クエスト30【墓場の幽霊騒動2】
ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。
その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。
「国王様、どうなされましたか!」
そこに勇ましい足取りで、全身甲冑の騎士が姿を現す。
「おお、騎士団長か……例の墓地の幽霊の件じゃ」
「前回夜に一通り見回ってきましたけど、おかしな所はありませんでした」
「しかしその後、住民からまだ幽霊が居るようだと報告があってな」
「なるほど、分かりました! ではさっそく専門家を連れてきます!」
「うむ、ん? 専門家とな?」
「しばしお待ちを!」
そう言って騎士団長は颯爽と部屋を出て行った。
しばらくして、何かを引きずる音を立てながら、騎士団長は1人の少女を連れて部屋へと戻ってきた。
少女は修道女の格好をしたシスターで、先日幽霊の件で連れて来られたセーフ教会の支部長代理であった。
「国王様! 幽霊退治の専門家、連れてまいりました!」
「へ、えぇ? 何なんですかぁ何何なんですかぁ? 私ぃ今日非番だったんですどぉ、お部屋でぇゆっくり二度寝ぶちかまして気持ちゆったりフワフワタイム何ですけどぉ! 幽霊の専門家って何ですかぁ!? 何時そんなん就任したんですかぁ? クソ迷惑なんですけどぉ!」
「なんが多いのう」
「教会の神父に、除霊の得意な人居ますかって聞いたら、彼女の部屋を紹介されました」
「あっんのクソ神父がぁぁぁ! 可愛い愛弟子売りやがってぇ! 次会ったら笑える感じにぶん殴ってやるぅ!」
床をダンダンと踏みしめて、修道女が叫んだ。
「ハァッハァッハァッ……私が連れて来られた理由はぁ、何となくわかりましたぁ、同時にぃこの事件を解決しないとぉ私の安息の日々もグッバイララバイなのもぉ分かった気がしますぅ」
覚悟を決めて修道女は王へと向き直った。
「国王様ぁ、改めてぇ今回のお仕事ぉ、私が対応いたしますぅ。あと任務を終えた暁にはぁ教会の神父の首を刎ね飛ばして貰いたくてぇ」
「お、おおぅ……まぁ善処しよう」
「と、いう訳でさっそく二人でまた墓地へ行こうと!」
「ちょっとちょっとぉ、待ってくださいぃ」
また引きずられそうな所を、寸前の所で修道女は踏みとどまった。
「どうしましたか? さっさと墓場を聖少女の不思議なぱわーとやらで焼き尽くしましょう」
「あのクソ神父にどんな事を吹き込まれたんですかぁ、実はこういう事になるだろうとぉ、教会秘蔵の除霊グッツ、持って来ているんですよぉ」
「ほう、流石は専門家じゃのう」
「なるほど、それが神父の言っていた聖少女びーむって事ですか!」
「クソ神父の言った事は一旦忘れてくださいぃ」
「そ、それで除霊グッツというのは何じゃの?」
「はい、えーっとぉ。まずは定番のコレですぅ! 我が教会の聖なるシンボルの十字架ぁ」
修道女は、銀製の十字架を取り出した。
「これを持っていればぁ、邪悪な悪霊もぉ呪いもぉ無効化出来ますぅ」
「ほう、幽霊退治には必須なアイテムじゃな」
「デザインも流行の彫刻が施されてぇ、銀製なのでおしゃれアイテムや普段の礼拝にもそのまま持って行けますぅ、冠婚葬祭に便利ですぅ、お値段6000G!」
「しっかり値段付いとる……」
「いえ、ちょっと待ってください、これ純銀製じゃないですね、このサイズにしては重さが」
「続いてのぉアイテムはぁ!」
騎士団長が十字架を手に首を傾げてい居るのを遮って、次のアイテムの紹介に入る。
「我が教会が精製し祝福を施した、清めのお塩ですぅ! 不浄の地に撒いても良し、幽霊に直接ぶっかけてもOK、自身に振りかけて清めても良いしぃ、玄関先に盛り塩しても効果あり、あとお料理の味付けにも使えるぅ優れものぉ、お値段キロ10000G!」
