クエスト25【初級ダンジョン】
ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。
その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。
「国王様、どうなされましたか!」
そこに勇ましい足取りで、全身甲冑の騎士が姿を現す。
「おお、騎士団長か……実はな」
直立不動で控える騎士に、王は己の抱えた苦悩を漏らす。
「実はのう、王都の近くにちょっとした洞窟があるのは知っておるか?」
「はい、えーっとアレですよね、冒険者の間で初級ダンジョンって呼ばれている所ですよね?」
「そうじゃ、近くに村もあるし生息している魔物も弱い、冒険者が腕試しに向かう所じゃ、しかしそこに最近強力な魔物が住むようになったと報告があってな」
「強力な魔物! まさかドラゴンとかですか!?」
「そこまで強力であればもっと大ごとになっているであろう、魔物の詳細は分からんがそこまで強い魔物ではないはずじゃが」
「しかし初心者の冒険者には手に余る……という訳ですか、ではちょっと行って退治してきましょうか? 近場ですし」
「いや、周囲よりちょっと強い魔物が現れた程度でな、いちいち騎士団長を派遣しておっては冒険者の為にならんぞ」
「確かにダンジョン探索は冒険者組合の管轄ですしね、冒険者組合がちょっとランクの高い冒険者を派遣したりはしないのでしょうか?」
「何かここら辺目ぼしいダンジョン無いらしくてな、結構遠くまで遠征に行っているみたいじゃ」
「うーんなら、若手の冒険者を城に招いて鍛えなおしますか、ちょっと強い魔物くらいなら一週間の強化合宿で倒せるようにしてみますよ!」
「その前に若手が引退しそうじゃの」
「なるほど、鍛え上げてそのまま兵士にしようって事ですね! 良いアイディアです!」
「いやそういう話ではなくての、ともかく魔物をどうするかじゃの」
「初心者だけで強い魔物をどう倒すか、ですね。城の訓練用の武器防具とか貸し出しましょうか?」
「城の建て直しに合わせて、一式揃えたばかりじゃから返してくれんと困るでのう」
「あーそのまま持って行かれそうですよね、では簡単なサポートはどうでしょうか? ダンジョン付近の村にちょっと投資して宿とか立派にしますか、回復薬とかも持たせるとか」
「なるほど城の方でも援助を施すというのは悪く無いのう」
「情報を収集して、魔物の情報を提供するというのも良いかと」
「そうじゃな、その方向で冒険者達を援助するんじゃ!」
「わかりました! 訓練所に何かいい物が無いか探してきます!」
そう言って騎士団長は部屋を出て行った。
そして何やら荷物を抱えて帰ってきた。
「色々と持って来ました!」
「いやここに持って来んでも、現場に持って行きなさい」
「まあ色々と懐かしい物が出て来たので見てくださいよ、ほらもう使われていない訓練用の木剣ですよ!」
「何か昔見たことあるのう、何じゃ今はもう使われておらんのか」
「以前この木剣で訓練用人形が破壊されてですね、それで危ないってなったんですよ」
「木剣でか、それは凄いのう」
「いやーあの時はついカッとなってしまって」
「いや壊したのお主かい」
「あ、ほらほらコレなんかも昔使われてた訓練用の鎧ですよ、強度に問題があって使われなくなったんですよね」
「ほう」
「まぁ私の拳の方が強かっただけかもしれませんが」
「何かお主基準で装備が更新されとらんか?」
「そんな事はありませんよ、ああーほら、ランプなんか良いんじゃないですか?」
「どうも最近の若者は松明を嫌がるからのう、松明で焚火を作り、その周りで寝袋に入るのが憧れの冒険スタイルと思っておったんじゃが」
「今の子達はどうも冒険自体に憧れて冒険者になるのは稀だそうですよ」
「ふむ最近の若者事情を知っておくのも大事だのう、今時の子は何を望んで冒険者になるんじゃ?」
「何かスローライフを求めているらしいです」
「いや真逆の生活スタイルじゃない!?」
「冒険者と言う裸一貫からスタートして、一国一城の主を目指すのが流行とか」
「絶対遠回りじゃ! しかもそれスローライフかのう、農家とかちょいと頑張って商人とかの方がのんびりしてるじゃろ!」
「いやまぁ王様まで上り詰めたら、何の悩みも無くゆっくりとしたスローライフを送れると思ったんじゃないですか?」
「このワシの日常の何処がスローライフじゃと言うんじゃ!」
後日。
「国王様、要らない訓練用具を冒険者に配ったところ、むっちゃ不評でした!」
「そりゃそうじゃろう……もっといい物は無かったのかのう」
「薬草とかもいまいちでしたね、ポーションとかにして欲しいと要望が」
「まぁ城からの支給じゃしのう、もう少し奮発するべきじゃったか」
「まぁ木剣で鉄板を叩き切って見せたら、皆快く受け取ってくれましたけどね!」
「次は使いの者を向かわせよう」
王の悩みはまだ晴れそうにない。




