クエスト28【初級ダンジョン4】
ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。
その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。
「そこに居たか!」
そこに勇ましい足取りで、全身甲冑の騎士が姿を現す。
「おお、騎士団長か……実はな」
「覚悟ぉ!」
部屋に入るなり、騎士団長は国王に向かって剣を振りかぶった。
「何じゃとっ!? 落ち着くんじゃ騎士団長よ!」
その時、新たに部屋に入る人影があった。
「何じゃ!? 何で騎士団長とワシが戦っておるのじゃ!?」
もう一人の国王が部屋に現れた。
「くっ! 合流されてしまったか!」
しまったとばかりの表情で、騎士団長は剣を引いた。
「一体どういう事じゃ? 何故ワシが二人もおるんじゃ?」「もしや例の変身の勇者がワシに化けておるのかの?」
もう一人の王も、同じ口調でしゃべる。
「こうなっては仕方ありません、王に知られる前に仕留めたかったのですが」
「いやお主、今本人を手に掛けようとしとったぞ」「まずは当人か確認をしっかりとじゃの」
「実は、洞窟に現れた強い魔物の正体が、冒険者の聞き取りで分かったのです」
「何と!」「その正体とはいったい?」
「その魔物は、変身の能力を持つそうです。この前城にて私の偽物に扮したのもその魔物の様なのです」
「では……」「こ奴が」
二人の王は互いを指さし。
「「ワシに化けた魔物という事かの!」」
「ああ、どっちが本物かわからない!」
珍しく騎士団長が頭を抱えた。
「こうなってはもう両方とも殺すしか!」
「いやいやまだ判別する方法はあるじゃろ!」「諦めるではないぞ!」
「ああもう同時に喋らないでください!」
珍しく切羽詰まった様子で、騎士団長が声を上げる。
「私が、王を……この王国一忠臣であるこの私が、いや私だからこそ、自らの手で王を!」
「「いや殺す覚悟より、本物を見分ける覚悟を決めい!」」
改めて騎士団長は、二人の王を見比べた。
「見た目は全く同じですね……王から感じるオーラも、魔力量も、ZONEも同じですね」
「普段ワシそんな色んな気配放っとるのか」「それだけ気配を感じ取っても見分けられんのか」
「恐らくは変身能力を持つ魔物、シェイプシフターと呼ばれるタイプは、対象の思考を読み取って姿形だけではなく、言動や記憶も模倣すると言います。対処するには変身対象から引きはがして個別に尋問をするべきでしょうが、本物を尋問している間に逃げられる可能性もあります」
「ふむ」「ならばどちらかが偽物であるこの状況が一番の好機じゃのう」
「という訳で! 王には偽物討伐の手伝いをしていただきます!」
「むぅ」「この際致し方あるまい」
「と、いう訳で第一回王の偽物はどっち! 〇×電流クイズ!」
「「〇×電流クイズ!?」」
タイトルコールを叫びつつ、騎士団長は両方の王の手に電極を取り付け始める。
「今から二人の王様に〇×クイズを答えて貰います。間違った場合、まぁまぁ痛い電流が流れます、しかしこれも偽物をあぶりだす為と思ってご容赦を」
「いや待て騎士団長よ」「何故電流を流す必要が?」
戸惑う王二人を後目に、騎士団長は意気揚々と準備を終えた。
「それではまず、第1問! 今日の王の昼食のデザートのプリンですが、今何処に有るでしょうか?」
「「いや分かるか!」」
「ざんねーん、正解はもうすでに私のお腹の中でしたー、という訳で魔道具のスイッチをポチ―」
「あああああああああ!」「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!」
二人の王が悶絶して転げまわる。
「いや電流痛い!」「まず〇×で答えられる質問をせい!」
「それでは第2問!」
「「話を聞けぇぇぇい‼」」
「この王城の南には、海を挟んだ対岸に魔王城が聳えていますが、その海は出た船は戻らないという暗黒海と呼ばれています、どうやって魔王城に行くのでしょうか?」
「「いやワシが知りたいわい!」」
「ポチ―」
「だあぁぁぁぁぁ!」「あっっっっっ!?」
二人の王がのたうち回る。
「では第三問!」
「よいか聞け魔物よ! あ奴はこの機にワシらを葬るつもりじゃ!」「ここは互いに手を取り合って生存することが大事じゃ!」
「この王城でクイズ大会は結構やってきましたね、過去のクイズ大会と合わせて今何問目でしょう?」
「「お主も答えを知らん問題を出すでない!」」
ボタンは無慈悲に押される。
「「ああああああああああああ!」」
ちょっと煙を上げて二人の王が床に倒れ伏した。
「うーんこれでは埒があきませんね」
「くっ、今気づいたがこの電極のボタン一つしかないぞ」「うむぅ、どう答えても電流が流れる仕組みじゃ……」
「気づきましたか、こうして電流で弱らせれば逃げる力も無いでしょう、後は両方とも一思いに始末すれば、魔物は倒せるという寸法です」
剣を抜き放って、騎士団長は王へと歩み寄る。
「ぐぅ、何という事じゃ……こんな魔王の侵略が迫るという中で、側近に命を奪われるとは、近隣にどんな噂を流される事か、先王への申し訳も立たん。何より世継ぎも居ないこの国の行く末は暗礁じゃ……そう言えば、昼食のデザートは騎士団長の腹の中じゃと、プリンは無いのか……なんと!」「ぐ、グァァァGYUGAAAAAAAA!」
王が苦悩を吐露している最中に、もう一人の王が苦しみ始める。
そしてその姿は不定形となり、ドロドロに溶けかけると、そのまま素早く廊下へと逃げて行った。
「……あっちが魔物でしたか」
「何じゃ、唐突に苦しみだして?」
「シェイプシフターは一種のテレパシーで相手の思考を受信して、会話などを合わせると聞きます。恐らく王の放った呪詛にも近い苦悩の念を魔物が受け取れ切れずパンクしたのではないでしょうか」
「それ聞くとワシの方が化け物みたく聞こえるんじゃが……」
後日。
「王様、逃げ出した魔物を追いかけてきました!」
「おお、どうじゃ止めはさせたのか?」
「また性懲りもなく私に化けて、うちの子に近づいたようなのですが、ドラゴンが何時もの用にじゃれ付いた所、朽ち果てておりました」
「いや普段どんなじゃれあい方をしとるんじゃ……」
王の悩みはまだ晴れそうにない。