「そんなに使い切らんわい」
「では、それを大量に水に溶かして体内に取り込めば、幽霊も怖くないってことですね!」
「幽霊は怖くないでしょうけどぉ、塩分過多でぇ後の病気とかが怖いと思いますぅ」
「あ、ほら、レモン汁とこの塩で作った溶液にさっきの十字架をつけると、メッキが剝がれて地金が」
「ダアァァァ! そして次のアイテムはぁ! エールを蒸留して作った除霊スプレー! 吹きかければたちまち悪霊退散! さらにちょっと良い香りがするので、臭いが気になる所に掛けると消臭効果も期待できますぅ! お値段、12個セットで24000G!」
「単品販売はしとらんのかのう?」
「現状はぁセット販売のみのお取り扱いとなりますぅ」
「あ、これ吹きかけてさっきの十字架擦ると完全にメッキが剥がれますよ」
「んもう! 十字架はもう良いじゃないですかぁ! ごめんなさいぃ、錫製ですぅ! でもこっちの方が抗菌作用が高いので実用的なんですぅ!」
「しかしどうにも、除霊には決定打に欠けますね」
「えぇ、信じられません、教会秘匿の除霊グッツをここまで大放出したのにぃ、何が不満なんですかぁ!」
「やっぱりほら、あれじゃないですか? 専門家ならもっとこう一発で周囲一帯の幽霊がパーッと消え去る秘奥義みたいな!」
「仕方ありませんねぇ、今回はぁここまで御見せするつもりはなかったんですがぁ、神父様には持ち出し厳禁と言われていましたがぁ、ついに教会の秘蔵の品を出す時が来たようですぅ」
そう言って修道女が自信満々に取り出して見せたのは、短い杖だった。
「ふむ、それは何じゃ?」
「これはですね、神の力が込められた神器と呼ばれる法具ですぅ、特定の呪文と舞を行う事で、封じ込められた神の力が発動し、周囲の悪しきモノドモを葬り去るのですぅ」
「おお、それは素晴らしいですね! さっそく使って見せてください!」
「まぁ本来は無暗に使う物じゃないんですけどぉ、特別ですよぉ!」
そう言って修道女は杖を手に、軽やかに舞いながら呪文を唱える。
「ほーりーしゃいにんぐどれすちぇーんじ!」
すると杖が光ったと思うと、光は少女を包み込み、瞬く間に少女の姿を戦場に舞う踊り子、いや光の聖少女戦士、はたまた可憐なドレスに身を包む戦うプリンセスの如き、フリフリと甲冑を織り交ぜた様な華やかな格好に変えた。
杖からは彼女の声で[聖少女ビーム]という音声も流れる。
「はわ、はわわわわぁ!?」
修道女(元)改め、聖少女戦士はいきなり変わった己の格好に、最初は戸惑い、そして気恥ずかしさに真っ赤になって、座り込んだ。
「流石教会秘蔵の法具ですね! これが噂の聖少女びーむとやらですか!」
「あんのクソ神父ぅ! パチこきやがってぇ! なぁにぃがピンチの時はこのボタンをおせだぁ! 今度会ったら顔面愉快な形になるまでぶん殴ってやるぅ!」
「さぁこれで準備万端ですね! ではさっそく除霊へと向かいましょう!」
「嫌ぁ! 連れて行かないでぇ! 引き摺らないでぇ! ってか力強っ!? こんな格好でお外出たくないぃ! せめて、せめて着替えさせてくださいぃ! こんな格好ならまだ全裸の方がマシですぅ!!」
悲痛な叫び声を残して、彼女は部屋の外へと連れていかれた。
「まぁ子供達には人気でそうじゃな」
後日。
「国王様! ただいま戻りました!」
「ほう、あまり期待はしておらんがどうであった?」
「それが、やはり聖少女フォームでの夜の墓場デビューは緊張している様子だったので、緊張をほぐす為に後ろから急に大声で脅かしてみたら、体中の穴から体液を噴き出して倒れてしまって」
「お前それ絶対にやったらいかん奴!」
王の悩みはまだ晴れそうにない。




