クエスト24【黄金の王】
ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。
その王国にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。
「国王様、また遠方の国より使者が謁見を求めて来ております」
そこに勇ましい足取りで、全身甲冑の騎士が姿を現す。
「何とまたか、最近多いのう」
「我が王の威光が、世界の人々に届いた証拠でありましょう」
「あんまワシ人の相談に乗るのとか得意じゃないんじゃがのう」
「いえいえ、まぁ今回は単純に挨拶に来ただけという可能性も」
「そうじゃのう、あまり待たせても悪いか、よし通すが良い」
「は、しばしお待ちを」
こうして王の前に、異国の服装の使者が連れて来られた。
「うむ、よく来たの面を上げい」
王に促されて、使者は頭を上げる。
「さて、異国より参られた使者よ、何用で参られたか!」
騎士団長が問う。
「はい、実は我が王の事で相談があるのでございます」
「あーやっぱそのパターンかー」
「あらゆる悩みをスバっと解決! 大賢王とのお噂はかねがね」
「ぜーったい誰かが悪意をもってその噂流しとるってきっと!」
「お助けください! このままでは我が王は死んでしまいます!」
どうにも必死そうな表情で、使者は懇願する。
「ふむ、どうやら一大事の用じゃの、事情を話すが良い」
「はい、我が王は欲深き王でした。財宝、とりわけ黄金に強い執着を見せ、城中を金の装飾で覆い、商人から買い付け、それを眺めて過ごすのが日課と言う状態でございます」
「ギラギラしてて住み心地は悪そうですね」
「ふむ、装飾過多というのも考え物じゃな、しかし聞く限りではあまりいい趣味とはいえんが今の所財政圧迫くらいで命の危機が訪れるような話には見えんがのう」
「ところでこちらの王国には、神によって奇跡の御業を授かるという権能者の噂はご存じでしょうか?」
「むぅ、こちらでは勇者と呼んでおるな」
「王は神に祈りを捧げ、自ら権能者になったのです。授かったスキルは触れた物を黄金にする力!」
「ほう、何とも凄まじい執着だの。神に祈りが届くほどに黄金を望むか」
「しかし触れた物を全て黄金になるのなら、これで王は自分の大好きな黄金に一生困る事は無いわけですね!」
「いや、触れるものが黄金となる訳だからのう、食べ物や飲み物も全て黄金となってしまえば……やがて飢えて死ぬしかないのではないじゃろうか? 王の死とはその事を言っておるのではないか!?」
「いえ、水などの液体は黄金化しないようでして、食べ物もりんごなら[黄金のりんご]に、にんじんなら[黄金のにんじん]となって、何とか食べられないわけではないです」
「む、むぅ……?」
「あと元から黄金の物は影響を受けないので、ゴールデンパインとか金のから揚げとか意外に食べるものには困っていません」
「黄金にする力ってそんな概念的な変化なの!?」
「食べ物に困っていないのなら……動物! 娘さんとかを黄金にかえてしまって後悔しているとか?」
「いえ、王は自ら隔離部屋にこもり下手に黄金にしないよう過ごしております」
「なら何に困っておるのじゃ?」
「はい、王のこの触れた物を黄金にする能力ですが、純粋に黄金に変えるモノではなくてですね、例えばその剣に触ったら、その剣は[黄金の]剣になる訳です。椅子に触れたら[黄金の]椅子になるといった具合で、実際に黄金に変わるわけではないんですよ」
「ふーむ、つまり触れた物に[黄金の]という二つ名が付く感じかの?」
「あーはい、そんな感じです。人に触れた場合、その人の綽名が[黄金の]人になるって感じです」
「いやそれ何の意味があるの!?」
「はい、我が王も何か思ってたんと違うとお怒りで」
「まぁ下手に黄金が生まれ過ぎてハイパーインフレーション起こしたり、城中の人が黄金像にならなかっただけ、神様は優しかったという事じゃのう」
「その結果我が王は、ますます黄金に執着し始めて、ついには自ら実際に物質を黄金に変えようと研究をはじめまして」
「何か話の方向性が変わったの」
「物質に黄金の性質を付与するという自らの力を研究し始め、そこから鉄や銀といった金属を黄金へ、さらに不変の金属の探求と、それに連なって不老不死への研究を始めたのでございます」
「いや逆に凄いのう!」
「最終的には、自らが本当の黄金へ成るつもりなのです、どうか我が王をお助けください!」
「いや、どう助ければ良いんじゃ!? こうなったらもう外部がどうこう言えるレベルじゃないしね? もう好きに研究させたらいいと思うが」
「我が王を黄金へ変える方法はありませんか?」
「それこそ黄金像でも建ててやれぃ……」
後日。
「王様、使者からの手紙で、王の力が変化したとの事です」
「ほう、スキルが成長したのか」
「今度は触れた物を[エリクシル]と化すようになったとか」
「それは、どんな効果があるんじゃ?」
「ちょっと健康になるんだそうです」
「まぁ黄金よりましか」
王の悩みはまだ晴れそうにない。




