを!」
「あ、止める間もなく行ってしもうた……そろそろ城に来るのすら拒否られそうじゃが」
騎士団長が部屋を出て行って、しばらくの時間が流れた。
そして勢いよく扉が開き、騎士団長が戻ってくる。誰も引き連れず、なぜか長いロープを手にしていた。
「国王様! お時間を取らせても仕分けありません!」
「ほう、彼女は連れて来れんかったようじゃの」
「いえ、それが」
そう言って騎士団長は手に握るロープを引っ張る。すると廊下の先から。
「ガルルルルルル! シャー! フッシュルルルル!」
獣の威嚇音の様な音が響く。
「専門家が野生に帰ってしまっていて」
「野生に帰る専門家ってなんぞ!?」
「ほーら怖くないよこっち来なさい」
騎士団長がロープを引っ張ると、やがて繋がれた修道女が姿を現す。
「んもう! いい加減にしてくださいぃ! せめて呼びつけるならぁ教会を通して正式に依頼してくださいぃ! あんな窓から飛び込んで、華麗に攫うみたいなテクニカルムネキュンシチュで連れてくるのはぁ止めてくださいぃ!」
「私と貴女の仲ではないですか!」
「私は貴女の事が嫌いですぅ!」
「それはさておき、墓場の幽霊の件ですが」
「んもう! 堪えねぇですねこの人ぉ。でもまぁ分かりましたぁ霊の幽霊騒動はまだ解決していないんですねぇ、私はまだ墓場に行った事が無いので詳細は分かりませんけどぉ」
「んん? 確か2回程二人で向かったと?」
「王様、彼女記憶が……」
「おお……」
「行った事はありませんがぁ!」
修道女は、自らのトラウマを払拭するかのように声を荒げた。
「まずはぁ幽霊の正体を調べる事にしますぅ、教会から聖属性弱点の魔物の一覧を持って来ましたのでぇ相手の正体を探りますぅ、決して夜の墓場に行きたくないからじゃないですよ!」
そう言って年季の入った本を取り出して見せた。
「へぇ幽霊にも色んな種類があるんですね!」
「はいぃ、まずは死霊ですねぇ、一般的にぃダンジョンとかのぉ魔力が濃ゆーい所で死んでしまうとぉ、魂が魔物化してしまうんですねぇ。生者に取りつき殺そうとしてきますぅ、もう説明だけで足が震えてきますぅ」
「武者震いですね、流石専門家です!」
「ちげぇますぅ! 続いてぇ、地縛霊ですねぇ。これは土地に深く結び付いた怨霊ですぅ。古城とかぁ廃村等で現れるとかぁ、もぅ怖!」
「そう言えば、この城にもかつて無念の死を遂げた王族の怨嗟の声が聞こえてくるという廊下が」
「ぴゅえええええええぇ!?」
「いやいやいや、うちの家系にそんな死に方した奴居らんぞ。ってかこの城建て直したばかりじゃしな!」
「はぁっ……他にはバンシー。死を予言すると言われる存在でぇ、姿を見た人はぁ三日以内に、し、死んでしまうとぉ」
「正体はぁ、お前だぁぁぁ!」
「はぅっ……(失神)」
「騎士団長よ、いちいちい茶々を入れるでない、話が進まんぞ」
「申し訳ありません、彼女の反応が面白くてつい」
気を失った修道女に、騎士団長は気付けを行い蘇生させる。
「あ、はぁ一体何がぁ? あ、続きですかぁ、後は実態を持つタイプだとぉ、食人鬼とかがありますぅ、骸骨と言うのもいますがぁ、この辺はもうただの魔物ですねぇ物理的に倒せばOKですぅ」
「ああ、その辺なら地下墓地とかで大量に出てきますね、何度か倒したことがあります」
「最後にぃ高位の存在としてぇ死霊術師」
「それは倒した事がありませんね」
「存在自体が稀ですのでぇ、古代の魔法、禁術の類ですねぇ……恐らく魔王軍の配下にはいると思われますぅ」
「なるほど、いずれ戦う敵という訳ですね」
「こちらもぉ同様ですね、不死魔術師と呼ばれる、魔法の力で不死となった存在ですぅ、魔王軍の配下に居そうな存在ですねぇ」
「強敵という訳ですか!」
「そして不死者の貴族、吸血鬼ですぅ。こちらはぁ昔から存在自体は噂されていますがぁ、基本教会の十字架が弱点なんでぇ、私達の敵じゃぁないですよぉ、まぁ会った事無いですけどぉ」
「頼もしい! ここまで知識があればもう負けはしませんね! さぁ準備は万全です、行きましょう!」
「だぁかぁらぁ! なんで私が行かないといけないんですかぁ! もうこれ以上服を濡らすとぁ着替えが無くなるんですぅ!」
「私の鎧貸しますから!」
「いや服ぅ、せめて服を貸してくださいぃ! いや貸されても行きませんけどもぉ!」
そう言い放って、修道女は獣の如き身のこなしで騎士団長の手を掻い潜り、部屋から逃げ去った。
「そうは行きませんよ、私から逃げられると思うなら大間違いです! 上手く回り込んで墓場まで追い込んで見せます!」
その後を、狩人の目をした騎士団長が追いかけて行った。
「……教会に修道服でも寄付しておくかのう」
後日。
「国王様! ただいま戻りました!」
「で、結局墓場には向かったのかのう?」
「巡回の騎士を動員して行く手を阻み、見事墓場まで追い詰める事に成功しました、共同墓地の最奥までは追いついたのですが、極限状態に陥った彼女は眠れる聖少女の力と獣の野生を融合させ、聖獣モードを発動させたのでやむなく撤退を」
「いやすんごい事になっておる!?」
「数時間も一人墓場に隠れ続けた結果、彼女は発狂の果てにそういった妄想を信じる事で己の心を守ったようです」
「そうか、いやそれはそれですっごい事になっておる!?」
王の悩みはまだ晴れそうにない。




