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クエスト26【初級ダンジョン2】

 ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。

 その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。


「国王様、どうなされましたか!」


 そこに勇ましい足取りで、全身甲冑の騎士が姿を現す。


「おお、騎士団長か……実はな」

「国王様、どうなされましたか!」


 そこに勇ましい足取りで、全身甲冑の騎士がもう一人姿を現す。


「二人目!? どういう事じゃ!?」


 王の前に、二人の騎士甲冑姿の騎士が立つ。


「ふふふ、驚きましたか」


 片方の騎士団長が答える。


「実は今回、先に勇者を紹介しようと思いましてね」


 もう片方も続いて答える。


「今回の勇者のスキルはなんと変身!」「対象とまったく同じ姿! そして声に変身する事が出来るのです!」

「な、なるほど。ではどちらかが騎士団長に変身した勇者という訳か、凄いのうまったく見分けがつかん」


 まったく同じ姿勢、同じ声で話す二人の騎士団長に、王は感心する。


「しかもそれだけではありません、体重や体臭もですが」「その者の戦闘力やスキル、さらには記憶まで模倣できるとの事です」


「それは完璧じゃのう、ならば親しい者にも見破れんという訳か」


「そうです、この変身スキルさえあれば。例の洞窟に潜り込み、魔物の正体を探る事も容易です」「さらにこの作戦が上手く行ったのならば、次は魔王城への侵入も視野に入りますよ!」


「これは久しぶりに、凄まじいスキルが来たのう! 上手く行けば魔王の弱点も見つかるかもしれん!」


「とはいえ、変身出来るのは目の前の人物にのみで、会っていない人物に変身は出来ません」「さらに一回変身したらその前に変身していた人物には戻れません、変身は解除か上書きしか出来ないのです」


「となると変身する人物を慎重に選ぶ必要があるのう。そう言えば人間以外には変身出来るのかのう?」


「魔物にも変身は出来ます、しかし記憶はある物の魔物特有の習性的な行動等は自然と行えず違和感に思われる可能性はありますね」「魔物語等も方言や訛りなどは再現が難しいかもしれませんね」


「なるほどのう、魔王城の本番に備えて色々と試験しておかなくてはいかんな」


「そうですね、とりあえず手始めに我が王よ、さてどちらが本物の私でしょうか?」「いや流石に信頼に厚き我が王ならば、忠臣の騎士団長を間違う事はありませんよね!」


「うむ、これは難問だのう……まず、兜の下は、まぁ同じ顔だろうしな」


「身長体重、髪質からほくろの位置まで同じはずですよ」「見た目で判断は出来ない物とお思いください」


「ならば知識ではどうか、ワシの名は!?」

「「オズワルド・オイヘンブージ三世!」」

「改装前のこの城の異名は?」

「「白亜の斜塔」」

「この城の国宝は?」

「「無い!」」

「うーむ、全問正解じゃ……やはり記憶も模倣しておるのう」


「単純に私しか知らない事は王様もクイズに出せませんしね」「あ、でも逆に私が知らない事でも変身した者ならば知っているかもしれませんね? とはいえ全知全能なる私が知らない事なんてないんですけども」


「となると道徳とか人間性の方向で行くかの、暴走したトロッコの先に、5人の作業員が居る。そのままでは5人が死ぬが、お主の前にはトロッコの進路を切り替えるレバーがある。しかしレバーで切り替えた先にも1人の作業員が居る、さてお主はレバーを切り替えるか?」


「「その時になってみないと分かりません!」」


「お主とお主の大切な人が川で溺れた。お主は先に小さいボートに助けられた。お主はボートの持ち主にもう一人自分の大切な人が溺れていることを告げるが、持ち主はこのボートは二人乗りだという、さてお主はどうする?」


「「泳いで助けます!」」


「戦争は何故なくならないと思う?」


「「わかりません!」」


「うむ、完璧じゃな! もうどっちが偽物か見分けるすべがないわい!」


 王様も太鼓判を押すほどに、変身は完璧であった。


「所で王様」


 不意に片方の騎士団長が不安げに問う。


「どっちが本物でしたっけ?」

「信じられんが、きっと本物はそう言っている方じゃろうなぁ……」



 後日。


「王様、大変でございます!」

「何じゃ? お、1人に戻っておるな、そう言えば変身の勇者は本来の姿で会わなかったのう、まだ居るなら姿だけでも見ておきたいが」

「その変身の勇者なんですが、冒険者組合から急用の案件があって本日は来ていないそうです! で、あのもう一人の私って何だったんでしょうか!?」

「え、何それ怖っ!?」


 王の悩みはまだ晴れそうにない。


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