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クエスト03【ドラゴン討伐3】

 ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。

 普段は静寂に包まれ、国王の苦悩の声が響くばかり王宮であったが、本日は珍しくも活気溢れる声が響いていた。

 王宮内の訓練場にて、多数の兵士が訓練用の人形に剣を振るい、的に向かって矢を放つ。

その様子を、国王ブージ三世は高台から満足そうに眺めていた。


「国王様、ここに居られましたか!」


 そこに全身甲冑の騎士が姿を現す。


「おお、騎士団長か……間もなく出立か?」

「はい、その前に王にご挨拶をと」


 そう言って騎士団長は深く頭を下げる。


「雇った斥候の報告によりますと、竜は餌を狩りに飛び去った後、森の巣へと帰還した模様との事です、しばらくは休眠に入るでしょう、攻め込むならば今が機です」

「先だって城を出た騎士団はどうか?」

「無事に森の手前に布陣を敷いております、必ずや竜を誘き寄せ決着をつけて見せます」


 そう、オイヘンブージ王国は、ついに隣の森に巣くう竜を退治する為に全軍で事に当たる決意を決めたのであった。


「ふむ、竜が飛び去り直接城へと攻めてきた時に備え、城着きの兵にも迎撃の備えを施しておる。こちらの事は気にせず十分にドラゴンに挑むが良いぞ」

「お心遣い感謝いたします、しかし……不安ではあります」


 騎士団長が珍しく弱音を吐く。


「ほほう、お主も流石にドラゴン相手には怖気づくか」

「いえドラゴンなど一度は下した相手、恐れるに足りません」


 騎士団長は自信満々に告げる。


「心配なのは城の精鋭全員を駆り出したことによって城の警備が手薄になる事にございます」

「なにも城が空っぽになる訳でもあるまい……この際多少コソ泥が入るくらいは捨て置けばよいのだ」

「いえいえ、そもそもこの城に盗賊が狙うような財宝も無いでしょう、心配なのは王の警備の事でございます、せめて近衛騎士数名だけでも残して」

「それはならん、近衛はお主に次いでの腕利きじゃ、温存して竜を取り逃しては本末転倒、良いかこの作戦はわが国総力を挙げてあたるべきなのじゃ」

「了解いたしました、王のご意志は固いようですね……」


 肩を落とし、意気消沈する騎士団長、とその様子もつかの間。


「……っとこんな事もあろうかと! 王の護衛に最適な勇者を連れてきております!」

「じゃから気にせんでいいというに、まぁ護衛をつければお主が安心するのであればよいわ、さっそく連れてまいれ」

「は、しばしお待ちを」


 場所は変わっていつもの王座の間。

 王の前に二人の若者が連れてこられた。


「さて、出立の時間が迫っておりますのでさっそく貴様から、その脅威のスキルを王に語って聞かせよ!」


 少し急いで、騎士団長が一人を指名する。


「私のスキルは、四十人の配下を呼び出す事が出来ます!」

「どうですか王よ! この者1人で四十人分の護衛が賄えるのですよ!」

「おお、確かに護衛向きではあるの、どんな物か見てみたいが、今配下を呼び出す事は可能か?」


 王の言葉に、勇者は気難しそうに答えた。


「呼び出せますが、あまり推奨は出来ません。呼び出したが最後四十人が一斉に好き勝手暴れだすので」

「制御出来んのかい!」

「しかし王よ、侵入者相手ならば意表をついて不意打ちが可能ですよ、それも一気に四十人も出てくるのですから大混乱です!」

「いや混乱し過ぎて誰が侵入者かとかも分からんくなるわ」


 むしろ厄介事が増えたまである。


「もちろん呼ぶ際はお声掛けしますので、王には安全なところまで避難を」

「わしも攻撃対象に入るんか、なら護衛の意味無っ!?」

「この者が居れば安心して城を空けられそうです!」

「騎士団長よ話聞いていたか? こいつの呼んだ手下にワシ討たれる危険性があるんじゃが……さては騎士団長、スキル持ち手あたり次第城に招いては居るまいな?」

「ば、な……そ、そんなわけないじゃないですか失礼な、じゃぁ急いでいるので次、その脅威のスキルを王に語って聞かせよ!」


 次の勇者が指名される。


「私のスキルはウィークポイント、対象の弱点や苦手とする場所に×印をつけることが出来るのです」

「どうですか王よ! この力により賊の侵入経路や警備の手薄な処が事前にわかるのですよ、これで城は安心安全!!」

「警備……に向いてる能力かの……?」


 王は首を傾げ訝しみ、そして騎士団長を指さす。


「試しに騎士団長のウィークポイントを印してみてくれはすまいか?」

「おやおや王様? この完全無欠の私の弱点を探そうだなんて! それでは能力の証明になりませんよ?」

「わかりました、では手に触れてもよろしいでしょうか? 私の能力は対象の一部に触れる必要がありますので」


 そう言って勇者が騎士団長の手に触れる。

 すると、騎士団長の頭の、フルフェイス兜に大きく×印が描かれた。


「なるほどー、いかな生き物とて頭は弱点ですからね、これは一本取られましたなー!」

「なるほどのう、確かにお主の能力は見事に相手の弱点を暴くらしい!」

「是非ともお役立てください」


 盛り上がる王と勇者を後目に、騎士団長はふと思い出したかのように。


「そういえば、対象の一部に触れる必要があると言っていましたが、それは体から離れた一部にも適用されますか?」

「あ、はい髪の毛や爪など体から離れた一部でも可能です」

「ではこれで試しては貰えませんか」


 そう言って騎士団長はペンダント状に首から下げていた鉱物の様な物を差し出す。


「それは何じゃ?」


 王の質問に、騎士団長は恭しく答える。


「これは先に戦ったドラゴンの鱗にございます」


 戦いの最中に切り落とした鱗の一つを、騎士団長は記念に持っていた。


「なるほどのう、これで事前に奴の弱点が分かれば戦いを有利に進められるという物か、試してくれ」

「わかりました、お借りしますね」


 そう言って勇者が鱗を手にすると、部屋の隅に捏ねてある物資に大きく×印が現れる。


「あれは何かの?」

「あれは……陣地に持っていく私の荷物ですね」


 そう言って騎士団長が物資に向かう。


「×印は、前線の兵への差し入れの果実酒の樽に描かれています」

「ふむ、そういえば聞いた事があるの、竜の一種には酒や若い女性を好み生贄を捧げて祭らう地域もあるとか、なるほどあの竜の弱点というか好物と言うわけか」

「!? 王様、閃きましたよ。このお酒と若い女性を囮に誘き寄せれば、竜を罠にかけることが可能なのでは!!」

「ほう、お主にしてはなかなかの案だが……」

「さらに竜を酔わせた所で、四十人の配下を呼び出して貰えば、竜に大打撃を与えられるのではっ!?」

「なかなかに妙案じゃが、酒はよいとして若い女性はどうする? こんな危険な作戦に国民は使えぬぞ」

「仕方ありませんね」


 そう言って、騎士団長は兜に手をかけ脱ぎ放つ、するとさらりと金色の長髪が零れ落ち、凛とした顔立ちの美人が姿を現した。


「この[黙っていれば城一番の美女]である私が生贄役をやるしかありません!」


 騎士団長は妙にうれしげに語った。


「この作戦駄目かもしれん……」



後日。


「騎士団長が負傷したというのは誠か!?」


 珍しく慌てた様子で、王が城門へと急ぐ。火急報告に来た伝令兵の話によると、竜の討伐に失敗した事と、騎士団長が負傷したという。


「騎士団長よ、無事か!?」


 帰還した兵たちの元に王が駆け付けると、そこには包帯で体を覆う騎士団長の姿があった。


「王様! わざわざ出迎えて頂かなくてもこちらから向かいましたのに」

「負傷したと聞いて心配したのじゃが……案外元気そうじゃの」

「ご安心を、不意を突かれて火にやられただけにございます、アルコールに運悪く引火しまして」

「やはり一筋縄ではいかんかったか」

「いいえ後もう一歩ですね、少なくとも飲み比べでは私が勝っておりました!」

「なんか仲良くなってない?」


 王の悩みはまだ晴れそうにない。


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